さてさて、いよいよ自転車タイムです。 ブラッキーさんの自宅裏にある田舎道へと、

ブラッキーさんと本上は自転車を押して向かいました。 道の横には、子供たちに解放している水田。 やがて二人がペダルをこぎ始めると、 牧歌的な風景の中、さわやかな風に押されて自転車は進んでいきました。

イノシシよけの柵が、田舎道を極上のサイクリングロードのように演出してくれています。このままのんびり一日、サイクリングしていたい!

サイクリング後、再びご自宅でお話を伺いました。
そこでブラッキーさんが見せてくれたのは、 子供自転車教室の写真。
自転車の映像を見せているシーンや、 ヨーロッパの自転車事情を見せたあとに日本の交通事情をみんなで考える子供たち、 そしてヘルメットを被ったまま川で遊んでいる子供! みんなみんな、とってもキラキラした瞳が印象的です。
お話を伺っていると、自転車そのものだけではなく、 自転車から派生するいろんな活動をされているようですね。

「僕らのスクールは自転車に乗るだけではなくて、 自転車に乗って何をするかを大切にしているので、 自転車に乗って川へ行くとかを大事にしています。
秋にはスタンプラリーもやるんですよ。
あとは米作り体験も。
みんなで収穫もして、おくどさんで収穫したお米を炊いて食べるんです」 そう話すブラッキーさん。

「僕は自分の一人の親でもありましたし、子供がすごく好きで、 街を元気にするとか、人口が減ってきた街をどうにかしたいと考えるとき、 子供の笑い声が聞こえてくる街にしたい、と思ったんです。 子供が元気な街にしたい、ということですね」


ブラッキーさんが見せてくれた、子供たちのいろいろな写真。見ているだけで、笑顔になっちゃいます。

美山のような里山の地域は だんだんと人口が減ってきているという情報が昨今流れてきます。 そんな中でも、外側から美山を見ると、すごく魅力的に映りますよね。 そのギャップというか、日本全国どこの田舎の町も持っている この問題を、ブラッキーさんはどのように感じているのでしょう?


「僕が移住してきてからこれまで、 毎年100人ずつくらい人口が減ってきている気がします。 でもこの数年、町の若者も元気になってきて、 いろんな取組を始める人も増えてきました。 僕らがやっているプロジェクトもそうなんですけど、 このような活動がどんどん出てきているので、 未来は悲観するものじゃないかな、とは思っています」 とブラッキーさん。 その中で今、考えていることがあるそうです。


「実はこの春、5つの小学校が統廃合されることになったんですよ。 小学校を減らすことによって、 そこに子供を連れて移住しようとする人も減っていくかもしれない。 だからもう一度、5つの小学校に戻したい、 なんとか頑張れないかな、と活動を始めようしています。 美山町でしかできないような、本当に魅力のある教育、 自然とか地域の温かさとかといった力を最大限使った 魅力あふれる学校を何とか実現して、 それを目当てにUターンしてくる人や、 ぜひここに通わせたいと思う人を増やしたいと思っています」

これからの夢についてブラッキーさんが語る熱い思いに、本上も聞き入ります。

具体的には?


「今僕が一番気になっているのがデンマークの教育なんですよ。
デンマークは本当に地域が一体化しているし、 子供たちの主体性を生かした教育があるんですね。
地域性もありますから、全部取り込めるとは思っていないんですけど。
実は先日、自費でデンマークに視察に行き、 いくつもの学校で話を聞きました。

その中で、美山町でできること、すでにやっていることも含めて、 共通点がたくさんあることに気付きました。 簡単に言うと向こう三軒両隣というか、 もともと日本がずっと持っていた近所付き合い、 地域が子供を育てる取り組み方、 地域の姿勢ということがきちんとシステム化されていたんですね。 それだったら日本でもうまく生かして、 日本独自のものをもう一度築くきっかけにしようと」


