自身も京都に移り住んだパーソナリティー本上まなみが、“もうひとつの京都”の魅力を発見し、再認識する番組です。
古都京都とはひと味違う京都の魅力を音と言葉、そして音楽でスタイリッシュにラジオの電波で発信していきます。


  


さて、伊藤さんに促されて工房へ。 扉を開けてまず本上「スリッパがかわいい!」
レザーでできたスリッパ、これも伊藤さんの手づくり。 工房内にはほかにもたくさんの商品や材料が並んでいます。


入り口に置いてあったスリッパ。その手仕事ぶりも本上、見逃しませんでした! 履くほどに味わいが出てきそうですね。

材料で主に並んでいるのは牛革ですが、 いろんな色があるんですね〜。
「もともとは我々の肌と同じで ナチュラルな肌色のものがメインになるんですけど、 それを中心に色を着けたり、 機械や薬品でもんでやわらかくしたりしています。 用途によって、例えば革のジャケットだったら なるべく着やすいように、重くないように、 と革で作られているんですけど、 逆によりハードに使うもの、 例えば野球のグローブだったら厚くなってと、 用途に合わせて革はなめされていますね」 と伊藤さん。
作るものによって使う革の厚みがそもそも違う、ということなのですね。 糸がたくさん並んでいる棚も、これ自体がすごくキレイで インテリアの一部になっているよう。 もちろんこれを使って縫い合わせるのでしょうか。 よく見ると、上の方から太い物、下の方が細い物というふうに いろんな色の糸が、太さ別に並んでいます。
「上糸と下糸で合わせますし、 革の色に合わせてお客さんからのオーダーを取るときに 見本を見て選んでもらったりもしています」
ということは、ここはオーダーができる工房になっているんですね。
「そうですね、だからみなさん、専用のものをオーダーされるし、 プレゼント用に作ってほしいものを細かく頼まれたりしますね」
一つ一つお客さんのニーズを聞いて作っているので、 誰かのために専用のものを作る、という感じで 伊藤さんは創作活動をされているそうです。 しかも身近に使うもの、というのは たいていのものが作れちゃう。 脱帽です。

ほかにも作品を見せてもらいました。こちらは… 何用か決まってはいないけど、マスク。ジブリ映画に出てきそう(笑) 「実際にファスナーでかぶれるようになっているんです」

ふと横を見ると、 棚に掛けてあったのは、様々なステッチの見本。 ステッチはデザインの一部のようなものですね。 型押しみたいなこともやってありました。

「アメリカのレザークラフトの手法の一つで スタンピングというんです。 革をしめらせて、刻印をして、 乾くとカチッと固くなるんですよ。 基本的には皆さんの知識の中では “革は濡らさない”ものだと思っているでしょうが、 加工する段階では、例えば靴のローファーのトゥの部分は 革をしめらせて伸ばして、乾くと形状を記憶させるんです。 これはもう、革以外ではなかなかできないことなのかな、と思うと すごく加工がおもしろいですね」

革細工が好きというよりも、 伊藤さんは革そのものの不思議な魅力にハマってしまい、 職人になられたのではないか、そう思えました。

マーブル染めといって、ゼラチン状ものに溶かして 乾かすと模様になる技術で作られたもの、 キーホルダーとか小物もいろいろ。 レザーでカバーを付けたオシャレなステンレスカップもありました。

お子さんを保育所に迎えに行くときに夕焼けがとてもキレイで、 それを記憶して、デザインにアウトプットしたマグ。 革の色の微妙な違いが夕焼けの色、ということですね。

伊藤さんの説明が続きます。 「革は基本肌色のものが主なのですけど、 色を着けるとなると、使っていく段階で より重厚なものになっていくんですね。 使い方と環境次第ですが、 修理でたまに自分が作ったものが返ってくるんですが、 最初見送ったときとはまるで違ってかっこいいんですね。 味があって。誰かの形になっている。 それをファスナー交換したりして、油を塗って戻すのですが、 するとまた糸がすり切れるまで、とか使っていただける」

自分の作品が長く愛されている喜びを、 補修しながら噛みしめている伊藤さんなのです。

工房内をひと通り説明してもらったあと、 伊藤さんがなめした鹿の革をひいたベンチに座って話を聞きました。

伊藤さんがお仕事をするうえで、 京北という場所はどういう環境なのでしょう?

「革を維持するコンディションを考えると、 とても湿度の高いところなので、 例えば16年の夏は異常に湿度が高く、革にカビが生えました。 革のことを考えると もうちょっとカラッとしているところでもいいのかな、 とは思います」 そうか、自分にとってはもちろん、 素材のことも考えないと、ですね。

「鹿の革はこの街に住むようになって 向き合うことになった素材なんです。 これまでも鹿の革自体は仕入れて使っていたのですが、 海外の革を国内でなめしたものが多い中で、 日本の鹿の革ってどうなんだろう、 といろいろ調べてみたのですが、 やはり寒い地域の方が、身が厚かったりするので加工に不向き、 という意見もありました。 でも自分でなめしてみたら、 これはこれで、これにしか出ない味があっていいかな、と思って。 そういった意味では、まったく誤算だった自然動物との出逢いとか、 あとは鹿の角も、輪切りにして磨くワークショップなどをして、 街のお子さんからお年寄りまでできるので、 京北で起きている獣害の問題提起や、 暮らしの中に獣がいるという物語を 伝えるにはいい素材かな、と利用しています」
京北で出合ったのは、落ち着いた環境だけでなく、 職人魂に火を付ける、鹿の革。

