番組内容

お箸で割れる柔らかさ!京都が育てた堀川ごぼう

石割さんのお宅に移動し、お話を伺っている間に とてもおいしそうな料理が出てきました。

「これは料亭の、というのではなく、 一般のご家庭で普段食べるような料理ですね」 石割さんの奥さんが出してくれたお皿には、 堀川ごぼうの中に、すり身が入ったもの。
金時人参と大根で紅白の彩りも添えられています。
「堀川ごぼうの中をくりぬいて、少し煮付けにしています。
赤い方がエビのすり身で、白い方が鶏肉です」 と奥さん。







※この料理は先に堀川ごぼうをさっと茹ででおき、中をくりぬいてからすり身を詰め、おだしで煮て完成です。手軽なんですけど、滋味深い味!

見た目がキレイでお出しの香りも食欲をそそります。
おいしそ〜う、いただきます!

お箸を入れて見ると、さくっと割れるほど柔らか。
堀川ごぼうはこれすっと煮える。
この柔らかさは京都の気候風土が育てているんだと思う、と石割さん。

ホントにきめ細やかでおいしいごぼう。
筋張ったところがひとつもなくて、 風味はごぼうなのだけど食感が柔らかく、不思議な感じがします。
鶏のいいお出しもしみていて、じんわりおいしいですね〜。









※京都の料理らしい端正な見た目、そして香りにやられっぱなしの本上。もちろんスタッフも収録後にみんなでいただきました〜。

ところで石割さんは、「京野菜マイスター」にも認定されているそう。
認定数は少ないと聞いているのですが…。

「京都府内の農家では6、7人くらいしかおられないそうです。
京都には伝統野菜が38種類あるんですよ。
絶滅しているのが「東寺かぶ」と「郡(こおり)大根」の2種類。 これをほぼ網羅して、育て方からすべて知っているというのが、 京野菜マイスターなんです」

つまり京野菜のプロ中のプロ!
最近では京野菜に対して関心を持っている方が どんどん増えてきていると思うのですが、 そういった人にも、石割さんが持っている知識が 役に立つことも多いのではないでしょうか。

京都の気候風土が育んできた京野菜。
おいしさはもとより、何が人を惹きつけているのか、 石割さんに聞いてみました。

「京野菜というのは独特な繊細を持っていると思うんです。
冬になると甘くて柔らかくなり、 夏はどちらかというと体を冷やすもの、お茄子や聖護院キュウリとか、 あとビタミンを摂る唐辛子類。
これらそれぞれが持っている持ち味がうまく一般の生活に馴染んでいる、 それが大きな魅力ではないでしょうか。
地方で大量に生産しているというのではなく、 京野菜は、京都で昔から細々と作り続けている農家が多いんです。
種はほとんどのものが自家採取ですし、 京都の気候風土に合った種として脈々と受け継がれている、 ということでしょうね」

今の時代、大量生産・大量消費で いかなきゃいけない部分というのもあると思うのですけど、 一方で、伝統的な野菜を守って受け継いでいく、 というのも農家さんの大切な役目になっていくのですね。









※取材の最後には奥さんも合流。料理を作り人の視点で、京野菜のよさをお話いただきました。

京野菜について石割さんは 「やはり京料理といわれるものにはなくてはならないものがあるんですよね。
地方で作るとキメが繊細でない、味が少し違うというのがあるので、 京都で作るからこの味が出る。全国で作られても問題ないのですけど、 やはり京都ほどの繊細さが出てこない、ということがあるでしょう」
と言います。それは気候風土であったり水であったり土であったり、 作り手の人達のずっと続けてこられた努力が 受け継がれているということなのでしょう。
それが京野菜、継承の味ですね。

大学では法律を専攻し、就職はハイテク産業、その後に家業を継いで 農業をやっている石割さん。
農業をやってからすごく生き生きとするので、 これはやっぱり後世に伝えていかなければ、と思っているそうです。
「この仕事に向き合って、残していかないと私たち以外の農家の方も困っていきます。
京都の野菜が残っていかないと、京料理も発展していかないでしょうし。
京都で採れたものが気候風土に相まって上手に育っていく、という部分があるから、 それを私たちが残していかないと。
京野菜以外の野菜で作った料理を食べた人に “どことなく違うな”と思われるのも悲しいですからね。
だから受け継いでいかなければ、という使命感があります」










※石割さん宅に飾られていた「京野菜マイスター」の認定証。石割さんの農家としての誇りが、ここに詰まっています。

京野菜を守り、継承するために活動を続ける石割さんに、 百年後の農業がどうなっていくと思うか、最後に尋ねました。
「百年後というのは、二分するだろうと思います。
簡単に作れて食べられるもの、今までと同じように作っていく農家と。 いまのスナック菓子ではないけれど、 簡単に栄養が取れるものというのが発展していくと思うので、 そういう意味で二分化されると思います。
その一方で京野菜というのは、 作り方の技法や交配技術を農家が持っていて、 これを先人からずっと受け継がれてきています。
例えばうちは本家が平安時代から洛外で農業をやっていて、 分家してから私のところが江戸時代中期くらいから農業やっています。 こういう部分も、残っていかなければと思います」

桂川の下流域には本当に肥沃な大地があり、 土手の位置が変わって以来、ずっとそこでは農業が営まれてきました。
しかもここでは、京都の伝統的な野菜が生き生きと力強く生育しています。
吉祥院には川と作物がある風景というのが きっと昔から変わらずにあったのだろうと思いながら川を見て、畑を見ていると、 人が続けてきた農業という営みの大きさにあらためて感銘を受けましたし、 肥沃な大地をはぐくんでいる川の存在ってすごいんな、とも思いました。

最後に恒例の記念撮影。このあとはなんと、収穫のお手伝いをさせていただいた堀川ごぼうをはじめ、石割さんが育てているお野菜を少し分けていただきました〜。


Director’s voice <京野菜マイスターの活動> 京野菜の魅力を発信するなど“京野菜の伝道師”として 京のふるさと産品協会が認定している「京野菜マイスター」 現在は石割さんをはじめ生産者が7名、 流通関係者が6名、料理関係者が8名いらっしゃいます。 みなさん京野菜の流通から販売、料理までそれぞれの分野で 卓越した技術や技能、知識を持ち、 厳しい条件をクリアして認定された方ばかり。 各々の専門分野で活躍されているほか、 講演会などでも京野菜の魅力発信、認知拡大のために 活動されているそうです。 日本各地にある地野菜、伝統野菜の中でも特に 京野菜は長い歴史や文化との関わりが深い食材。 その魅力を知り、私たちが口にすることは、 日本の豊かな食文化を次の世代に受け継いでいくことにも きっとつながってきます。 もちろん京野菜だけでなく皆さんが暮らす街で採れる食材にも 目を向け、日本の食を暮らしの中に取り入れてくださいね。


【プロフィール】
石割 照久さん
江戸時代から続く農家の10代目として、京都の伝統野菜のひとつである「堀川ごぼう」を育てている。ほかにも年間で約70種の野菜を育て、その多くが著名料理人や全国のレストラン・料亭からの求めに応じて作るオーダーメイド野菜。 京野菜マイスター認定委員会によって「京野菜マイスター」の認定も受けている。