番組内容

新米! 炊きたて!!箸が止まりません。

試飲させていただいたあとは、いよいよ麒麟山酒造の酒蔵を見せていただきます。
白衣に着替え、長谷川さんと共に蔵へと向かう本上。

酒蔵特有の芳香、初めてみる風景に本上の胸も高鳴ります。
まずは酒米の説明から―

※さっそく酒米の説明から入る酒蔵見学。それぞれのお米の違いを説明してくれる長谷川さんの話に、本上も聞き入っています。

「ここにあるサンプルは、酒造りに使う原料米のサンプルになります。現在蔵で使っている麹米は越端麗(こしたんれい)、五百万石、たかね錦の3品種になります。お酒は麹米と掛米(かけまい)があり、掛米には“こしいぶき”を使っている銘柄がいくつかあります。こしいぶきは飯米としても食べられているお米ですけれども、酒造りにも非常に相性がよく、幅があり、重宝している一般米になります」 酒米の中でも一番歴史が古いのは五百万石で、昭和32年頃から新潟県で育成されているお米だそうです。新潟県の米の生産が五百万石を超えたことを記念して名付けられたというのも、米どころ新潟らしい逸話ですね。
ちなみに新潟県で一番多く使われている酒米は五百万石です。越端麗はまだ使用実績が浅く、10年くらい。この酒米は兵庫県産の山田錦を母に、新潟県の五百万石を父に掛け合わせ、15年という長い時間をかけて、新潟県の酒造組合、醸造試験場、作物研究センターが連携をして作り上げたそうです。農家の栽培特性よりも、酒造りでの味を重視して作り上げた米で、ふくらみのいいところは山田錦のよさを受け継ぎ、キレのいいところは五百万石を受け継いでいるそう。 「越端麗は、県内ではまだ少ないのですが、これから増えていくと思います。大吟醸を造るには非常に適した品種なんですよ」 と長谷川さん。
たかね錦は、新潟県内でも使っているところが非常に少ない酒米。
育成されたのは五百万石よりも古い品種で、昔は長野県で多く作られていた米。
「当社では辛口シリーズで使っているのですが、米が固いので味も固い味になっていくんですけど、非常に切れ味がよく、シャープな味には向いています」

この3品種の酒米はすべて阿賀町で作られていて、麒麟山酒造で使っている率は、越端麗とたかね錦がほぼ100%、五百万石もほぼ町内産、もう少しすると100%町内産で作れそうだと長谷川さんはおっしゃっていました。

先へ進んで、今度は米を洗う作業を見せていただきます。
「酒造りは、まず精米から。ここで100%の玄米を60%磨きます。一番磨いているものは40%で、輝(かがやき)で使っています」
麒麟山酒造では、大吟醸の一部に使う米はいまだに手で洗っていて、1月の仕込みの多い日だと50kg以上もの米を手で洗うそうです。









※洗米機の中では、水を張ったタンクに米が落ち、米と水が混ざって3階まで上がります。1時間に約2トン、多い日だと3.5トンくらいが洗えるそうです。見学させていただいた時は、ちょうど五百万石を洗米中でした。

「私が入社した当時はまだ機械がなくて、大きなおけがここにあって、小さな機械で洗っていました。大きい機械になって、だいぶ楽になりましたね。では次へ行きましょう」

洗米した米はタンクに入れ、そこに綺麗な水を入れ、お米に吸わせていきます。この水の量は銘柄、品種ごとに決められているそうです。ここでお米が132〜133%くらいに膨らむまで吸わせたら、水をきって、一晩おいてから蒸していくそう。吸わせる時間は夏だと10分くらい、冬だと1時間くらい。

洗米を見学し、お酒の貯蔵タンクが並ぶ部屋を抜けて、製麹(せいきく)室へやってきました。
酒造場の中でここだけ木造なので、特別な場所だということが分かります。
「ここでやるのが、出麹という作業です。できあがった麹を出すので出麹と言うんですよ。
ここは昭和26年くらいに建てました。室(むろ)は10数年前に作り替えたものです。蒸したお米を室に入れて、ここで種麹を付け、2昼夜かけて作っていきます。麹が蔵の造るお酒の香味を決める、味を左右すると言われています」









※製麹室は、恐らく酒造場の中でもっとも神経を使う場所。ここでどんな麹が出来るかによって、その年のお酒の味も変わってくるわけです。手をよく殺菌し、緊張した面持ちで本上も入室させていただきました。