伊藤さんがなめした鹿の革。冬毛と夏毛が置いてありました。 手触りがまるで違って、そういうことに気付かされるのも、 この工房の楽しみだな〜と感じました。

ところで伊藤さんのように創作活動をしている作家さんって この地域にはほかにいるんですか?
「結構多いと思いますよ。陶芸、ガラス、家具、木工、などなど。 外国人の作家さんとか、いろいろな方がパワフルにやっている感じです」

そんな方々とも、伊藤さんはしっかりつながっているようです。

「私の親世代にあたる方達が京北に移住されてきて、 その方達がつくった手作り市のようなものがあって、 そこで顔を合わせることもありますし、 自分が移住してきた年と同じ年に関東から移住してきたメンバーがいて、 その方達がのちにデザインチームをつくって、 我々のようなものづくりをやっている人に声をかけて、 街なかで出店のイベントをやったりしています。 そこで一から創り上げていったりするので、 みんなで和気藹々と、作家同士が交流する場にもなっています」
新たなコミュニティとでもいうのでしょうか、 なんだか楽しそう。

伊藤さんのアグレッシブな毎日の話に、どんどん引き込まれていきます。

ちなみに伊藤さんの作品は、ここへ来て、 伊藤さんの顔を見ながら、いろんなコミュニケーションの中で オーダーしていくスタイル。 一つ一つに時間がかかりそうですが、 普段はどのようなスケジュールで制作されているのでしょう?

「市内から京北に移り住むにあたって やろうと思っていたことが、子育てがひとつ、 もうひとつはなるべく自給できる物はしよう、ということ。 あとはそこに仕事をどういうウエイトでこなしていくか、と。 仕事ばっかりの一日ではなくて、 仕事というと一日すべてが仕事になるので、 薪割りとか、もらってきた廃材をカンナかけてとか。 実はもう一棟工房を造っているんです(笑)。 そんなこともあって、大工仕事のお手伝いに行ったりと、 結構体を使っています。 あとは消防団とか、地域活動。 やることがいっぱいあるので、その中で優先順位を決めながら、 お客さんの納期なども考えながら、やっていますね」

ここにいる以外もやることがいっぱいあって、 それを組み合わせながらやっているんですね。 都市部で暮らしていた頃よりも忙しそう。 取材前日にも木こりの知り合いから 「薪いる?」と連絡があり、槙をもらいに行ったとか。

「今から割っていったら来年の寒い時期なら薪が乾いて使えるかな、と」 常に先のことも考えて動く毎日。 これは都会と違うところですね〜。 結構大忙しな伊藤さんなのでした。

「春になったら家庭菜園に種をまくのですが、 畑の土づくりからやっていると、 本当に全然時間が足りなくなるんですけどね〜」

とにかく時間が許す限りいろんなことに 体を動かしている、という印象ですが、 畑を耕すにしても、京北での暮らしで必要なことは、 コミュニティの中で学んでいるとのこと。
「京北は共同体という考え方がとても強いので、 移住者、先住者という垣根は飛び越えていますね。 いいサイクルができています」

話は尽きませんが、今回の目的もひとつ、 伊藤さんの作品づくりを見せていただきたいと思います。

「はい、ではコチラの作業場へどうぞ」 そう伊藤さんに案内された作業場は、 さらにいろんなものがたくさんあって、まるで宝箱のようでした!

来週も引き続き、京北で革工房を営む伊藤さんに話を伺います。 作業場で本上もちょっと体験。さて、うまくできるのでしょうか…。お楽しみに!


<ミニコラム> 今週の風景


伊藤さんの工房内には、いろんな所に鹿の角がありました。 ワークショップの素材として活用しているとのことでしたが、 それ以前に鹿との出合いが伊藤さんに大きく影響している そんな気がしました。

革職人 伊藤 拓さん

工房を構えていた神奈川県川崎市から2011年に嵐山移住、その後13年に工房を京北に移し、オーダーメイドで革製品を製作。京北在住のほかの作家と共に「里山デザイン」という制作チームも結成している。


■今回の訪問地

京都市右京区の最北に位置する京北地域。地域全体は丹波高原の中にあり、日本海と太平洋の分水嶺でもある。のどかな山里に今も受け継がれる伝統や文化、産業が残り、豊かな自然も魅力。

京都トピックス
【第1回もうひとつの京都」合唱コンクール観覧者募集」】
番組でもおなじみの葉加瀬太郎さん作曲の組曲「もうひとつの京都」を課題曲とした合唱コンクール。1次審査を通過した18団体のステージや、葉加瀬太郎さんからのスペシャルメッセージも放映。
【開催日時】
2月26日(日)13時〜17時(12時15分開場)
【開催場所】
ロームシアター京都・メインホール(京都市左京区)
【全席自由席】
1000円。

電話075−746−3201、ロームシアター京都チケットカウンター(10〜19時)、または、オンラインチケットhttps://www.e-get.jp/kyoto/pt/で購入可能。(当日までの先着順)

【バックナンバー】
#041 えいっ! という気持ちで山豊かな京北へ移り住む

【1月のプレゼント】

今月のプレゼントは、番組内でも取り上げている「革工房TAKU」の革ホルダー付きタンブラーです。ピンクかブラウンをお1人ずつにプレゼントです。 革のぬくもりに包まれたタンブラーで、ホッと心温まるひとときを過ごしませんか?

締め切りは、1月29日です。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090