さて、吉野さんに促されて作業場に来ました。
なんだかおもしろい造りの建物です。

楮から繊維を散り出すための作業場は「紙すき研修館」の奥。 見慣れない道具がたくさんあります。 川から水路で水が引き込まれ、水路には小魚の姿も!

「ここは昔から使われている作業場になります」 と吉野さん。
どこを見ても初めて目にするものばかり!
紙を漉くためのすべてがこの建物の中でできるということは、 すべてに意味がある、ということなんですね。
大きい釜があったり、大きなお風呂のようなものもありますが…

最初に案内された部屋で目にとまったのは大きな釜。

「この釜は楮を煮る釜ですね。 沸騰させて、ソーダ灰というアルカリ性の粉を入れて、 1時間半から2時間ほど、 焦げ付かないように棒でかき混ぜながら煮ます。 昔は薪でしたが、いまはガスでやっています」

なんとも風格のある、立派な釜。


昔からここで、地区の紙漉き職人さんたちが 代々楮を煮てきたんですね。 そう思うと、感慨深いものがありました。

ここで楮の黒皮を取って、きれいな白皮を使うそうですが、 その白皮、なんだかカンピョウのような感じ。

「煮たあとに、コンクリートでできた四角いところに、 川からひいた水をためて、炊いた楮を入れて、 4回ほど水洗いをしてあく抜きをするんです」

あくというのは和紙にとって不要なんでしょうか?

「多少は必要なんですけど、最初炊いたあとは、 茶色い色がでるんですね。それを洗い流します。
あと、ゴミ取りですね。小さな皮とか堅い部分とか。
ここに椅子を持ってきて座って、手作業で取っていきます。
体勢が苦しいので腰が痛くなる作業なんですけど(笑) でもここで手を抜いたらゴミだらけの紙になるので、 キレイな紙を作るためには必要なんです」

やはり、一つひとつに意味のある作業。
でも、冬はとっても冷たそう!

茶色い皮をはいで取った楮の白皮。ホント、カンピョウみたい(笑)

次に案内されたのは、紙たたきの場所。
隣の、その先の部屋にやってきましたけど、 不思議なものがたくさん並んでいます。
大きな臼のほうなものが!

「これは打解機というものです。
ゴミ取りした楮を4等分して入れて、 スイッチを入れると上下にダンダンとついて、 少しずつ回転しながら、 まんべんなく楮の繊維をほぐして柔らかくしていきます。
今は電気で動いていますが、 昔は水車の水力で回して動かしていました。
黒谷では“どつき”とも呼んでいる工程です」

昔からこの“どつき”の音が、集落に響いていたとか。ドッコン、ドッコン、と心地いい響きなんでしょうね〜 昔からこの“どつき”の音が、集落に響いていたとか。ドッコン、ドッコン、と心地いい響きなんでしょうね〜

後に案内していただいたのは、ビーターという機会。

「ビーターは、中に歯車が隠れていて、 水を流し入れ、繊維を入れてスイッチを入れると ぐるぐる回転して、歯車もぐるぐる回って、 20分くらい回すと、歯車の中を通ることによって、 さらに繊維が細かくなるんです」

ものすごいいろんな行程を経て、 紙素(しそ。かみのもと)になっていくんですね。 しかも機械化がほとんどされていないというか、 昔から変わらない方法で、 ところどころ動力が入ってやっているんですね。
実はここ、共同の作業場なのだとか。

「昔は各家庭に紙漉き場を持っていました。 私たちのように外から来た職人は 紙漉き場を持っていないので、 こういう場所を使っているんですよ」

一つひとつの工程、連綿と続いてきたであろう 歴史を思い、感慨にふけっていると「 今日は本上さんにも、紙漉きを 体験していただこうかと思っています」 と吉野さん。

かなりドキドキしますが、楽しみですね〜。

来週も引き続き、<綾部>で黒谷和紙を漉く 吉野綾野さんにお話を伺います。 いよいよ本上の紙漉き初体験、さて、うまくいくのでしょうか… お楽しみに!

<ミニコラム> 今週の風景


共同の作業場でお話を聞いていると、いつの間にか すっかり日が落ちていました。 作業場にともる灯り、まるで日本昔話のよう! ここには歴史が今も息づいているんだ、そう実感しました。

黒谷和紙職人・吉野綾野さん

愛知県出身で、学生時代に見た黒谷和紙に魅了され、17年前に移住を決意。以後黒谷で紙漉き職人として活動する。日本じゅうで黒谷和紙の商品が展開され、自分のように黒谷和紙の職人を志す人が増えてくるのが夢。


■今回の訪問地

京都府の北西部に位置する綾部市。その山間の黒谷地区では、京都府の無形文化財に指定されている黒谷和紙が、今も職人の手で作り出されています。 黒谷地区は800年ほど前に紙漉きが伝わり、以後、村のほとんどの人が紙に携わる「紙漉きの村」。現在も古来からの製法で、伝統の技術を守り伝えています。

京都トピックス
【出雲大神宮紅葉ライトアップ 】
縁結びにご利益があり、イチョウの名所でもある御神体山の紅葉が幻想的にライトアップされます。
【開催日時 】
11月18日(金)〜21日(月)の
午後5時〜午後8時
【開催場所 】
出雲大神宮(亀岡市)
JR嵯峨野線「亀岡」駅から、バスで「出雲神社前」下車すぐ
【お問い合わせ先 】
出雲大神宮
0771-24-7799

【バックナンバー】
#032 一枚の便箋に導かれ縁もゆかりもない集落へ。
#033 植物が和紙の原料に変化していく場所へ
#034 いよいよ体験!伝統の黒谷和紙
#035 紙漉き職人として、黒谷の住人として。

【11月のプレゼント】

今月は、「黒谷和紙の紅型染め お札入れ」藍色・赤色を各1名にプレゼント。

丈夫で長持ちするこちらのお札入れは、 黒谷和紙協同組合か、黒谷和紙 工芸の里でお買い求めいただけます。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090



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