はやみみラジオ!水野晶子です
『はやみみラジオ!水野晶子です』毎週月〜金曜日 朝6:00〜7:45
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2006年11月10日
東京式ご祝儀

東京は武士の町、大阪は商人の町とよく言われます。
落語も江戸落語、上方落語で随分違いもあります。
そもそも東京の落語は御座敷芸、武家屋敷などに呼ばれて
御座敷で武士の前で一席やってたものです。
ですから、武士道を説いたような地味な人情噺が多いんです。
一方、上方落語はストリートパフォーマンスから始まりました。
境内で聞く気のない人の足を止めさせて、小話をやって、
投げ銭をもらっていたらしいのです。
ですから、大阪の方が派手で賑やかな雰囲気になります。

先週、東京・銀座で春風亭小朝師匠プロデュースの落語会に
出させてもらいました。
僕は、『お玉牛』というネタをやったんですが、
この噺は落語の中にハメモノと言って、三味線・太鼓が
効果音として入るんです。
大阪でやる時は、普通に三味線さんもいるので、
何も言わなくても落語に入ったら自然に三味線を入れて、
合わせてくれるものです。
東京は御座敷芸で地味なので、大正時代まで出囃子もなかったくらいですので、
お囃子さんは特別に雇われて、おまけに稽古してきてるんです。
本番の前に綿密に打ち合わせをして、わざわざ落語の原稿を持って行き、
見てもらいながら、何度もリハーサルをしました。
自分の高座が終ってから、三味線の人に『ありがとうございました。』
とお礼に行ったら、手ぶらの僕の手元を確認しながら、
「あ〜、そういうことね。」と冷たい顔をされました。
それを見ていた東京の出番も多い、桂小米朝兄さんから、
「かい枝くん。東京は祝儀は常識やで。」と言われて、
そんなもん予想もしてなかった僕は、
急に小米朝兄さんのマネージャーさんに祝儀袋をもらい、
1万円札しかなかったので、それを受付の人に千円に両替してもらって、
とりあえず、三味線さんに5千円渡しました。

「ありがとうございました。」と渡すと、
「結構です!」とか、「そんな、そんな」という言葉を期待したんですが、
そんなことはひと言も言われず、「やっとかいな。」てな顔をして、
ほんまに当然のように受け取りはりました。

とりあえずホッとして、楽屋に戻って着物を着替えようとしたら、
前座の子2人、来てくれて、脱いだ着物をひったくるようにして、
畳み出しました。
大阪では当然、そんなんやっても別に何もくれへん。
畳み終って、「ありがとう」って言うてもスッとは帰らずに、
モノほしそうにジーっと待っているんです。
仕方なしに、2千円入りの祝儀袋2枚=4千円を出したら、
すっと受け取って、帰っていきました。

すごい。ド厚かましい。けどこれが東京式だと分かりました。
そうこうしてたら、来年林家木久蔵を襲名する息子さんの林家きくおさんが、
楽屋に来ました。前座の子がいなかったので、僕がカバンを受け取って、
上着をハンガーにかけて、東京式にものほしそうな顔できくおさんを見てたら、
ポケットから祝儀袋を出して手渡してくれました。
トイレに行ってこっそり見たら、1万円入ってたんです。
三味線さんに5千円、前座さんに4千円渡したので、差引千円の儲けです。

家に帰ってから、落語家名鑑みたら、僕の方が3年先輩でした。
けど、今度会っても先輩だということは黙っておこうと思います。