堀川ごぼうを掘り終えたところで、
石割さんと堀川ごぼうとの出合いを聞いてみることにしました。
石割さんのお宅は代々農家。
石割さんが幼少の頃にはすでにごぼうを作っていたそうで、
それが石割さんの代になり、
料亭の料理人の方たちとの話がきっかけとなって変わります。
「横に寝せて本当の堀川ごぼうを作ってほしいと言われて
作り始めたのがきっかけです。
まだ30年ほど前ですね。
堀川ごぼうはそれまでも、
京都の北の方、白川の方で作られていたんです。
しかし向こうのは土が深くなくて、短いんですよ」
土が軟らかい石割さんの畑では、
1メートル近い長さで、香りが豊か、食感も繊維質が強すぎない
堀川ごぼうができます。
「全国でいろいろなごぼうが作られていますけど、
その中でも一番の柔らかさだと思いますよ」
さらに
「うちのはほら、重たいでしょ(笑)」
ちなみに堀川ごぼうの特徴は、表面の亀裂だと石割さん。
「ケガをしたところが治ってきたかのようになっているでしょ。
これは少しずつ太って、ひび割れをして、修復して、
を繰り返しながら育つことでできるんですよ」
さて、場所を移して石割さんのお宅にお邪魔しています。
実は石割さん、京都大学でも教鞭を執られているそうです。
「京野菜+みなさんが普段食べている野菜を栽培するという、
栽培を種まき、植え付けから収穫まで教えています。
座学では京都の伝統野菜の歴史を教えています」
内容がとても京都ならではな授業ですね〜。
しかも口内に農園まであるのだとか。
「農学部の植物栄養学の先生が農園を設けて下さって、
石割京大農園と名付けていただいているんですよ」
その環境で石割さんから農業を教わるなんて、
とてもうらやましい! 学生さんの様子はどうでしょう?
「常に活字ばかり見ている子でしょ、
こんなんできるかな?と聞いても、最初は返事が返ってきませんでした。
でも今は違います。すごくいい笑顔で生き生きしています」
そりゃそうですよね〜。絶対に楽しいはずですから。
では、彼らを変えたのはどんなことだったのでしょうか。
「僕が思うには、自分が育てた野菜を食べるからではないでしょうか」
大学で農業を教え始めて4年、育てる喜びと、
それをいただくというところまで体験していくことで、
学生の皆さんの表情や取り組む姿勢も変わっていったんでしょうね。
「やはり自分が育てたんだ、という気持ちが大事だったんでしょうね。
今はもう、私が言わなくても率先して作業にかかっていますよ。
初めて来た子でも、先輩に聞いてどんどんやっています。
私は最初に、生き生きとした学生になってほしいから野菜を食べてほしい、
と言ったんですよ。それで続けていたら、本当に変わってきました。
イチゴやラズベリー、京野菜に一般の野菜と、いろいろ育てています」
授業では作物の持っている力を出してあげることを大切にしている石割さん、
作物の力が湧くようにしてあげることを教えながら、
「実は私も若返ります、相手は学生ですから」
だそうです(笑)
大学の授業で石割さんが重視しているのは、作物のことをよく知ること。
「読み取る力というのでしょうか。
作物が今何をほしがっているのかな、水なのかな、肥料なのかな?と
読み取る力を身につけていってもらわないと、
社会に出て行ったとき役に立たないですからね。
読み取る力を付けることは、
相手が何を求めているかを知ることと同じですから」
野菜と向き合いながら、その先は人とのつながりといった、
大きな方へ向かっていくんですね〜。