番組内容

人の手がないと完成しない麒麟山のお酒をさらに知る。

酒蔵の見学はまだまだ続きます。
次は、酒母(しゅぼ)といって酒の元となるものを造る部屋へ案内されました。
「お酒は清酒酵母の力によって造られていきます。お米のデンプン質を糖に変える働きをするのが麹菌の酵素、できあがった糖分をアルコールに分解していくのが酵母の役目なんです」と長谷川さん。

つまり麹と酵母が二人三脚で酒造りをし、蔵の人たちはそれを手助けしている、といった感じでしょうか。そのために、ここではいい酵母をできるだけ多く育てていく場所なのだそうです。酵母はここで、13日間かけて育てられます。
できあがった酵母は1ミリリットルあたり1億〜2億いると言われてそうで、その数には驚きです。










※酒母室に入り、長谷川さんのお話はより細部の説明に。一つ一つ聞き逃さないようにと、本上も真剣そのもの。

酒母室は、ここまでとは打って変わってひんやりしています。 「ここの温度は10度くらい。あんまり元気を出してもらっては困るので、この温度でじっくり育てます。それぞれのタンクに酵母が入っているのですが、お酒によって使う酵母が違うので、それぞれの状況を記録しています」 甘さや酸度を測定し、それによって温度調整をしていくんです。氷水が入った容器を入れて冷やしたり、お湯を入れて数日かけて温めるといった作業も必要で、これを繰り返しながら育てていくそう。 本当に手間暇かけて、育てているんですね。





※酒母室では、床から顔を出しているタンクに水を張って麹を入れ、そこに酵母を添加して、蒸したお米を入れていきます。出来上がりの温度を計算して、何℃のお米がほしいと蒸す係に要求するそうです。 酵母には泡の出るものと出ないモノがあり、泡のでるものは泡傘をつけないとこぼれてしまうとか。消泡器を使うこともあり、24時間回しっぱなしなので、必ず一人泊まってチェックするそうです。

「13日目にもろみに酒母を移したら、本仕込みが始まっていきます。ちなみに10月ではまだ、蒸したお米の温度がまだ下がりきりません。ですので、氷で水を冷やして使います」

続いてやってきたのは、仕込みを行うタンクが並ぶ部屋。
「下から見るとかなり大きいタンクなんですけれども、この部屋で酒を仕込んでいきます。ここで酒母を入れていくんですけど、3回に分ける三段仕込みをしています。伝統辛口だと酒母を入れるのに4日、そこから仕込みが約3週間、トータルで25日かかります」

3回に分けて仕込むやり方は、実は昔からの知恵だそう。酵母が少ない状態で仕込むと酒母への負荷が大きくなり、酵母が仕事できないそう。すると発酵がうまくいかないので、だんだんと量を増やしていくそうです。この仕込みはすべて計画に基づいて進められます。 まず洗米表で米を洗う計画、続いて仕込みの計画など。計画表には、びっしりと予定が書き込まれていました。









※仕込んだお酒が若い状態で夏を越させるため、温度を低めにしている貯蔵蔵。温度が高いと、業界では老ね(ひね)というん日なたのような香りになってしまうため、そうならないように温度に気をつけているそうです。

ところで、今年で171年になる麒麟山酒造のこだわりってなんでしょう? 「昔から受け継いでいる“酒は辛いもの”という考え方を代々受け継ぎ、伝統辛口にこだわった酒を造り続けています。先ほどの麹米は、すべて手作業で造るというのがこだわりです。あとは、地酒を醸す蔵でありたい、と言う思いがあり、県内産の米100%での酒造りを実現していきたいと思います」

貯蔵蔵の2階には、京都にある酒造りの神様、松尾大社が祀られていました。ここにも、伝統が息づいているのです。

人の手、そして地元にこだわる麒麟山のお酒。地元の人に寄り添い、毎日飲んでもらえる酒造りをするために、手紙やインターネットを経由して届くお客様からの声もしっかり目を通しているそうです。 「おいしい、というのはむしろなくて、いろいろご意見いただきます。でもそれが私たちの励みになっています。毎日飲んでいただいているからこそ、少しの変化もお客様は感じていただいている。だからこそ品質が変わらない酒を造るんです」

日本酒造りは生き物。お米も気温も常に違う中で品質を保つというのは本当に大変なこと。それでも飲んでくれる人たちのために、こだわりを守り続ける蔵の姿勢を伺うことが出来ました。

Director’s voice [酒造りは、米作りから。] 麒麟山酒造のもうひとつのこだわり、それは酒造りに使うお米の状態を常に観察するための部署があることではないでしょうか。仕込みのためには、できるだけ早い内にその年の米の特徴を掴むというのが大切です。そのために麒麟山酒造ではアグリ事業部という米作りの部署を設け、お米の状況をしっかり観察しているそうです。米の状況を把握して、それに合わせて酒造りをしていく。おいしいお酒のために、おいしいお米をしっかりと作ってもらえるよう、自分たちの目で見ていく姿勢が素晴らしいと思えました。 「できたお米で大事に酒を造っていきます」長谷川さんのその言葉が、米作りを以下に大切にしているかを表しているのだと思います。 ちなみに酒米は、普通に炊いて食べると淡泊で味が薄いそうです。食べる方のお米の代表格・コシヒカリも酒造りに使えないことはないのですが、それだと旨みが強すぎ、キレが悪くなるのだそうです。




【プロフィール】
麒麟山酒造
(新潟県東蒲原郡阿賀町津川46)
創業は1843(天保14)年。甘口の酒が主流だった昔から、一貫して辛口の酒を造り続けている地酒蔵。麹も仕込みも手作りにこだわり、地酒マニアの間では著名な酒蔵の1つ。
http://www.kirinzan.co.jp/