さて、建設中のセンターからブラッキーさんのご自宅にやってきました。
かなり年期の入った古民家がブラッキーさんのご自宅で、 家の前にも自転車。 そしてなぜか、自転車の横にはここにもおくどさんが。 どういう組み合わせなんでしょうね、これは(笑)
「これね、天気のいい日なんかに仲間うちで “今日はおくどさんでご飯を炊こう”とやるんですよ。 2升ほど炊くんですけど。 そのために近所からもらってきたこのおくどさんがちょうどサイズがいので、 台車に乗せて、どこでも運べるようにしているんですよ。 『ムービーング ミセス おくど』と呼んでいます」
移動ができるおくどさんは初めて見ました。
そしてその横には立派な自転車。
「子ども用の自転車と、僕のロードレース用なんです。
昔はレースをやっていたので」
とブラッキーさん。
黄色が好きなのかなぁ、ブラッキーさん。
自転車も服も黄色だし…。
聞いてみるとそういうことではなく、
ツールドフランスの有名選手のジャージが黄色で、
なんとなく自転車乗りには憧れの色になっているからかも、とのこと。
それに、ブラッキーさん主催の「ウィラースクール」は
ベルギーのスクールなので、
黄色と黒と赤というチームカラーでもあるそうです。
そうそう、入口でのもう一つの発見は、鹿の角!
「ご近所の人で鹿の角をたくさん持っていらっしゃる方が
いたんですけど、お亡くなりになって譲り受けたんです。
子供達のロードレースのトロフィーにしようと考えています」
とブラッキーさん。
どんなトロフィーになるのでしょう。
ブラッキーさんのアイデアだと、
とってもすてきなものになりそうです♪
「さぁ、中へどうぞ」と促され、玄関を開けると…
目の前にはのどかな風景!
「うわ〜!ステキ〜! キレイですね〜」
思わず本上も感嘆の声をあげました。
「水田が一面の水で満たされる時期になると、
田んぼに空が映って、空が二倍になるんですよ。
夜はカエルが鳴き、早苗が風にそよいで、トトロの世界ですよ」
移住を考えているときに、
「一昨日出た物件があるので観に行きましょうか」と言われて
ここへ来たブラッキーさん。
この景色に魅了され、即座に移住を決めたそうです。
しかし、景色もさることながらご自宅、立派な梁です。
「これはお金では買えないものなので、
ぜひ住みたいと思って、半年たって購入しました。
そこからは改修です。使えるところは残していこうとやっていたら、
さらに素晴らしい梁が出てきたんです。
それでその梁を生かそうと、ここは大広間にしたんです」
とブラッキーさん。
ちなみにブラッキーさんのご自宅のリビングは、
田園風景を見渡せるほどの広さ。
「改築するときに床を下げて(ブラッキーさんの背が高いため)、
せっかくだからみんなが集まってワイワイできるように、
テーマを公民館にしたんです」
自転車というきっかけで美山に移住し、
楽しいことをたくさんされているんですね。
「もともと自転車が好きでこの街にやってきたんですけど、
サイクリストにとって田舎って何なのか、
なぜサイクリストは田舎を走るのが好きなのかを考えたんです。
そのときに思ったのが、田舎の景観です。
原風景が残っている場所、
それを借景にしてサイクリストは楽しんでいるんですね。
僕たちサイクリストとしてまずしなければならないのは、
サイクリスト自らも田舎を守る活動をしなければ、ということ。
僕は都会育ちで田舎を知りません。
でもお願いだから田舎を守ってくださいといっても、
“何もせんやつが何を言っているんだ”となってしまいます。
それで、じゃあ田んぼを作ってみよう、と考えました。
すると高齢化が進んで空いていく田んぼが
増えていっていることに気付いたんです。
だからそれらの田んぼをどんどん手がけていきました。
で、かなり多い田んぼを手がけることになったんですけど、
今度は米を作るだけではなくて、
もっとうまく生かせないものかと考えました。
普通なら考えられないけれど、
自分が作っている田んぼならいいだろう、
ということで子供達に開放することにしました。
都会からわざわざ美山町に自転車教室に来てくれる子供達に、
午前中は自転車教室、午後は田んぼでお米を作ってみよう、
というプロジェクトを5年前から始めました。
『がんばったんぼ』と言うんですよ、子供達が名付けたんです。
田植えから稲刈りまでやるんですよ。
それ以外にも、都会に住んでいる人達に、
自分たちでお米を作ってみたいという人がいると、
それをサポートするようにしています」
自転車が好き、自転車で回れる美山が好き。
そこからスタートして子供達が楽しめることを考える、
と同時に街が活性化するということも
一緒に組み合わせて、ブラッキーさんは活動されているんですね。