確かに、美山という町は、 さまざまな活動をされている方が増えてきている印象を受けます。 美山の写真を見る機会も増えましたし、 また美山の自然を求めて訪れる外国の方も増えました。

取材の最後にブラッキーさんから、 美山を訪れる人に向けてメッセージをもらいました。

「美山という街はすごくバランスのいい街だと思います。
ほかの地域はどこへ行っても突出した観光資源がありますが、 美山にはありません。

しかし、全体を通じて及第点を超えられるバランスの良さがあります。
今の日本で忘れ去られたようなことが いろんな条件でたまたま重って、残っているところだと思います。

だから訪れてこの町を知ってもらい、 この町の魅力を広めてもらえればと思います。

これからの日本は、 例えば子供達が幼い頃はどんどん田舎に来て、 自然体験を通じてあとの人生を豊かにしていける 経験をしてもらうようなことが重要です。

そのためにもこういう田舎を残していかなければと思います。
だから都会の方ももっと田舎に目を向けてもらって、 美山町を含めて、 頑張って維持しようとしている町を見ていただけたらと思います」

ここで生まれ育っていないから、 外から来た人だからこそ見えるものが ブラッキーさんにはあるんでしょうね。

言葉の端々からみかがえる、美山町への深い愛。まっすぐにこの町を見つめる瞳に、吸い込まれていきます。

「僕は都会にずっと住んでいて、 都会の良さも田舎の良さも分かっていると思うんですよ。 ですから余計に、 田舎の人たちの中には田舎であることを残念がる方もいますが、 そうじゃない、と思うんです。 田舎には田舎の、都会には都会の特化した良さがあるから、 それを役割分担していければ。 僕は美山町が好きで、美山町に惚れて来ている。

でもそれは僕が作ったものではなく、 先人たちが築き上げて、守り続けてくれてきたものなので、 そこに対するリスペクトはしっかりあります。

だからいつか、 “おまえも美山町の人間になったなぁ”と言われるように 頑張らなきゃいかんなぁ、と思っています」

言葉の端々からみかがえる、美山町への深い愛。まっすぐにこの町を見つめる瞳に、吸い込まれていきます。

人口が全体的に減ってきている今だからこそ、 自分の心の故郷というものを、 どこに暮らしていても持っているべきかもしれません。 たとえば都会に住んでいたら田舎、田舎に住んでいたら都会というように、 いろんなパイプで繋がって、 大好きな場所はあそこにもある、ここにもある、 という生き方ができればいなと思います。

それがブラッキーさんの言う 「今だからこそできる生き方」なのかも。

「参加された子供の親御さんが “なぜか、ここにくると子供が解放されている” とおっしゃるんですが、 それは僕たちのプロジェクトによって、というのではなく、 もともと人はきっと、 緑とか土とか水とか風の中で生き返るものなんでしょうね、 そんな気がします」

土地の持っている力というのを感じる美山町。
ブラッキーさんの活動はそれをサポートするためのこと。
本当に素晴らしい取り組みだと感じました。


<ミニコラム> 今週の風景


ブラッキーさんのご自宅裏にある、田舎道。
小川のせせらぎ、鳥の声、風の音…。
遠くには緑豊かな山々が見え、まさに日本の原風景、という感じでした。

<美山サイクリングの仕掛け人> ブラッキー中島さん

美山町に移住し、「一人でも多くの子供に自転車の楽しみを」とうコンセプトで全国のサイクリスト有志が集まった子供自転車教室のグループ「ウィラースクールジャパン」の代表。 自転車をきっかけに美山の町おこしに繋がるようなさまざまな活動を展開している。
http://cyclingschool.jp/

■今回の訪問地

近年サイクリングスポットとしても人気を集める茅葺き集落のある町・美山町。

里山の原風景が残り、自然豊かなこの街に、サイクリストの起点となる「SYCLE SEEDS」が誕生します。 自転車愛好家だけでなく、美山を訪れる人、そして地元の人の交流の場としても機能する予定だそうです。