番組内容

バラの収穫はなかなか難しい…

さて、ハウスの奥でバラに囲まれながら、取材は続きます。

話しながら本上が気になったのは、バラを植えてある高さが高いこと。
土で栽培するものとばかり思っていたのですが…

「現在のバラ栽培は、実はあまり土でやらないんですよ。うちでもスポンジのようなものに植えていて、そこに水と養分を送り出しています」

土じゃなく、というのは栽培するのにその方が便利だからなのでしょうか?

「コントロールがしやすい、ということがメリットですね。土の場合はどうしても連作障害が出てしまいます。しかしバラは、年中通して安定供給していかなければならないので、こういった設備が標準になってきます。もう20年近くこうやって栽培しているんですよ。このおかげで、今まで日本で作れなかった、そして土では栽培できなかったバラが作れるようにもなってきています」










※杉本さんのお話は、初めて聞くことのオンパレード!バラ栽培の世界は、とても進歩しているのだなぁ、と感心してしまいました

でも、元々は土で育つ植物ですよね?
土じゃないからできなくなった、ということはないのでしょうか。

「それはないですけど、土じゃないから、しなやかさと光沢がなくなった、という品種はありますね。バラにはそれぞれ相性があって、この品種は土の方がいい、というものがあります。うちではこの溶液栽培方法に合ったバラだけを育てています。ちなみにバラには流行があるので、育てるには流行に合わせながら、産地のカラー(特徴)を出していくようにしています。産地によってそれぞれカラーがあるので、それを出すことが大切ですね」
杉本さんによると、バラは温度や湿度にも気を遣わなければいけないそう。バラは春の気候がよく育つと言われていて、温度で25度、湿度はやや高めの70%くらい。植物は湿度が高い方がよく育つのだそうです。

そうそう、肝心のことを聞かなければ!
収穫どきというのは、どういう風に見分けるんですか?

「お花というのはそれぞれ顔があって、すべて一緒ではないんですよ。目の前のバラ、手前のバラ、どちらも違うんです。それに天気によっても気候によっても違ってくるので、それぞれに合わせて、私たちは切る花を選んでいます。目の前にあるやつ、ちょっと収穫にチャレンジしてみますか?」

でも、咲いているのが見えないので、上から花を見て切る、というわけにはいかないですよね?

「お花を見て切る、というよりも、下から見て上の表情を想像して切る、という感じですね。365日観察しているからこそ、そろそろだな、という感じで切ります。だから花ごとに切る担当がいるんですよ。ちなみに品種によって切り方も異なるので、30品種あれば30パターンの切り方があります。なかなかの職人技なんですよ」

種類によって担当がいるんですか。すごいですね〜

「子育てと一緒ですね。子どもの顔を見ていると状態が分かってくるのと同じで、お花の様子を毎日見ながら育ていくんです」









※バラの花を見上げながら話をする杉本さんと本上。バラを収穫する一つの目安は、ガクが少し開いた状態であること。それが収穫後に一番キレイに見える状態だそうです。








※杉本さんに教わりながら、恐る恐る、本上もバラを収穫してみました。なんとも美しい…

「イングリッシュローズというのは花ビラの枚数が普通のバラの約3倍あるんです。これだと約100枚あります」
100枚! 収穫したのは直径が4センチ程度のバラだったのですが、これが最終的には手のひらサイズにまで開くそうです。100枚の花ビラが手のひらくらいに開く…。想像しただけでうっとりしてしまいます。

「お花を育てる方法にはいろんなものがあるんですけど、当園のハイラック方式だと、日照の状態などを考えながら、高さを調整しています。株を守る、という意味もあるんですよ。バラの寿命は意外に短くて、3年から4年です。流行がその年数で変わってくる、というのもあるのですが、切花として出荷するバラの寿命もそのくらいなんです」
こんなに美しいのに、はかなさも持ち合わせているんですね、バラって…

※花が完全に開いていなくても、この美しさ!バラってやっぱりすごいですね。

育てるだけでもたくさんのこだわりが必要なバラですが、収穫するときにはどんなことにこだわっているのでしょう?

「お花のことを考えて、朝一番に切ることですね。朝日を浴びてしっかり栄養を保った状態で切ることが大切です。朝の切り立ての状態で、お客さまにできるだけいいお花をお届けしたいですし、毎日決まった時間に切らないと、花が開きすぎるとか、硬いとかムラが出てくるんです。だからそれを考えて従業員みんなで切っています」










※花を切っているのは8人。8名で1日約1000本も切っているとか。従業員は毎朝それぞれ、自分の担当の花の所へ行って、花の様子を確認しながら切るそうです。

ハウスの中を歩きながら話していると、なにやら大きな機械の前に出ました。

「これは二酸化炭素を発生させる機械なんです。植物は二酸化炭素を吸って育つので、そのためにハウスの中に二酸化炭素を発生させています。空気中に二酸化炭素の量を増やしてあげるというのと、ハウスの中はどうしてもどんどん低くなっていくので、それをおぎないためです。光合成は日中なので、日中に二酸化炭素を増やし、夜は止まっています。センサーで濃度を測って、一定に保っているんですよ」

杉本さんが機械のスイッチを入れると、途端に唸るような音。
こんな機械があるってことも初めて知りました。

「そうですね、植物を育てるためには、いろんなことを取り入れています。果樹農家さんでも、取り入れているところがあるそうですよ」

Director’s voice [買った切り花はどうやって保つ?] 花を育てることも好きなら、切り花を買うことも好き、という本上。
もちろん多くの方が切り花を買うと思いますが、できるだけ長持ちさせるにはどうすればいいの? という疑問も持っているのではないでしょうか?
杉本さんによると、この季節なら、バラはなんと1か月くらい花を保つことができるそう。条件はいろいろありますが、小分けして飾る、というのが一つのポイント。
花瓶にどかっと入れてしまうとお花の通気性が悪くなったりお花同士が近すぎて、傷が付いてしまうそうです。
また、お花専用のハサミを持っておき、水の中で斜めに切って、水を吸わせる表面積を広くする、というのも欠かせません。
さらに、花瓶の中に10円玉を入れる、10円玉でなくても銅製品を入れるのもポイントなのだとか。その際は、一つの花瓶に10円玉4、5枚くらいを目安にするといいそうです。





【プロフィール】
杉本正樹さん
1700坪の敷地でバラを栽培している「杉本バラ園」の二代目。父親の代からバラ栽培をはじめ、これまでに「日本バラ切花品評会」に何度も入賞しているほか、内閣総理大臣賞も受賞するなど、品質の高さ、栽培へのこだわりで知られている。