さて、せっかくですから、 と藍染め体験をさせてもらうことにしました。

「ハンカチを、と思っていたんですけど、 昨日ささっと縫って、 本上さんにやってほしいな〜と思うものを作ってみたんです」 と吉川さんが出してくれたのはタペストリーでした。

今回挑戦させていただくのは雪花絞り。 「暑い時期に雪の花って涼しげな色でしょ。 そういうのを体験していただけたらと思います」

工程は意外とシンプルです。 「最初に4つに畳みます。そのあと三角に折り畳んでいきます。 すべて折り畳んだら板でギュッと挟んで、万力で押さえて、 水につけて、次に藍につけるんです。 そうしたら板で挟んだ部分は染まらないし、 それ以外が染まるんです。 染まったものを広げたら、雪の花のような模様が出てくるんですよ」

吉川さんのやり方を見ながら、本上も作業開始!結構繊細な作業、指先に神経を集中させます。

ん〜、簡単なようだけど、 畳むときに丁寧にしなきゃいけないような…。 「ただ、一つだけ注意点があります。 木で挟む方向がほんの少し変わるだけで、 模様がずいぶん変わります」 やはり、美しく仕上げるには おさえておくべきポイントがあるんですね!

さっそく生地の折り畳みに入るのですが、 タペストリーに使うのは、かなりハリのある生地。 「これはむかし、蚊帳に使っていた生地なんです。 今は使わないんですけどね。 これを藍で染めるとね、向こう側が透けてキレイなんです。 だから私はこれを好んで使っています」 と吉川さん。

この生地、今は中国で作っているそうです。 「私も頑張ってね、 この辺りに竹林がたくさんありますでしょ、 その竹を伐採して、 全部竹の生地にしたいなぁ、と思っているんです」 染めるだけではなく、そのための生地までMADE IN KYOTOに! 吉川さんの情熱、すごいです。

確かに竹の生地って、タオルとか、本当に気持ちがいいんですよね。 それが京都でできたらいいですねぇ。

「そうなんですよ。 だから京都のブランドにしていきたいなぁと思っていて。 それを京藍で染めて、京都の人の手でバッグなどにできれば、 完全な京都コレクションになりますね。 そうすれば自信をもって売っていけると思うんです」

亀岡の地にはいろいろなダイヤの原石が眠っている。 吉川さんの話を聞きながら、そう感じました。

生地を畳みながら聞く吉川さんの話。 熱意のこもったお話に、生地の折り畳みにも力が入っていきました。

京都というネームバリューだけではなく、 “やってないものを作っていける”というところに 吉川さんは価値を見いだそうとしています。

作業を進めながら、話は続きます。 吉川さんは38年も藍に携わっているそうですが、 そのキッカケはなんだったのでしょう?

「私ははじめに栗山工房という会社に入社して、 3年ほど反物を洗ったりしていたら、 これからはやはり着物の世界じゃない、 工芸など着物以外のものをやろう、と社長に言われ、 藍染めの先生を呼ぶから教わっていろいろやってみろ、 といわれたのが始まりです」

やってみて最初はどう思われました? 「いや〜、ピッタリ来ましたね。 周りがカラフルな染め物をやっているなか、 はじめ色が黄色いのにそれがブルーになる、 こんな染め物っておもしろいなぁ、と」

その後は営業も担当することになり、 半日営業して昼から染め物をやる、という日々が続く吉川さん。 夏なんて汗びっしょりで営業しなければならず、 そんな時は会社にあった、反物を洗うプールに入っていたとか。 社内では「またトドが…」なんて言われていたそうですよ(笑)。 それで20年お世話になって独立したとき、 「アトリエ トド」という名前にしたそうです。

さて、そうこうしている間に、2人とも畳み終えました。 「いよいよ染めましょう」

藍の液体につける前に、万力でしっかり挟みます。 これ、結構力がいるのですが、ここできちんとやっておかないと、 美しい染め上がりにはなりません。

生地にノリがついているため、まずは水につけます。 「次に三角に畳んだタペストリーを、角度をつけて藍につけます」 折り畳んだ生地を万力で挟むんですが、 仕上がりをイメージして、その通りに板で挟むというのは難しいですね。

ちなみに今回は、せっかくなので京藍で染めさせていただきました。 「京藍がねぇ、ずいぶん使ってしまって、 色が少し薄くなってしまっているんですよ」 やはり使っていると薄くなるんですね〜。

「じゃあつけてください。あとは自然に任せるんです。 この京藍がもっともっとできてね、 色がもっともっとよくなれば、皆さんにたくさん使っていただける。 だから責任重大です」

生地をつける前に軽くかき混ぜます。 するとみるみるうちに、泡が藍色になってきました!

