梅雨が明けました、の巻。
 ふほ。き、気持ちいいなあ。
 ころころゴロゴロ。ピンポン玉の木製の玉がぎっしりと密に詰まった“木の砂場”にごろりと寝そべると、背中に直径三センチほどの玉がぐいぐいっと当たりました。肩やら腰の両脇やら腿の裏側のツボが刺激されます。
 力が抜けていくよ〜……。
 この夏、家族四人で北海道、道東を旅しました。久々長めの9日間の旅行です。
 旅は、この地では珍しい台風の襲来にあって、あいにくの雨の日が続きました。北海道民、釣り仲間で友人でもあるTさんにどうすればいいかなあ? と相談すると「西興部(にしおこっぺ)村に、木でできた遊具がたくさんある、子どもが大喜びする遊び場があるよ。行ってみたら?」とのアドバイス。早速一家で訪ねてみたのであります。
 「木夢(こむ)」というその場所は、いかにも北海道らしい贅沢な広々空間の屋内施設。
 こりゃあいい! 子どもたちも入館するなり、走りだします。
 足こぎ式で回転するメリーゴーランド。数十メートルの長さの線路を行ったり来たりする、四人くらいは乗車できる電車。かくれんぼができそうなジャングルジム。すべり台、シーソー、滑車や歯車、スロープなどを組み合わせた面白い仕掛けがいっぱいの壁面おもちゃ。おままごとセットの収まったおうちなどなど。大型の遊具がぎっしりです。その名前のとおりの夢のような空間でした。
 こちらの初代館長さんは元・学校の先生で、木製おもちゃ作家さんでもあった伊藤英二さんという方だそう。「ストロング」「シンプル」「セーフティ」の3Sを念頭に置き、子どもたちが楽しく遊べるおもちゃを作っておられたのだとか。
 子どもたちが楽しく、とのコンセプトでしたが、かつて子どもだった私や夫も大興奮。足こぎボートみたいなペダルのついている電車は、私、3往復はしましたね。線路も踏切も、駅の看板も何もかもが木でできているのです。かなりの大作! 「おかーさん、これ漕いで」三歳息子が頼むたび、いそいそと遊具に跨がり、くいくいとペダルを踏む。電動のおもちゃとは違って、人力で動くこれらはのどかで牧歌的な動き。どれもこれもがっちり丈夫に作られていて、安定感、安心感抜群なのです。それに木のナチュラルな色目、すべすべの手触りも心が和みます。
 上の娘はというとあっちへうろうろ、こっちへうろうろ。面白そうなものがいっぱいありすぎてどうしよう! ああ困った困ったと、目移りしながら遊んでいます。その気持ち、わかるよ。
 他にも、おもちゃの劇場や、海外からのクリスマスの飾りを集めたホールなど、美術館、資料館としての側面もあり、とにかく驚くほどの充実ぶりでした。
 なかでも私が心奪われてしまったのは前述の木の砂場です。
 これは、本当に楽しいというか気持ちが良いというか、いったん入ると抜け出せなくなる「幸せアリじごく」でした。体勢を変える度に、ちょうど良い位置に木のボールが身体を支えに来てくれるのです。背中を丸めたり、伸ばしたり、腰を深めに沈めたり、横になったり、うつぶせになったり。ツボは、全身いたるところにあるのだと言うことがよくわかる。
 夢中になって木の砂(玉です)をスコップで掘る息子や娘の傍らで、私は木玉による施術(?)に身をゆだね続けたのであります。脱力すればするほど、心地よくってね……究極のリラクゼーションです。
 子どもたちが長年遊んでいたからか、美しいつや、照りが出ている木の玉たち。木目もひとつひとつ違って、そして形も真円だけでなく微妙に楕円だったりすこし細かったりと、不揃いなところがまた素敵なんだよねえ。木と木の当たる音もこんこんからからことことと、耳に優しい音色なのです。
 閉館間際になって、幸い他のお客さんがほとんどおられないのを良いことに、我を忘れて木の砂風呂を堪能してしまいました。ここが近所にあったら通い詰めるだろうなあ。もしこの木の砂場が我が家にあったら、毎晩ここで眠りたいよ。
 夫は最初、私が無言で木の砂場に横たわっているのを見て「なんしてんねん」とくすくす笑っていましたが、自身も足を踏み入れた瞬間にまんまとこの心地良さにはまったようです。ふと気がつくと、少し離れたところで遠い目をして横たわっていました。
 あまりにも気に入ってしまったので、帰りに、これを作って納入している工房を調べて記録して帰ったほどです。これを実際寝床にするとなると、2×2メートルくらいのスペースが必要になるかなあ。個人宅で設置することってできるのかなあ。オーダーするときは「いや、子どもたちのためにですね」とか嘘ついちゃうだろうな。家にあったら、ここに入り浸って何もしたくなくなるかも。ふぬけ母さんになっちゃうかな、子どもたち、ごめんよ……。
 木のおもちゃ特有の温もりを、全身で感じた一日となりました。