京都府の綾部市へやってきました。 大阪の梅田、そして京都市から共に1時間半ほどの場所なのですが、 今回訪問した黒谷地区は、山と山に挟まれた谷にある、小さな集落です。 そこに紙漉き職人の吉野綾野を訪ねます。

吉野さんは生まれも育ちも綾部市なんですか?

生まれも育ちも愛知県の知多半島という吉野さん。 あることをきっかけに、黒谷へ移住してきたそうです。 移住してからもう、17年。

「初め来たときは、雪は降るし冬場はすごく寒いし、 毎日どんよりとした天気が続くし、 知多半島の温暖な気候とまるで違って、ビックリしました」 という吉野さん、大学時代は大阪の大学で油絵の勉強をしていました。


山深い川沿いの国道を走っていると、 突然左側に集落が見えてきました。そこが黒谷和紙の里。 集落へ続く橋には紙漉きをする女性が描かれ、 渡り終えると、「和紙の里」と書かれた大きな看板もありました。

「2回生の時に下宿近くの民芸品店でたまたま紫色の黒谷和紙の便せんを見て、 すごくステキだなぁ〜と感激したんです。 これが初めての黒谷和紙との出会いでした。 卒業を控えた頃、卒業後のことを考えていた時に、 なぜだかまた、 以前見た黒谷和紙の紫色の便せんが頭に浮かんで、 自分も紙すきができるんじゃないか、 紙すき職人になれるんじゃないか、と思うようになったんです。 それで民芸品店の人に話を聞いて、黒谷和紙を作っている綾部のことを知り、 興味を持って、卒業後にこの里へ」

そのときはもう「自分も職人に」という思いが 固まっていたのでしょうか?

「黒谷に初めて足を踏み入れて、びっくりしたんです。 日本昔話に出てくるようなステキな場所で、 とてもゆったりした時間が流れていて、 この場所に感激しました。 それで組合の理事長に“紙を漉かせてください”と 半ば無理矢理頼み込んで、研修生からスタートしたんです。

勇気ある決断ですね〜

「そうですね〜、今思うと 自分でも思いきったコトしたなぁ、と思います。 油絵とは全然違う世界ですし。 ただ、なにか生み出していくということでは、 絵を描くことも紙を漉くことも同じかな、と思います」

にこやかに本上を迎えてくれた吉野さん。 物静かな佇まい、繊細なイメージの吉野さんは、 どんな和紙を生み出しているのでしょう。

それほど吉野さんを魅了してしまった黒谷和紙、 そもそもどういったものなのでしょう。

「簡単にお話しますと、約800年前、 平家の落ち武者が紙すきを黒谷に伝えたと言われています。 和紙の特徴としてはとっても強いんです。 呉服を保存する畳紙(たとうがみ)とか値札とか、 京都が近いこともあって、京呉服に関連するものが作られてきました。 最近では障子紙やふすま紙、傘紙や提灯紙も手がけています。 紙の強さが求められるので、黒谷の紙の強さが評価されているんですよ」

どうやって強い紙ができるのかということに とても興味が湧きますねぇ…

そんなことを思っていたら、吉野さんから 「ぜひ紙すき場の方へ」と。

もちろんですとも!

狭いところですが… と案内されたのは、黒谷地区の中心部を流れる清流沿いに立つ 「紙すき研修館」。 入り口を入ると、大きな水槽のようなものと 板のようなものがたくさん並んでいます。

「ここが紙すき場なんです。 木でできた“舟”というんですが、 ここに水と、紙のもととなる楮の繊維が入っています」


バケツの中にもほわほわの物体。これが植物から採れた繊維だなんて、わしを考えた人って、発明家のようですね〜

見せていただいた舟の中には、 ぬれた綿のようなものから、 繊維が細く長く飛び出しているのがわかります。 キレイですね〜、なんとも言えない色。

実はこの楮、川のそばにも生えているんですって。 意外とどこでも育つ植物のようで、 線路脇に伸びていたりもするとか。

「楮はもうじき葉が落ちるので、 そうしたら枝を切り取るんです。 それを大きな樽のような入れ物で蒸すと、 外側の茶色の皮がめくれます。 その茶色の皮の内側に白い皮が隠れているんですけど、 それが和紙の原料になります」

刈り取っても次の年にまた生えてくるので、 毎年刈り取って使っているそう。 強い植物なんですね〜。 でも、今見ているふわふわの状態にするまでには、 結構時間がかかりそうですね。

乾燥した楮の繊維を見せてもらいました。ごわごわとした手触り、風合い、なんだか愛おしいんです!
来週も引き続き、<綾部>で黒谷和紙を漉く 吉野綾野さんにお話を伺います。 伝統の黒谷和紙が生み出されている工房って、どんなところなのでしょう? お楽しみに!

<ミニコラム> 今週の風景


ロケの準備をしていた夕暮れ前のこと。 ふと見ると、川へ降りてなにやら作業しているおばあちゃんがいました。 近づいてみると、川の中に枝の束を沈め、石で押さえています。 これ、先ほど吉野さんのお話にもあった楮の小枝なんです。 こうして一晩水につけてから作業すると、 茶色い皮が取れやすいと、おばあちゃんが教えてくれました。 ただし、水温が高い夏場は腐りやすいので、 これをやるのは秋から冬。 先人の知恵が今も生きている地域なんですね。

黒谷和紙職人・吉野綾野さん

愛知県出身で、学生時代に見た黒谷和紙に魅了され、17年前に移住を決意。以後黒谷で紙漉き職人として活動する。日本じゅうで黒谷和紙の商品が展開され、自分のように黒谷和紙の職人を志す人が増えてくるのが夢。


■今回の訪問地

京都府の北西部に位置する綾部市。その山間の黒谷地区では、京都府の無形文化財に指定されている黒谷和紙が、今も職人の手で作り出されています。 黒谷地区は800年ほど前に紙漉きが伝わり、以後、村のほとんどの人が紙に携わる「紙漉きの村」。現在も古来からの製法で、伝統の技術を守り伝えています。

京都トピックス
【黒谷和紙ともみじ祭 】
黒谷和紙で有名な綾部市黒谷町で、紅葉を楽しみながら、黒谷和紙の文化に触れてみませんか?紙漉き実演や屋台の出展も。
【開催日時 】
11月13日(日)午前10時〜午後3時
【開催場所 】
黒谷和紙会館周辺(綾部市)
【お問い合わせ先 】
黒谷和紙協同組合
0773―44―0213
(月〜金9:00〜16:30)

【バックナンバー】
#032 一枚の便箋に導かれ縁もゆかりもない集落へ。
#033 植物が和紙の原料に変化していく場所へ
#034 いよいよ体験!伝統の黒谷和紙
#035 紙漉き職人として、黒谷の住人として。

【11月のプレゼント】

今月は、「黒谷和紙の紅型染め お札入れ」藍色・赤色を各1名にプレゼント。

丈夫で長持ちするこちらのお札入れは、 黒谷和紙協同組合か、黒谷和紙 工芸の里でお買い求めいただけます。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090



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