現在の屋根晴さんのお仕事は、美山町だけにとどまりません。 具体的にはどういうところへ行かれているのでしょう?
「今、私には弟子が4人いて、 その弟子たちと文化財の修復などで全国あちこちに行っています。 全国あちこちと言うのも実は、 昭和一桁生まれの職人さんたちがどんどん引退されているので、 そこへ僕たちが行っている感じです」
文化財にもいろいろありますし、 地域によってもさまざまな茅葺きがあると思うんですけど、 形の違いとかってあるんですか?
「地域で特色はあります。 僕はこの世界に入った当時、美山でしかやっていなかったので、 美山のことしか知らなかったんです。 焼き芋屋をやりながら生計を立てていた時に将来を考えてみたんですけど、 昭和一桁生まれの方が引退されると、 全国のいろんな技術がなくなってしまうことを危惧しました。 それで冬の焼き芋屋をやめて、 冬に雪の降らない地方の職人さんのところへ行って、 いろんな職人さんと仕事をさせてもらい、いろんな技術を学んだんです。 この全国武者修行おかげで今は全国からいろんなご依頼をいただくんですけど、 それに応えられる技術力がいつの間にかついていました」
現在屋根晴さんの元にいるお弟子さんは、 30代が1人、20代が3人、一番若い方が22歳だそう。
「初期の頃は大学の集団面接会に乗り込んでいって、スカウトしていました(笑)」
ところで屋根晴さんは、美山をどんな場所だと見ているのでしょう?
「都会の方は、美山に山奥というイメージを持っていらっしゃいますが、 実はすごく近くて、すごく川が近くて、 すごくいい人たちが住んでいて、人間らしい町です。 僕は小さい頃から大家族にあこがれていたんですけど、 この地域の方がみんな家族だと感じています。 こうやって宿泊事業をしていて、世界からいろんな方が来られますが、 “私の家族に会いに来てください”という気持ちでやっています」
どうやら屋根晴さん、美山の里にも人にも、惹かれているようですね。
茅葺きの里として美山は有名ですが、 その茅葺き屋根の家は、今後どうなっていくのでしょう? 屋根晴さんにそう問いかけると、 下の世代がすごく興味を持っているので、 あと10年くらいしたら、見直されると思う、とのこと。
茅葺きの未来のために、宿泊事業も手がける屋根晴さん。 その世界に、ぜひふれてくださいね。
最近は昔ながらの美山の景色を、 写真や映像で目にする方も増えているようです。 そんな方々に、最後に屋根晴さんからメッセージをいただきました
「美山町というところは非常に美しいところで、 素晴らしい人々が住むところ。人々の美的センスが違うと思います。 自分の欲よりも、それが地域のためにいいかどうか、 という価値観で動いているので環境が守られていいます。 滞在するとそれがわかるので、 立ち寄るだけではなく、ぜひ滞在して感じてほしいと思います」
ちなみに屋根晴さんが思う、この時期この時間が美山はいい! という瞬間は“朝”。
「蛙の声を聞きながら眠り、鳥の声で目覚めて茅葺きを見るわけですが、 毎朝、茅葺きは表情が違うんですよね。 それが毎日の僕の楽しみです」
朝の時間、それは確かに、滞在してみないとわからないですよね〜。