番組内容

さっそく大和野菜の収穫。どれもこれも、楽しすぎる!

収穫を終え、三浦さんに促されるまま別の場所へ向かいます。 そこは三浦さんが経営する小さなレストラン。 おやおや、テラスにヤギが2頭いますね〜。









※畑から歩いてすぐのところへ。途中集落を通りますが、なんだか歴史を感じる佇まいです。

さて、レストランの中にお邪魔していますけど、 とても天井が高くてステキな空間ですね〜。 テーブルの上にはいろんな野菜が並んでいます。
「ここに並んでいる野菜は、実際に料理を召し上がっていただくお客様に ご覧になってもらい、手に取っていただけける野菜の現物なんですよ。 なかなか流通していない野菜もたくさんありますから、 初めて目にするお客様が五感で感じていただけるように、 実際に手にとっていただけるとより食材と仲良くなっていただけるかな、 という意図で置いています」
そういう三浦さんですが、 そもそも農業、そして大和野菜との出合いはなんだったのでしょう?
「僕は京都の舞鶴の出身で、実家は農家ではなかったんですけど、 自分たちの食べる野菜を父親が家庭菜園でつくっていました。 僕は畑に行くのが好きで、父親にくっついて畑にいく、 という農業との付き合いはやってはいました」
それがひょんなことから、農業へ、ということですか?

「もともと社会福祉の研究員をやっていて、福祉のテーマについて考えているとき、 まずは人間が生涯現役で、家庭の中で生活していけるのがベターだな、 ということを思いが生まれました。
そんなときにアメリカのネイティブアメリカンと生活する経験があって、 彼らの生活の中に制度・法律・テクノロジーはないのだけど、 お年寄りが幸せに暮らしている姿、 地域の中で皆さんが助け合って生きているというのを目の当たりにしたんです。 そして、その暮らしの中心にトウモロコシがあることを知り、 農的な生活と福祉は関係があると気付いたことで 農業に関する興味が湧いた、というのが始まりですね」

三浦さんによると、農業と飲食の関係性には 料理人が食材にこだわりすぎて結局自分で作っちゃった、 もともと農家で多角経営をする中でレストランを始める、 という大きくは2つのパターンがあるそうです。しかし 「僕の場合はどちらでもなく、ものすごくレアケースです(笑)」

まったくの異分野から農業へ。
当然知識と実践が必要だと思うのですが、やはりどこかで農業を?

「奈良に桜井に川口よしかずさんという、自然農法を実践している方がいて、 そこに妻とふたりで2年間通い、自然農法については教えていただいたんです。 そのあとは畑をやっているこの地元のおじいちゃんおばあちゃんに、 地域の農業のやり方を教えてもらっています」









※店の入口前には田んぼの神様・猿田彦神が。「江戸時代のもので、旧薩摩藩からご縁があってやってきたんですよ」と三浦さん。

そうして現在の地で農業を始められた三浦さん。
そもそもこの場所との出合はなきがきっかけなのでしょう?

「もともと私たちは農家ではなかったので、農業するためには農地が必要ですよね。
ですが僕も妻も、実家が離れています。
そこに偶然、僕の会社の同僚からこの場所を借りる話があり、 まずは借りて、そのあと譲り受けました。 もともと50年くらい耕作放棄地だったそうで、 そこを妻と二人で3年かけて開墾したんです。 今思うと絶対やりたくない、と思うのですけど、そのときは夢中でしたね」

開墾からご夫婦で!


農業をスタートさせた三浦さんですが、 最初から地元の種をまいてみようと思っていたのでしょうか?

「その当時は奈良の伝統野菜を開墾しながら、 一週間の中で4日開墾して残りの3日を種の調査とか、 作っているおじいちゃんおばあちゃんに話を聞く、ということを繰り返していました。 最初からすべての種が集まっていたわけではなく、 開墾していくと畑が増えていく、 種も同時にいろんなご縁で植えていく。 広げた畑に種をまく、を繰り返していきました」
しかし種をください、じゃあどうぞ、というわけにはいかないですよね?

「奈良の場合は伝統野菜の取組がまったく行われていませんでした。 私たちからすると非常に貴重な種なのですが、 作っている人からすると、当たり前。 貴重なことを理解している人が少なかったので、 貴重だと言うことを伝えていき、そこでいろんな話に花が咲いて、 料理の作り方とかも教えてもらって、仲良くなって、 その流れで種をいただく、ということが多いですね」









※三浦さんのお店へ入る前、看板ヤギ(?)のペーターが迎えてくれました。とっても人なつっこくて、魅力的ですね〜。

伝統的な野菜の魅力って、どういうところにあるのでしょう?

