寄席では一番最後に舞台に上がる人、その日一番偉い人をトリ、
もしくは真打といいます。
真打というのは、昔の寄席では照明が蝋燭の火だったので、
最後に出た人が舞台が終わってから、蝋燭の芯を打ち消す、芯を打つ、
そこから真打という言葉が出来たそうですが、
トリの次に偉いのが中トリというのですが、
先週繁昌亭で初めて中トリをやらせていただきました。
言うたらその日の出演者のナンバー2。
名誉なことでありがたいけど、その分出費も多いんです。
まず初日には事務局の皆さん、裏方さんに差し入れの大福餅を持参して、
一週間のお願いをしました。これが3000円ほど。
楽日にも同じくお礼の差し入れ3000円ほど。
そして打ち上げ!なんと、初日、中日、楽日と3日間やらないといけないんです。
しかも他の出演者は皆先輩ですよ!
僕より芸暦上にもかかわらず、
「今回は、ごちになろうか!中トリのかい枝師匠に」言うて、僕が払わなあかんのです。
6人分ですよ!情報収集しまくって、めっちゃめちゃ安い居酒屋さんに行きましたが、
それでも6人で行って、1万円近く。3回で3万円。
それに比べて出演料は微々たるもの。完全に赤字です。
後は、お客様からのご祝儀を期待するんです。
東京は、寄席の歴史もあるし、元々武士の町っていうこともあるんでしょうか、
見栄をはる習慣がありますね。
東京の噺家は寄席がはけた後、贔屓のお客さんにご馳走になるっていうのが、
普通みたいです。
お客さんにご祝儀とタクシー代をもらって、赤字を補填するっていう習慣があります。
繁昌亭では終演後、出演者が揃いの法被を着て、会場の外に出て、
お客さんをお見送りするんです。
言うたら、お客さんと接する、ご祝儀をもらう絶好のチャンス。
初日から、6日目まで、思いっきり笑顔でニコニコしてましたが、
皆さん「楽しかったよ!」言うて、
もちろんそれはそれでありがたいけど、ご祝儀は何もなしでした。
最終日、いよいよ最後のチャンス。幸い、舞台も上手くいきました。
あとは祝儀をもらうだけです。
「ありがとうございます!かい枝でございます。またいらしてください。」
名前をしっかりアピールしながら並んでたんですが、
皆さん笑顔やけど、何もくれはらへん。
外に出てますから、段々体も冷えてきた。あー、寂しいなあと思って立ってたら、
最後に出てきたおばちゃんが、手に缶のホットレモンを2本差し出しながら、
ニコニコして僕に近づいて来ました。
祝儀はもらえなかったけど、寒い中頑張ってお見送りしてるから、
わざわざ温かいホットレモンを買って来てくれたんやと思って、
「ワー!あ、ありがとうございます!」と言うて手出したら、
「あ、これ…、悪いけど捨てといて。ゴミ箱見あたらへんねん。」
なんや、俺ゴミ箱代わりかい! |