大阪市内から車で2時間ほど南へ行ったところにある、和歌山県有田郡湯浅町。高速を降りて少し山側へ走ると、そこは段々畑が広がって、のどかな風景です。 山の斜面には上の方までみかんの木が並んでいます。
ここは全国に数あるみかんの産地の中でも、最高級品の産地として知られる田地区。
訪れたのはちょうど収穫最盛期の12月初旬。











※集落を囲むようにある山をよく見ると、オレンジ色の実を付けた木がたくさん!

小学校の隣にあるみかん畑にお邪魔しました。
ここは、田村みかんのなかでも別格といわれるみかんをつくる、太田さんの畑です。
ちょうど作業されている太田さんに声をかけました。
もう収穫は始まっているのでしょうか?
「早生(わせ)がほとんど終わりで、これから中手、おくてと収穫に入ってきます。こちらの畑は10アールほどあって、みかんの成木が100本くらいあります」

畑にたくさん並ぶみかんの木は、すぐ近くに、小さい木があります。
「みかんの木はやがて老木になってきますから、小さい木を横に植えておいて、少しずつ移行していくんです。それでも7,8年しないとみかんができないんですよ。2,3年で身は付き始めるんですけど、品質のいいみかんはできないですね」










成木に囲まれるように、畑には小さなみかんの木が所々に植えてありました。なんだか親子のようで、かわいく見えます。

「ここの畑は平地なんですけど、ほとんどは日光の当たる山肌の段々畑で育てています。やはりそちらの方が質のいいみかんができるんですよ」
と田村さん。
田村という場所は昔からみかんの産地で、いい場所には中手やおくてのみかんを植えておく、というのが伝統だとか。
「田村の山肌は水はけもいいですし、畑は石垣を組んで段違いにしているので、畑の奥までよく日光が届くんです。それに、海の近くという場所が昔からいいとも言われているんですよ。海の日光の跳ね返り熱や海からの優しい風がみかんにいいようです。日本のみかんのいい産地といえば、ほとんど海の近くでしょ」 確かに、太田さんの言うとおり、みかんの産地と聞いて思い浮かぶのはほとんどが海の近くの町ですね。
海風がおいしいみかんの生育に欠かせないとは知りませんでした。

畑のみかんの木には、下から上まで全部みかんが付いています。
上と下では味が違うのでしょうか?
「みかんというのは、膝から目の高さまでのもので、木の外側の南向きに実っているものがいいみかんです。実る場所によって、もちろん味が違うんですよ。ちなみに葉が3,4枚付いている上になるミカンがおいしいです。だから育てながら、そのようなミカンをできるだけ残していくようにしています」 と田村さん。同じ木でも味が違うっておもしろいですね。

それだけ育てるのが難しいということだと思うのですが、どうやっておいしいみかんを見分けるのでしょう?










※実の付き方で味わいが変わってくるとは、みかんもなかなか奥が深いですね。

「葉が付いていることによって、実ってくると実が下がってくるんです。上に浮いているみかんはやはり味が劣りますね。あと、ガクの部分が黄色くなってくると収穫時期です。最初は濃い緑で、徐々に色が抜けていくのですが、かなり白っぽくなってくると収穫のタイミングです。あまりそのままにしておくと、今度は熟しすぎておいしくなくなるので、それを見極めるのが大変です」
やっぱり! おいしいみかんには、必ず見極める技があるんですね!!

太田さんが、田村みかんがおいしいわけを教えてくれました。
「田村では基本的に木になったまま完熟になったみかんを収穫しているんですよ。ハウスミカンは甘いだけのみかんですけど、田村のみかんは木で完熟させることで、甘さと酸味を兼ね備えているんです」

その方が圧倒的においしいんでしょうね。

「本当の味というのは糖と酸のバランスが良くて、糖度が高くても酸も高ければ酸っぱく感じますし。糖度が12、13ほどあって酸が0.8くらいがいいです。田村の特上ミカンというのは、コクのあるミカンというのが京阪神では認められてブランドミカンになっているんですよ」










※みかんの話題になると話が止まらない太田さん。それだけ熱い思いで田村みかんを育てていると言うことだと思います。さすが名人!

ちなみに田村みかんというのは、高級みかんブランドになっていますけど、その特徴はどんなところにあるのでしょう?
「三方山に囲まれて、その間に海がある、というのが田村の環境。土の質もいい、海に近いというのが、おいしいみかんの育つ最適な環境なんでしょうね。丹精込めて、何代もかけて作ったこの土地柄のみかんが、田村のブランドになっています。私のところは40年ほど前から東京の専門店と取引しているんですよ」

東京の果物専門店と聞いただけでも、高級なイメージですね。
それだけ収穫量はあるのでしょうか?

「田村は小さな地域ですけど、ここだけでも4000トンのみかんが収穫されています。収穫する箱が1箱10kg入りですから、ざっと40万ケースくらいです。それを130人くらいが集まる田村出荷組合というところで、それぞれが責任持ってつくり、出荷しているんです」

みかん農家の方々がプライドをかけてつくる、それが田村みかんなんですね。ちなみに山のみかんの木は、基本的には南側斜面に植えますが、北にも一部植えてあります。これは台風で南がやられることも考えてのことだそうです。



Director’s voice [500年以上の歴史を持つ、和歌山のみかん] 田村みかんは、湯浅町田地区で作られる有田みかんのこと。この有田みかん、今でこそ全国的な知名度を誇りますが、実は、他地域から持ってきたみかんの苗木から、スタートしました。 現在の有田郡にみかんの木が持ち込まれたのは、1574(天正2)年のこと。伊藤孫右衛門という人が熊本から2株のみかんの苗木を持ち帰りました。そのうちの1株が根付いたのが始まりとされています。 実に500年以上の歴史があるんですね。

以来ずっと、伝統的なみかん栽培を行ってきた有田みかんですが、唱和30年頃から山の斜面だけでなく、平地でもみかん栽培が行われるようになりました。 そのご品種改良などを経て、今では極早生、早生、中手、おくてというように、収穫時期に合わせた様々なみかんをつくっています。




【プロフィール】
太田直廣(なおひろ)さん
七代120年近くにわたって、最高級ブランドみかんで知られる「田村みかん」を作る、小南農園の太田直廣(なおひろ)さん。 代々継承されてきたみかんづくりの技を今も守り、東京のフルーツ専門店とも40年近く取引が続いている。
http://www.aridamikan.com/