番組内容

#101 奈良の伝統野菜が元気に育つ山のふもとの小さな集落へ

今回お邪魔しているのは、奈良県奈良市高樋町です。
大阪の梅田から1時間ちょっと東へ行った場所なのですが、 ホントにのどかな場所で、 少し高台に上がったところに私はいるのですけど、 眼下には奈良の街並みが見えていますね。
遠くの方には山も見えていて、素晴らしい景色が広がっています。
目の前には段々畑、ちょうどその少し先にいらっしゃるのが三浦さんでしょうか。









※三浦さんの畑は、山の谷間にある山村の中。振り返ると遠くに奈良の街が見えます。

作業中の三浦さんの元へ行ってみました。
目の前の畑では畝ごとにいろんな野菜が植わっているように見えます。

「小さな畑なんですけれど、畝ごとにいろんな種類の野菜を育てていて、 わかりやすいように畝で整理しているという感じです」

広い! といえる程の畑ではありませんが、 これだけのスペースでちょうど40種類の野菜を育てているそうです。
葉っぱの色も赤っぽいものからグリーン、紫までいろいろですねぇ。

三浦さんは奈良の伝統的な野菜を育て、 それらの調査研究と栽培保存活動をされているそうです。

「奈良は京野菜などに比べると取り組み自体が遅れていて、 20年ほど前は誰にも研究されていない状態だったんです。
そのころに私たち夫婦ふたりで自分たちのライフワークにしようと、 奈良で野菜を作っている農家さんに出向いて、 その方々からお野菜のいわれや食べ方を聞き取り調査させていただき、 ご縁をいただいた方の中から実際に種を預からせてもらって、 自分たちの畑で栽培して種を取る、という活動をしています」









※お伺いしてすぐに、野菜の解説がスタート。教えていただくのは、初めて聞く名前ばかり。

農家へ出向いて、と三浦さんはおっしゃいますが、 お話を伺いに行った先の農家では、 そもそも種を買って育てるのではなく、 自家採取で種を取ってそれを毎年植えて、 ということをされていたのでしょうか。

「このプロジェクトをスタートしたとき、 お話を伺った農家の方は60歳前後の方が多かったんです。
昭和38年のときに20歳くらいになった人たちにとって、 奈良では自家採取が当たり前の生活文化だったそうです。
種は取るもんだろ、 と当たり前のように受け継がれてきたということだそうです」

それは一般的に園芸屋さんなどで売っているような種とは 全然違うものなんですか?

「はい、違います。今でこそ伝統野菜を食べていたい、 育ててみたいと言う方がいらっしゃるので、 少しずつブームに乗っかって 種屋さんの中には伝統野菜の種を販売される方が ちょこちょこ出てきているのですが、 僕たちが始めたころは見向きもされていないものの方が 多かった気がしますね」


さて、実際に大和野菜を見せていただこうと思いますが、 どれなんでしょう?

「奈良の野菜を大和伝統野菜と私たち呼んでいるんですけど、 奥の方にあるのが“大和まな”といいます。
その手前にちょっと巻いていない白菜のようなお野菜があるのですが、 “野川まな”といいます。

同じ菜っ葉なんですけど、奈良にはいろんな種類があって、 “大和まな”は奈良盆地で作られてきたものなんですけど、 “野川まな”は高野山と隣接する野迫川で作られているものです」

ちょっと聞いただけで、詳しい話が次から次へと 三浦さんの口から出てきます。











※野菜を愛おしむように話す三浦さん。本当に野菜のことが好きなんですね〜。

ちなみに目の前にある首の方が赤いものは “片平あかね”といって、奈良県の山添村にある 片平という50軒の集落で受け継がれてきた、 大根みたいに細長いかぶ。
引っこ抜いてみると、細くて長くて赤いという、 個性的なかぶなのだそう。

その隣にあるのは野沢菜のような野菜で、 野沢菜のルーツじゃないかと言われている“今市かぶ”。

本当に、いろいろあります。
さて、収穫はどれからいきましょうか。



Director’s voice <野菜が消えてゆく?> 普段から私たちは、実に多くの野菜を目にしています。 実際に口にしているのは、その中のほんのわずかでしかありませんが、 それら野菜の中には、伝統的に育てられてきたものの、 生産性の低さからあまり栽培されなくなり、 絶滅しかかっているものもあります。 三浦さんのように農家を回って種を集め、保護する活動も 全国的に起こってきていますが、 私たち消費者が注目したいのは、園芸店などで販売されている種。 実はこれらの中にも、 絶滅しそうな伝統野菜がちゃんとあるんですよ。 希少になりつつある野菜のうち、 野菜の形や大きさが安定していて育てやすいものをえらび、 種子を販売する会社が商品化しているのですが、 例えば家庭でプランター菜園を楽しむ場合など、 このような種を選んで育ててみるのもいいですね。 楽しみが主の保護にもつながれば、 趣味にも大きな意味が出てくる、というものではないでしょうか。


【プロフィール】 奈良市の山手で大和野菜の調査研究と栽培保存活動を行う三浦雅之さん。 奈良県各地を回っては希少になってしまった大和野菜の種をもらいうけ、 年間で約100種類の大和野菜を育てている。 量産できない、生産性が低いなどの理由で家族向けに作られてきた野菜を 「家族野菜」と称して広める一環で、農家レストラン「清澄の里 粟」も営む。 同レストランは2012年にミシュランガイドで星も獲得している。
清澄の里 粟 http://www.kiyosumi.jp/awa/