日本酒造りは昔から、一麹二元三造(いちこうじにもとさんづくり)と言われて来ました。一麹とは製麹のこと、二元は一次仕込み、三造とは二次仕込みのことです。麒麟山酒造では、代々の杜氏さんから受け継いできたその通りに、今も酒造りをしているそうです。

「うちの室は一号室、二号室と分かれています。一日目の部屋と二日目の部屋です。当社での麹造りはすべて手作業ですので、蒸し器から室に入れる、麹菌を振る、布団を掛けて寝かせる、隣の部屋に引っ越す、出麹にする、をすべて手作業で行います」
「どうして引っ越すんですか?」
「一日目は種を付けるために水分を調整するのですが、目標とする水分値になった時点で種を切り寝せます。寝せたあとはあまり乾かしたくないので、少し湿度が高めの部屋に入れます。二日目になると麹菌が元気よく動き始め、熱を伴って水分を出してきます。だから部屋を代え、除湿をかけて乾かしていきます」

お話を聞いていると、麹づくりは生まれたての赤ちゃんを育てているようなものだと感じました。麹は、菌によって育ちの速い子、遅い子、元気な子もいるし穏やかな子もいます。また、種麹も10種類以上使っているので、それぞれの特長を生かして酒造りをやっていく必要があると長谷川さんは言います。

長谷川さんに促され、麹室に入ってみました。室内はほわ〜っと温かく感じます。
「いま出麹作業をしているので、少し温度が下がっていますが、通常は35〜36度あります。入った感じは湿度を感じますよね」
温かいだけでなく木の香りもするので、なんだかサウナにいる気分です。
室内は杉板張りで、杉はもともと抗菌作用があり、水分の吸収・放出もできる素材なので麹室の壁にはいいのだとか。

長谷川さんが、二日前に一日目の部屋に入れ、昨日の午前中に二日目の部屋へ入れたものを持ってきてくれました。
「この部屋へ持ってきたときはバラバラなんですけど、もう菌糸が出てくっついています」

確かにお米同士がくっついています。よ〜くみると、菌糸が伸びているのも分かりました。
見た目は固そうなんですけど、持ってみるとほぐれるのが不思議です。











※長谷川さんが麹を少し持ち上げると、確かに見た目はまとまって見えた麹が、はらはらとほぐれていきました。

「麹をやっている人は手がキレイと言いますが、女性は肌がキレイになると思いますよ。ちょっとつまんでいただくと、麹の香りが分かると思います。かめばかむほど味が分かると思いますよ」

長谷川さんに促されるまま、恐る恐る麹を手に取る本上。香りをかいで、少しだけ口に含んでみます。
「ほんとだ、じわ〜っと甘いですね」

※じっと観察し、手に取り、口に含み……。初めてみる麹に、本上はしばし夢中になっています。それはお米と言うよりも、お米に宿った新たな命の不思議を見ているかのようでした。

「麹の出来が酒の味を左右するので、一番気を遣って作業する場所です。作業は半分が仕事、半分が掃除、といった感じです。麹は水分の調整がよくないと、入れた瞬間にばらばらになります。私たちが気にしているのは酵素力価(こうそりきか)というものです。麹の力ですね。これを計りながら仕込みをしていきます。これによって、もろみの元気の強弱が違ってくるんですよ」

ひとことで麹造りと言っても、そこにはとても繊細な作業が詰まっていました。麹室をしっかり掃除して清潔に保つことも、質のいい麹を造るには欠かせない作業なのです。

Director’s voice [種麹について] 長谷川さんのお話にもありましたが、麹を造るには種麹を付ける、という作業があります。この種麹って、なんでしょう?
麹を育てるためには、蒸したお米などに種麹とよばれる胞子を加える必要があります。この胞子を種麹と言います。
お米で麹菌を培養し、充分に胞子が付いたら乾燥させ、お米に付着したまま保存しているものと、胞子だけを採取して保存している場合があります。
蒸したお米にこの種麹を加えると、胞子から菌がどんどん育っていき、麹ができあがっていくのです。この麹菌が増えていく過程でたくさんの酵素も生まれてきます。
日本では平安時代から、この種麹を扱う専門業者が存在し、現代にも、専門の業者がいます。





【プロフィール】
麒麟山酒造
(新潟県東蒲原郡阿賀町津川46)
創業は1843(天保14)年。甘口の酒が主流だった昔から、一貫して辛口の酒を造り続けている地酒蔵。麹も仕込みも手作りにこだわり、地酒マニアの間では著名な酒蔵の1つ。
http://www.kirinzan.co.jp/