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2008年7月25日
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☆No.150『へぇ〜!』
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現在、私は40歳。ありがたいことに、3歳から5歳若く見られる。時には、30代前半と言われることもある。不思議なことに、若い時には老けて見られた。それが、30歳を過ぎてから年相応に見られだし、35歳くらいからは実年齢よりも下に見られるようになった。
ジムで体を鍛えていることや、日々の生活が充実してイキイキとしていることが原因であろう。しかしながら、これは噺家としては得なのか損なのかと考えると、難しいところである。イマイチ、貫禄がない。
特に最近、高座で自分の芸歴などを話すと、お客様の反応が素直で面白い。例えば、「私、40歳なんです」と言うと、客席から「へぇ〜」という驚きの声が漏れる。そして、その「へぇ〜」は、私の一言一言に応じてどんどん大きくなっていく。「噺家になって20年です」「へぇ〜」「結婚してるんです」「へぇ〜」「結婚して16年です」「へぇ〜」「子供、二人います」「へぇ〜」「上の子は中学2年生です」「へぇ〜!」、という具合に。
見た目が若い上に、生活感がないから、全てが意外に思えるのであろう。時には、私のことを知らない人に「噺家です」と言っただけで驚かれることがある。「噺家は小柄で太っている」という先入観があるのだ。私のようなモデル顔負けの人間を見ると、驚くのも無理はない。
先入観というのは、実に厄介である。その人の中で完全に出来上がっているのだから。特に、ラジオを通じて声だけで知られている我々などは、聴いている方々が途方もない想像をしていることがある。
昨日、京都で落語会があった。京都には、この番組で私のことを知り応援して下さっているUさんご夫妻がいる。Uさんと食事をすることになった。「誰か連れておいで」と言われたので、京都在住の桜みずほちゃんを誘った。みずほちゃんを紹介すると、Uさんが「えぇっ!?」と驚いた。「もっと太った真ん丸の人かと思ってたわ」。全て、コンちゃんのせいである。「実物は細いねんな〜」と言われ、みずほちゃんは嬉しそうにバクバク食べていた。大食漢なのは間違いない。
「わからんもんやなぁ〜」と話すUさんは、どこから見ても「ヤ」の付く自由業の人に見える。「笑福亭銀瓶、黒い交際」と言われても不思議ではない。
人は見かけによらないし、また、先入観だけで判断してもいけないのである。
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2008年7月18日
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☆No.149『世界の盗塁王』
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何人かの元プロ野球選手と仲良くさせてもらっている。最も顔を合わせるのが、板東英二さん。金曜日には嫌でも会う。来年、私の落語会に漫談で出演してくれる予定だ。ギャラは、大好きなゆで卵で辛抱してもらおう。
世界の盗塁王・福本豊さんにもお世話になっている。昨年から、福本さんと関係の深いショットバーで寄席も開いている。とてもよく笑う方で、客席には盗塁王の笑い声が響いている。マクラで自分のことが話題になると、とても喜ぶ。
実は、福本豊さんは大のヅカファンである。宝塚歌劇をこよなく愛している。ファンになってまだ2年くらいなのだが、最低でも週に1回は必ず通い、多い時には同じお芝居を10回くらい観るのだと言う。
「俺に会いたかったら、月曜日にタカラヅカに来たらええ。派手なアロハシャツを着てるから、すぐにわかる」と言っていた。ある日、阪急電車の西宮北口駅で福本さんにバッタリ会った。月曜の午前中だった。「どちらまで?」と尋ねる私に、「決まってるがな」と言い残し、宝塚線のホームへ降りて行かれた。ハワイの人でも着ないようなアロハシャツを身に纏っていた。嘘じゃなかった。「嘘つきは泥棒の始まり」と言うが、福本さんの場合、通算1065の塁を盗んでも、嘘はつかない。野球解説同様、気持ちのいい方である。
