話は進んで、諸橋さんの米作りにかける想いへ—
「私たち日本人は、お米がなくなると困ると思うんですよ。だから米を作る人を大切にしなければいけないんだけど、そうしてもらうために、私たちは旨い米を作るんです」
米作りはとても大事なことなのに、あまり大事にされていないんじゃないか、という風潮も確かにあります。だからといって米農家を大切に、と訴えるのではなく、おいしいお米を作ることで、大切だと分かってもらうとうこと。
「なかには、これだけ価格が下がったら限界だ、という農家もあります。だからこそ旨い米を作って買ってもらうしか、生き残れない。これをできないのでは、農家としてよくないと思うんです。厳しい意見だけれども。ほかよりも一まわりも二まわりも旨い米を作っていかないといけないと思っています」
米農家が自分たちの米の価値を高めないと生き残れない、そんな時代になっているんですね。だからと言って悲観するのではなく、だったらそんなお米を作るのだ。諸橋さんの言葉からは、そんな決意が感じられました。
ちなみに諸橋さんの「山の米」は、インターネットで購入することができます。しかし
「始めて1、2年では認めてもらえませんでしたね。お客さんが定着するまでに、やはり3年はかかりました。その代わり、一度信用してもらえるとまた買ってもらえます」
自信を持っている米だからこそ、美味しさは伝わり、お客さんが増えたそうです。
話も一段落付いたところで、満を持しての「塩むすび」登場です。
炊きたてのご飯を握り、冷ましたものをいただきます!
「冷めてもおいしいですね。炊きたてとはまた違った味わいがある気がします。おにぎりって、簡単なようで作るのが難しくないですか? ポイントはどんなところでしょう」
と本上。おいしいおにぎりを作るコツは、誰でも知っておきたいものです。
「そうですね〜、お米、お水、そして釜の三拍子ですね。主人は釜にこだわっています。おいしいお米だからと、釜選びは妥協しないですね」と奥さん。
やっぱり釜が違うとお米の味も違いますか? と諸橋さんに尋ねると
「違うね〜」とニヤリ。
最後に諸橋さんからのメッセージです。
「新潟の米というのは、なくしちゃならないと思います。だからみなさんに食べてもらわなきゃならないし、どんどん食べて、外国のお米なんて日本に入れなくていいようにしなければいけません」
米農家のこれからのためにも「旨い米を作る」を実践している諸橋さん。
その瞳の先には、日本のこれからも見えているような気がしました。
そして本上、
「さぁ、私は続きを食べたいと思います!」
とまた塩むずびに手を出したのでした……。