ということで、公民館の中へ。 イシワタさんのアート活動はどこで行われているのでしょう?

「こちらの和室の中でなんですが、 毎週金曜日の午後2時〜5時半に “やまやま休憩室”という名前でこの和室を開放しています。
老若男女、遠方の方でもどなたでも お茶でも飲みながら一緒におしゃべりしませんか という場所になっています。
何かを企画するのではなく、 たまたま居合わせた人同士で、 いつの間にか何かに繋がって、というような、 きかっけ作りの部屋なんですよ」

イシワタさんの活動拠点は公民館!確かに、街の人たちが集まれる場所ですね。

ということは、すでにここには 常連さんがいたり、ゲストの方もいたり?

「そうなんです。 多くの方が押し寄せてということではないのですが、 ここを始めてから多くの人と出会いましたし、 これから何か始まるかもしれないという ワクワク感を持ったお茶目な人が たくさん潜伏しているんだなって」
そう言ってイシワタさんが、 和室へ案内してくれました。
一歩中へ足を踏み入れた本上 『わ〜〜〜〜!楽しくなっちゃう!』

イシワタさんの作品はどれも、 とっても色彩が豊か。
本上、取材を忘れてしばし見入ってしまいました。

イシワタさんが福知山へ来てから描いた襖絵に見とれる本上。この絵だけでも、街と関わり合っているそうですが…

「こちらの襖絵は福知山に来てから描いたものです。 タイトルは“ニュー福知山”。
福知山市街地にある『鳥名子』という老舗鴨鍋店の系列 『柳町』というお店のギャラリースペースで 襖絵の公開制作をさせていただいたんです。

そのお店のギャラリーは 若いオーナーやスタッフ、地域の人々が 等身大の目線で試行錯誤しながら 町との関わりを模索している姿に出会える 魅力的なギャラリーなんです。
それまで町と関われずにふてくされていた 自分の転機になって、この襖絵が描けました」

ん〜、いろいろ気になる言葉が出てきましたねぇ。
まずは、“ニュー福知山”について聞いてみましょう。

「福知山では、老舗のお茶屋さんなどの代を継いだ 若い世代の方たちが、色んなことをされているんですね。
ギャラリーで行われた『福知山の小さなお土産屋さん(主催:LOOW)』という展示企画の中で、 そうした若い方たちとの出会いに触発されてこの襖絵を描かせていただきました。
福知山の定番土産のおどりせんべいのマークや 福知山音頭の踊り、かわいい小鳥、 家の側に落ちていた椿など、 わたしの日常の出来事を書き留めた作品なんです」


イシワタさんと話しながらも、そこに並ぶいろんな作品に 夢中になっている本上。イシワタさんの作品で、 いろんな画材が使われている点も気になったようです。

『ニュー福知山』は、とっても自由な、のびのびした作品。 順番に描くのではなく、今日はここから書こうと思って、 みたいに描かれているのでしょうか?

「そうですね。思いついたままに、ですね。 公開制作だったので、 話かけられて、話こんでしまったり、もありましたけど。 私は人の影響を受けやすいので、 日によって思わぬ方向に進んだりしたりもします」

なんと、公開制作だったとは! 1、2週間の会期の間に5、6日通って完成させたそうですが、 これは一見の価値あり! ですよ。

ところで、アーティストとして感じる 福知山の魅力とは何なのでしょう?

「言葉は悪いかもしれませんが、町全体の中途半端さ。
ちょっとダメな感じとか、人間臭さとおおらかさ。
器用にまとめられていないとことにリアリティを感じますね。
そんな地域の人々との関係の中だからこそ、 いろんな創作意欲をかきたてられます」

イシワタさんの作品をいろいろ見せていただきながら、 アート目線で感じた福知山を教えていただきます。 しかしなんなのでしょう、このほっこり感(笑)

確かにツーリストとして来ると、 地元の人と出会う機会あまりありません。
しかしイシワタさんの個性のある作品を見ていると、 町全体がビビッドに色づいて感じられます。
そんなことを考えながらふと本上が手に取った冊子、『このあたりのしんぶん』??

「私は自身の活動の一環として 『いろいろやってみる部』の部長と 『山山アートセンター』をしているんですけど、 この新聞(フリーペーパー)が、 活動に注目してもらえたきっかけになったんです。
毎月発行しているんですけど、 タイトルの文字は毎回違う人が担当して、 こんな人たち住んでいますっていうのが 毎月繰り広げられているんです。
四コマ漫画を書いていたり、 コラムを書いてたり、それにまた触発されたり。
福知山の人によろこんで 読んでもらえるようになっているんですよ」


イシワタさん責任編集(?)の「このあたりのしんぶん」。 三岳地域にお住まいの方の邸宅230軒すべてに配布しているほか、福知山市、舞鶴市、京丹後市、綾部市、宮津市などのお店にも設置先が広がっているそうです

元々は500部だったのですが、現在は毎月800部。
毎回テーマもレイアウトも違って、何かを募集していたり、 市民の方が自由に発言したいことを言ったり、 自由な誌面になっているのがなんとも手作りらしい温もり。

「ネタも尽きることは今のところなくて、 今月が難しいなら、次号で載せるからって言ったり(笑) これが活動のメインになっていますね〜」

ほかにもCDジャケットを手がけるなど、 もともと活動の幅は広いイシワタさん。 福知山に来て、さらに磨きがかかっているように感じました。

『このあたりのしんぶん』を通じた人の輪の広がりを本当に楽しそうに話してくれるイシワタさん。いつの間にか、地域をつなぐ人になっていますね。

ところで。 取材にお伺いした時はちょうど『このあたりのしんぶん』 次号の制作真っ最中。 ということで本上も飛び入り参加! さてさて、これを手に取った福知山をはじめ周辺地域の 読者の方、よろこんでいただけるでしょうか…。

本上も実は、こんなことが大好き。「いいんですか?」と言いながら、 瞳をキラキラ輝かせて文章をしたためていた姿を、一同見逃していません。

余談ですが、イシワタさんの作品には、 猫のモチーフが多く見られます。 「祖母が作ったネコのぬいぐるみです。 動物は猫以外にも全般的に好きですね〜。 人間の性格を凝縮させた生き物のような気がして、 いろんな動物に人間社会をなぞらえたりしながら、 作品を描いています」


<ミニコラム> 今週の風景

初夏の陽気に恵まれていたはずの取材日、 突然の雨に見舞われました。 みるみるかすんでいく、辺りの風景。 上でご紹介している公民館の外観写真と同じ時間帯だとは 写真からはまるでわかりませんね。 でも雨霧とともに、山の香りが里へ降りてきました。 それが、今回の取材のごほうびの一つ。

来週も引き続き、<福知山>のイシワタマリさんにお話を伺います。 公民館の隣にある里の駅からイシワタさんイチオシの場所へ向かいます。お楽しみに!





<イラストレーター> イシワタマリさん

ご主人の仕事がきっかけで福知山市に移住したイシワタマリさん。
当初は右も左もわからない状態でしたが、 かつてアートの勉強でスペインのとある田舎を訪れたことを思い出し、 一念発起して福知山市の深部とも言える三岳に暮らすことに。
公民館を中心に「福知山でしかできないアート」で ワークショップやミニ新聞の発行など、 これからの福知山を考えた街づくりをしている。

https://www.facebook.com/yamayama.art/

■今回の訪問地

福知山市北西部の三岳地区は、 山間部特有の深緑と清らかな水に恵まれた のどかな田舎。地区のシンボル三岳山は 昔から修験道の地としても知られてきました。

地域を巡れば今も、 古き良き風景にたくさん出合えます。