先日、福本さんに「落語も好きですか?」と聞くと、「当たり前やがな。嫌いやったら店で寄席なんかせえへんで」と、世界的なプレーヤーらしからぬ、いつもの口調で答えてくれた。「そやけど、噺家さんってスゴイなぁ。こないだ銀瓶ちゃんがやった、あの、ハクションの噺。ほれ、ハクション、ハクション言うとったやつやがな。えっ?くっしゃみ講釈?そうそう、それそれ。あんなん、よう覚えるなぁ。あれは難しいやろ?」「何を言うてはるんです。盗塁の方がうんと難しいじゃないですか」「盗塁?あんなん簡単や。走ったらええねん。何も覚えることあらへん」「そやけど、ピッチャーの癖を覚えたでしょ?」「ピッチャーの癖言うたかてやな、顎をキュッと引くとか、肘がクッと上がるとか、ケツがプリッと動くとか、そんなんを覚えるねん。あんな長い言葉は覚えへん」「当たり前やないですか」。
世界の盗塁王に、ますます心を奪われる私がそこにいた。
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2008年7月11日
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☆No.148『ごめんね、僕だけで』
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先日、繁昌亭の入場者が30万人を突破した。繁昌亭以外の会場にも、多くのお客様が足をお運び下さっている。今や、客席が閑散とした落語会はあまり聞いたことがない。昭和40年代にあった落語ブームの再来と言っても過言ではない。
その人気の火付け役になったのは、NHKの朝ドラ「ちりとてちん」と、それに出演していた桂吉弥くんであろう。彼の集客力は凄い。中でも女性の姿が多い。女性に人気があるというのは、実に大事なことである。
先週の金曜日、この番組が始まる直前、長岡マネージャーから電話があった。翌日は繁昌亭で、一門の後輩・由瓶くんとの落語会がある。「明日の会に、NHKが銀瓶さんの取材に来ます。銀瓶さんだけです。テーマは、女性に人気のある噺家です。銀瓶さんのみです」。それを聞くや、私はすぐに由瓶くんに電話をし、留守番電話にメッセージを残した。「どうも銀瓶です。明日、NHKが僕だけ取材に来ます。僕だけです。女性に人気のある噺家ということで、僕だけです」。
土曜日、楽屋に入ると、由瓶くんが口を尖らせ待っていた。私が開口一番、「そういうことやねん」と言うと、「その『そういうことやねん』が腹立ちますわ。でもね、お兄さん、これ聴いて下さい」と、彼が携帯のメッセージを再生した。私の声の後に長岡マネージャーの声で、「明日、銀瓶さんだけNHKの取材が入ります。銀瓶さんだけです。由瓶さんは無しです」とダメ押しのメッセージ。
落語会が始まった。トップの桂佐ん吉くんの後、私が高座へ。客席後方からNHKのカメラが撮ってくれている。続いて由瓶くん。すると、舞台からこんな声が聞こえてきた。「えっ?NHKさんのカメラいないの?さっきまでいてたんでしょ?」。NHKのスタッフはロビーに出ていた。実はこれは、私がお願いしていたのである。撮影もされないのに客席にカメラがあると、由瓶くんがやりにくいと判断したのだ。対談で再びカメラが入った。私がカメラに向かって、「すみません。由瓶くんも撮ってあげて下さい」と頼むと、撮ってくれた。彼は少し嬉しそうだった。しかし、絶対に放送されない。彼は満員のお客様の前でこう言った。「銀瓶さん、受信料払ってませんよ」。払っている。ホントに払っている。
男の嫉妬というのは実に恐ろしい。立場が逆転しないよう、精進するしかない。
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2008年7月 4日
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☆bP47『洞爺湖サミットの影響』
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私の鞄は、いつも重い。仕事がない日でも、スポーツジムに持って行くウェアやシューズなどで鞄はいつもパンパンに膨らんでいる。重さ約7kg。重い荷物を持って歩くのには慣れているのだが、そんな私でも泣きそうになることがあった。
昨日、ジムで鍛えてから繁昌亭に寄った。繁昌亭には落語会のチラシがたくさん置いてある。私が出演する会のチラシ、2種類を千枚ずつ紙袋に入れて出た。