「最初に僕がいろんな野菜を見て思ったのが、 色彩とか形状が非常に個性的だということ。 例えば大和三尺きゅうりというのは、 三尺という名の通り、とても長いきゅうり。 またこの地域の友人が育てているウーハンというものもあって、 これは85年ほど前に日本にやってきて、 台湾の名前のままで育てられているんですけど、 味わったことのないような粘りを持っているなど、 非常に個性的な特徴を持っているものが多いんです」
野菜にはバランスシートというものがあり、 収穫量や風味、手間がかかるなどいろんなポイントで評価し、 どの野菜をシダ照るかの目安にするそうです。 一般的な野菜はトータルバランスが高いから たくさん作られているんですけど、 三浦さんによると、伝統野菜はバランスのグラフが キレイな多角形ではなく、凸凹、ばらばら。 でもグラフがとんがっているところに特徴があるそうです。











※話をしていると、窓の方からコツコツ、という音が。

振り返っているとペーターが窓を脚でノックしているではありませんか!実はペーター、お客さんが来ると脚で窓を開け、ご挨拶に来るそうです。たまたまこの日は窓が施錠されていて、それでペーターは「開けて〜」と脚でコツコツやっていたのでした。

そうそう、とにかくたくさんの野菜を作られていますが 数あるお野菜の中でも、印象に残っている種はありますか?

「伝統野菜には絶滅していっているものもあって、 文献には載っているけど実際に探しに行くともう作っている人がいない、 というものがあったんですね。
その中に「むこだまし」という粟がありました。
これは十津川村にあると文献に記述があったのですが、 行ってみると、もう作っている人がいませんでした。
しかしたまたま、村の一人の方が、 20年前の種を缶に入れて持っていたんです。
それでお会いして種を預かり、 実際にまいてみると芽が出たんです。
十津川村の伝統的な作物が復活した、と思い出深い野菜ですね〜」

え〜っと、そもそも20年前の種って芽が出るんですか?

「出るものと出ないものがあります。あと保存の状態によっても違います。 穀物の寿命って長いのですが、さすがに20年は… しかし保存の状態がよかったこともあって、芽が出ました。 作ってこられた方々は高齢のことが多いので、 そういった種を受け継いでいくというのはこの時代の大事なテーマで、 しかもタイムリミットがある、大切な仕事なんじゃないかと思います」
種をもらい、育てていくことを大切な仕事だと言う三浦さん。
実は大和野菜の栽培だけでなく、 それらを使ったレストラン「清澄の里 粟」を営んでおられます。 三浦さんがこのお店でやってこられたこと、 今後やっていきたいことってどういったことですか?

「そもそもお店をやるということは、自分たちの生計を立てることにもなります。
実際に自分たちがライフワークにしようと思った 「奈良の伝統野菜を受け継いでいく」ということを考えたとき、 お野菜を作っていく自然な形というのは、 みなさんがおいしいと言ってくれるから続いていくんだと思うんです。
そこで方法論として選んだのは、 まずレストランを通して食材のよさを知ってもらうということ。
店をスタートした15年前はスローフードという言葉も地産地消ということもなく、 伝統野菜もまったく注目されていなかった時代。
しかしここで続けていることで、 地域で農業したいとか、伝統野菜を育てたいという方も出てきています。
だからこれからは、自分たちが受け継いだ種をもっと作っていく、 そして、農家の方々から受け継いだことは種だけじゃなくて 日本の文化でもあるので、それらも広げていきたいと思っています」









※大和の伝統野菜を作り続け、提供することへの情熱を真摯に語ってくれる三浦さん。言葉にとても熱が籠もっていました。

そんな三浦さんのレストラン、 2012年にはミシュランの星も獲得していて、 予約が取れない店と言われていますが・・・

「よく言われますが、 単純に一日20名様限定でやっている店なので、キャパがないだけですよ(笑)」



Director’s voice 三浦さんはご自身の取組をレアケースだと言います。 確かに本来の目的は伝統的な野菜を残し、育てていくことですから、 その点では現在の取組は稀なケースかもしれません。 しかし全国的に見ても今、野菜をテーマに地域が盛り上がっているのを、 皆さん感じていませんか? わかりやすい例が「道の駅」や「農産物直売所。 龍津ルートにのらない野菜などを生産者が直接施設へ運び、 そこで販売する。購入する私たちは、 鮮度がいい、安いなどの理由で、それらの野菜を購入しに向かいます。 そこに地域で経済の動きが生まれます。 そしてアグリツーリズム的な動きも生まれますね。 農家レストランとなると、今度は地域の女性が活躍する場としても 機能していきます。 地産地消が見直されてきている側面もありますが、 農業が少しずつ、地域と人を元気にしている気がします。 食育、環境問題など、いろいろなメリットが考えられる 野菜を中心にした動き、皆さんも暮らしている地域で、 ちょっと気にしてみてくださいね。


【プロフィール】
三浦雅之さん
奈良市の山手で大和野菜の調査研究と栽培保存活動を行う三浦雅之さん。 奈良県各地を回っては希少になってしまった大和野菜の種をもらいうけ、 年間で約100種類の大和野菜を育てている。 量産できない、生産性が低いなどの理由で家族向けに作られてきた野菜を 「家族野菜」と称して広める一環で、農家レストラン「清澄の里 粟」も営む。 同レストランは2012年にミシュランガイドで星も獲得している。