番組内容

職人の船、道具。一つ一つから、力強さを感じる。

生戸さんの船を見せていたくことにしました。
乗船定員は5名だそうですが、乗ってみると結構広く感じます。
船にはその時期の漁に使うあらゆる道具を積んでいて、操縦席の下には、エンジンルームだけでなく休憩のための寝室もありました。

この船で生戸さんはクエ漁に出るわけですが、クエ釣りの一日は、どのように過ぎるのでしょう?
「だいたい朝4時頃に起きて、4時半に港に来て、アオリイカを釣りに出ます。イカが釣れたら、クエのポイントに行きます。クエ釣りはアオリイカのポイントとは違うので、船の水槽にアオリイカを生きたまま入れて置いて、現場へ行き、潮の流れなどを見ながら釣り始めるんですよ。釣れたら戻りますが、イカがある間は釣ったりもしますね」










※船へ私たちを案内し、装備をいろいろと説明してくれる生戸さん。漁船って小さく見えても、いろんな装備がギュッと凝縮されているんですね~。

クエを釣るためにまずイカを釣らなきゃいけないなんて、結構大変なんですね。
釣り自体は難しいのでしょうか?
「難しいですよ。まぁ、海にあるポイントをくるくる回っているだけですけど(笑)。ちなみに船に登録しているポイントは80~100くらいあるんですよ。昔の人は風景で覚えていましたけど、今は機会に覚えてもらいます」

クエは大きな魚ですから、釣る針もやっぱり大きいんでしょうか?
その質問に、生戸さんが針を見せてくれました。
「デッカ! こんなに大きなハリを初めてみました!!」
「だいたいこれで40kg近くかそれ以上のクエを釣ります。たまに5kgくらいのものもかかりますけどね。これを釣り竿ではなく、糸を持ってそのまま釣るんです。糸は100メートルありますが、いつも釣る場所は40~60メートルくらいの深さです」

それだけ深く入れても、イカの感触が手で分かるとは!
「それはまぁ、長年の経験というやつやね。ただし糸の感触には潮の流れも影響するので、流れに左右されないよう、船でコントロールするんですよ」












※針に付ける糸も、なんだか凧揚げの糸のような太さです。これを機械でなく、手で持ったまま釣るというのは…、職人技ですね!

さぁ、船や道具の説明をしっかり聞いて、いよいよクエ漁へ。
……と行きたいところでしたが、とにかくすごい風! さすがに生戸さんも「今日の漁は厳しいですね~」
もちろん激しく落胆する一同。それを見た生戸さん
「でも、ちょっと沖に出てみたい?」
ぜひぜひ! 無理のない範囲で結構ですので、お願いします!












※出航の準備をしてくれている生戸さん。港の内側はこれだけ穏やかなんですけどね……

勢いよくエンジンがかかりました。いよいよ出発です。
「左右にバランスよく乗っててね。ちょっと行ってみましょう!」

意気込んで船に乗せていただいたものの、とにかく波が荒い! 港の外に向かっている船からも、沖の波の高さが見えていました。

「クエじゃなかったら、このくらいの波でも出ることはあるんですけどね。波が高いと、クエ釣りはできませんから」
と生戸さん。波が高いと糸の感触に影響すると先ほど生戸さんの言葉にもありましたが、実は波が高くなると、クエの影がレーダーにはっきり映らなくなってしまうそうです。











※港で見守るスタッフに「行ってきま~す♪」と元気に手を振る本上。しかし行く手には、白波立つ海。天気がとてもよかっただけに、本当に残念です

港から大海原へ出ると、先の方に岩場が見えてきました。この岩場の20~30メートル先くらいからが、生戸さんのクエ釣りのポイント。
しかし船の上で立っていられないほどの波の高さ!
名残惜しいのですが、そのまま引き返すことになりました。

Director’s voice [クエ漁について] 生戸さんのクエ漁は一本釣り。これは職人でないとできないと言われ、しかも、釣れないときも多いという、毎回が賭けのような釣りです。 クエには和歌山・日高町のほかにも高知や長崎・平戸が知られていますが、和歌山以外の地域では、延縄(はえなわ)漁でクエを捕っているそうです。

この延縄漁は、エサを付けた針を何十本もつなげ、それに大きな浮きを付けて海に投げ入れます。海に入れてしばらく待ち、引き上げる。これを繰り返すのです。 生戸さんの一本釣りはというと、魚群探知機を見ながらポイントを決め、アオリイカを付けた針を海に投げ入れます。あとは手の感触でアタリを探り、釣る。 イカは自分より強いクエを見ると、逃げようと暴れます。その感触を手で感じながら、ひたすらアタリを待つ。これが生戸さんのクエ釣りです。 生戸さんは、手に感じるイカの泳ぎ方で、近くにクエがいるかどうかも分かるそう。





【プロフィール】
生戸 学(うと まなぶ)さん
クエの一本釣り漁師、生戸 学(うと まなぶ)さん。大阪で生まれ育ち、趣味の釣りが高じて日高町で漁師になることを決意。その後クエ釣りに出会い、一瞬で虜になる。