両手に荷物を下げ、本町の文房具屋さんへ。DMに使用するB5の封筒を200枚買った。また荷物が増えた。そこから、松竹芸能へ行こうと地下鉄に乗り、難波で降りた。そこで思い出した。千日前のトリイホールにも別の落語会のチラシがある。どうせ難波まで来たのだからと千日前まで行き、千枚受け取り歩き出した。チラシ三千枚と封筒200枚。後で分かったのだが、17.6kgある。自分の鞄と合わせると、約25kg。
昨日は暑かった。おまけに、松竹芸能はOCATの奥にある。こんな重い荷物を持って歩くには、ちょっと遠い。そこで、難波駅のコインロッカーに預けることにした。ところが、ロッカーが使えない。張り紙を見ると、「洞爺湖サミットのテロ対策のため、しばらく使用できない」とのこと。近くに担当者らしきオジサンがいたので尋ねた。「ロッカー使えませんの?」「そうですねん」。同じようなことを何度も聞かれているのだろうか、オジサンは私を見ようともせず、何か作業をしながらぶっきら棒に答えた。「ここ大阪でっせ。洞爺湖、関係おまへんやん」「そうでんなぁ。そやけど、本部から言われたことやからねぇ。しょうがないわねぇ」。私は、腹立ち紛れにこう言った。「本部、アホでんなぁ」。オジサンは、これには答えなかった。きっと、私のことをアホだと思っただろう。
難波の地下街を「洞爺湖サミットのボケ!」と心の中で呟きながら歩いた。途中、何度もくじけそうになった。しかし、考え直した。「これぐらいでへこたれてどうする。エジプトのピラミッドの石を運ばされていた人に比べたら楽なもんだ。大阪城の石垣に使う岩を運んだ人が見たら、笑われるぞ」と、自分に言い聞かせた。そして、汗をダラダラかきながら、こうも思った。「これで、銀瓶人語のネタができたやないか」。次の瞬間、また私は心の中で呟いた。
「洞爺湖サミット、ありがとう」。
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2008年6月27日
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☆bP46『消えた大入り袋』
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月末になり、財布の中が心許無い状態になってきた。無駄遣いをなくせば、もう少し余裕もあるのだろうが。
昨夜も落語会の打ち上げでやってしまった。隣に座ったスタッフの女性がアルゼンチンタンゴを習っていると言うので「僕もできる」と立ち上がり、その人の腰に手を回した。
とてもナイスバディーな人だったので体が反射的に動いたのである。お互いの片足が相手の股間に入るように下半身を密着させ、ついでに胸と胸もピタッと合わせた。約1分間の夢心地。するとその女性が「お金ほしい」と言い出した。「いくらですか?」「3千円」。財布から千円札を3枚出し、女性の胸の中に捻じ込んだ。
深夜に帰宅し、「あの3千円、何も出す必要なかったのになぁ」と反省しながら、お金があることをふと思い出した。落語会の大入り袋である。1枚に50円入っている。私の机の引出しにたくさん入れてある。喜び勇んで引出しを開けると、影も形もない。一体どこへ消えたのだ。
私はすぐに子供を疑った。これまでにも、私の机からセロハンテープやホッチキス、スティック糊などの文房具を勝手に持ち出して使っている。先日も蛍光ペンがないので娘に借りたら、それが私のものだった。問い詰めても知らぬ存ぜぬの一点張り。
今朝、朝ゴハンの最中に息子と娘に聞いた。「お父さんの大入り袋、知らん?」「知らんし」「侑紀ちゃん取ったやろ?」「取ってない〜」「ほななんでないの?」「知らんやん」「どこにあるんや?」「知らん言うてるやろ!」。二人は不機嫌な顔で学校へ行った。
引出しの中から、大入り袋だけが忽然と姿を消す。「不思議なこともあるものだなぁ」と、何気なく机の右横を見ると、薄紫色のビニール袋があった。膨らんでいる。見ると、大入り袋がギッシリ詰まっている。2週間ほど前に私がこの中に入れたのだ。「お前たちを疑ったお父さんを許してくれ!」。私は心の中で子供たちに詫びながら、袋の数を数えた。81枚、総額4,050円。
これで、また飲みに行ける。
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