上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週日曜日 朝 4:45〜5:00

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。番組で紹介させていただいた方には、番組特製ポーチをプレゼントします。
〒530-8304 毎日放送ラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」
★1999年〜2007年6月までのHP
歌ごよみ!
上野誠コラム

【巻】17・3895…玉はやす武庫の渡に
【巻】5・855…松浦川川の瀬光り
【巻】6・909…山高み白木綿花に落ち激つ
【巻】7・1112…羽根蘰今する妹をうら若み
【巻】7・1100…巻向の痛足の川ゆ行く水の
【巻】7・1151…大伴の三津の浜辺をうちさらし
【巻】16・3807…安積山影さへ見ゆる山の井の
【巻】古今集より…灘波津に咲くやこの花冬こもり
【巻】16・3836…奈良山の児手柏の両面に
【巻】8・1503…我妹子が家の垣内の小百合花
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】17・3895…玉はやす武庫の渡に
2008年7月20日

【巻】…17・3895

【歌】…玉はやす武庫の渡に 天伝ふ日の暮れゆけば 家をしぞ思ふ

【訳】…武庫の渡で夕陽を見れば無性に無性に、家の事が思われ
  
【解】…関西地方も梅雨明け宣言がありましたが、相変わらず蒸し暑い日々が続いています。日中は夏の日差しに戸惑うこともあり、熱中症対策が欠かせません。そんな太陽の季節を迎えたこの時期に読まれたであろう歌が今日の主役です。題材となっている場所はどうやら現在の武庫川近辺。古代の船旅は瀬戸内沿岸を慎重に航行しての長旅だったことでしょう。海に沈む夕陽を見れば、その日の終わりが近づいています。普段の暮らしなら当時のことでしょうから自宅で夜を迎える時間帯なのでしょうね。「無性に家のことを思う」のですから、旅も終わりに近づいていたのでしょうね。皆さんにはどのような風景が見えますか?さて今日の歌は3895番ですが、万葉集が編纂されたときに綴じ間違いがあったそうで、3894・3898・3899・3895・3896・3897・3900の順番で収載されていました。面白いですね。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】5・855…松浦川川の瀬光り
2008年7月13日

【巻】…5・855

【歌】…松浦川川の瀬光り 鮎釣ると立たせる妹が裳の裾濡れぬ

【訳】…松浦川の川の瀬が光り鮎を釣ると立っているあの娘の裳の裾が濡れた
  
【解】…九州は万葉の時代、都から遠く離れてはいるものの、当時の先進国との交流には欠かせない重要な地域だったため、都から大宰府などに赴任していた役人も多く歌も数々残っています。今日の歌にある松浦川は現在の佐賀県を流れる川ですが、この歌では地方視察に赴いたおりに、松浦川の浅瀬で夏の味覚・鮎の漁にいそしむ女性の姿を見つけた作者が、裳(も)と呼ばれる現在のスカートのような色鮮やかな衣裳の裾が水に濡れて、さらに鮮やかで涼しげな風景を感じさせてくれます。もしかしたら、作者と漁をしていた女性の出会いの歌なのかも知れません。上野先生の時代背景の解説によると、当時は出会ったら声を掛けるのが礼儀だったようです。イタリアの男性たちのような積極さを古代の日本人は既に備えていたのでしょうか。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】6・909…山高み白木綿花に落ち激つ
2008年7月 6日

【巻】…6・909

【歌】…山高み白木綿花に落ち激つ 滝の河内は 見れど飽かぬかも

【訳】…山が高いので、白木綿花のように落ちたぎるこの激流は見ても見ても見飽きない。
  
【解】…暑い夏の季節は水辺で涼みたいものです。浜辺も良いのですが深山幽谷とまでいかなくても、夏山キャンプなどを行うと川のせせらぎを聞いているだけでも涼しげな気持ちになりますよね。今日の歌は涼を求めて滝の歌を取り上げました。滝つぼ目がけて落ち行く水は、白い激流ですね。
緑溢れる山中の色合いの中で際立つ清涼感ある白いイメージを白木綿花(しらゆふはな)という言葉で表す、まるで絵を見ているような表現ですね。確かに、滝つぼの近くで佇んでいれば時間を忘れそうな気がします。マイナスイオンいっぱいですね。「飽きないもの」とは普遍的でシンプルなものが私たちの暮らしのまわりにも多いように思います。皆さんは長年にわたってどのような事象を飽きることなく大切にされているのでしょうか。