先週もちらっと触れましたが、 液体は浅黄色ですが、泡は藍色。
空気に触れると色が変わるんですか?
「そうなんです。みなさんに “なんで黄色から藍になるの?”と言われます」
なんだか実験みたいですね。

しばらく浸して藍から上げて、水で洗う。
「水の中にはたくさん空気があるので、それに触れるように、 汚れを落としながら酸化させていくんです。
そのあとまた水につけます。これを何度か繰り返せば完成です」

液体から上げたら水洗い。この作業を繰り返します。 ホント、実験や工作をしている気分です。

ところで藍染めは、 「生地が天然の繊維であれば、何でも染まります」 と吉川さん。 「先日なんて鰐皮を持ってきた人がいました」

え?染まったんですか?? 「時間はかかりましたけど、染まりましたよ。 天然の素材であれば、何でも染まります」 藍色の世界も夢じゃない!

「そういえばあるとき、 営業から帰ったらそこらじゅうに藍が飛び散っているんです。 なんだろうなあ、と不思議に思っていたら 横を青色のネコが通り過ぎて行きました(笑)」

そう、ネコも染まる(笑)。 藍色になった自分を、ネコはどう思ったのでしょう?

ところで。 「今年の1月から西洞院に杉本家という町家があるんですけど、 そこにワークショップができる場所を仲間達とオープンさせました」 と吉川さん。 「綾 ARTCRAFT」(http://aya-artcraft.jimdo.com/) という場所です。 「9月くらいからワークショップで ハンカチくらいは染められるようにしようと考えています。 いまのところ土日だけのオープンなのですが。 仲間にはいろんな伝統技術を持っている人もいるので、 その力も借りながら、みなさんにいろいろ遊んでもらおう、と」 これもまた、楽しみですね〜。

さぁ、そうこうしていると、完成間近。 水洗いをして広げます。

おそるおそる、染め上がった生地を広げてみました。 うまく染まっています!

「染まっていますね〜」本上にんまり。 「脱水して水気を取って、棒を通せば持って帰っていただけます」 と、吉川さんに棒を通していもらい、 「できた! 家に飾ろ〜っと。宝物にします」 本上、満面の笑み。

見てください、この笑顔(笑)

<ミニコラム> 今週の風景


本上が染めたタペストリーはこんな感じです。 藍が雪の結晶のように生地に色をつけ、まさに花のよう。 京町家にとっても似合いそうです。
次回も<亀岡>の吉川慶一さんにお話を伺います。
藍からもっともっと広がる、吉川さんの夢って、何でしょう?

<ほづあい研究所> 藍染め作家・吉川慶一さん

30年以上藍染めに携わる吉川さん。かつて京都にあった京藍を自分の手で育て、その藍を使った染め物をしたいという夢を叶えるため亀岡に移住。保津川のほとりに長屋を借り、「ほづあい研究所」と命名、保津から藍染めブームを起こしたいと、研究を続けている。

http://ameblo.jp/tawawani/

■今回の訪問地
京都市の西の端・嵐山から山一つ越えたところにある亀岡市。 保津川下りやトロッコ列車が人気の観光地ですが、 「京の奥座敷」として、古くからさまざまな文化が育ってきた地域です。 嵐山から電車で8分、自然豊かで人穏やかなところでした。


【バックナンバー】
#023 大きな風呂に導かれやってきたのは奥座敷
#024 入り口には作品がいっぱい!中では藍染め体験も。
#025 藍染めを体験!・・・の前におさえておくべきこと。
#026 さらなる不思議体験。藍をたべる!?

【9月のプレゼント】
今月のプレゼントは、亀岡の美味しいお醤油・お味噌のセットです。 丹波地域特産の黒豆をふんだんに使用した「丹波の黒豆味噌」。 「竹岡醤油」オリジナル製法の「黒豆醤油」。
そして、お醤油のエスプーマ、減塩調味料としても最適な「京の泡」。 この3点セットを5名の方にプレゼントします。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090


なお、「丹波の黒豆味噌」「黒豆醤油」「京の泡」は、 すべて「道の駅 京丹波 味夢(あじむ)の里」で購入することができます。
※締め切りは9月25日(日)

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