「ではさっそく本上さんに、 はがき漉きの体験をしていただこうと思います」 と吉野さん。

取材前に吉野さんは便せんを漉いていたそうで、 その道具を見せてくれました。 使うのは木枠の桁(ケタ)と、枠で挟む賽(す)。


ちょっと漉いてみましょうか、と吉野さんがまず実演してくれました。 「便せんなのですぐなんですよ」と言うので見ていると、ホントあっという間! うすーく紙ができています。

これを積んでいき、横には漉いたものが積み重なって、 1cmくらいの厚さになっていました。

「じゃあ、やってみましょうか。
はがきは小さな桁と賽を使うので、できますよ」 そういって、いきなり本上チャレンジ!

はがきの場合、桁は8枚取りのものを使います。
体験前にできたはがきを見せてもらったのですが、 キレ〜イ。なんとも言えない手触りで、 結構厚みもあるんですね。

俄然やる気が出てきました!


吉野さんが漉いたはがきを見せてもらう本上。 和の独特の風合いは、やっぱり素晴らしいですね〜

さぁ、いよいよ体験してみます。

まず賽を桁に挟み込んで、枠を止めます。
それができたら、舟へ枠を入れます。

「まず化粧水といって、表面に薄く膜を張ります。
入れるときはまっすぐ、少なめに汲んで、 前にポイッと捨てます。これを2回」

吉野さんに横へ付いてもらいながら、 見よう見まねで本上もトライ。
指先まで緊張していますが…

「化粧水をしたら、 桁を縦にして入れて、たっぷり汲みます。
なるべく中の水をこぼさないように、縦に揺する。
中の水がなくなる前に止めて、水を下がらせます」

下から水がいっぱい落ちていますね〜


とにかく緊張しながら、チャレンジする本上。 一通り終えて、舟から上げるところまでできました。 水が落ちて、楮の繊維だけが残っていきます。 ところですでにかなり水が冷たいのですが、 冬に向かっていくにつれて、さらに冷たくなっていきます。 だから吉野さんは、真冬はストーブの上にヤカンを置き、 たまにその湯気で指先を温めながら作業するそうです。

はがきなので、この作業を2、3回やって、 厚みができたので、横の台へ移動します

なんだかきれいな色水が並んでいますが、 これはなんですか?

「これは紙素に染料で色を付けているんですけど、 それを水でといたものです」

確かに水が全部色づいているわけではなく、 紙素に色が付いているんですね。


先ほど漉いたものの上から、自分の好きなところに、 なるべく低いところから色を入れていきます。 そうしないと紙に穴が空いてしまうのだとか。 色を濃くしようと思ったら、何度か色を付けていきます。 本上は3種類の色をつくりました。

なんかとろみがついているような液なのですが、 これはトロロアオイという植物の粘液が入っているそうです。
「オクラ科の植物なんですけど、 その根っこを叩いてつぶして水に溶いてあげると、 ねばねばとした液ができるんです。
紙を漉く液にもこれが入っています」

ん〜、ここにも先人の知恵が。
紙漉きの水にもこれを入れるということは、接着剤の役割ですか?

「水落ちを遅くするためですね。 水がゆっくりゆっくり落ちていくので、まんべんなく繊維が広がるんです。 これがなくて水と楮の繊維だけだと、まだらになってしまいます」

大事な役割なんですね〜。

ところで吉野さんは、2年の研修を経て独立。
現在は黒谷の組合に来る注文をもらって、漉いて納品しています。
独立に際して、ここで卒業ですよ、 という試験のようなものはあるのでしょうか?

「先輩達の厳しい目もありますね。
こんな紙漉いてたらあかんやろとか、 こんな厚さの揃っていないのはあかんやろとか、 厳しく言われることもありますが、一番はお客様から届く声ですね。
たまに声をいただくことがあるので、それを頼りに。
それに自分でも気付くことがあるので、 次こそはもっといい紙を漉こうと思うんです。
根気よく作業して、紙漉きも集中して、 乾燥も丁寧に早く、手を抜かずに、 と職人の技術力をちょっとずつ高めていけたらと思っています」

作業も中盤、水が下がってきたので、 桁をそ〜っと開けていきます。
奥が分厚くて真ん中が薄くなっています!

漉いた紙を外す前に、筒を賽の上で軽く転がして、水を落とします。 賽を外した紙は、なんだかお豆腐みたい。 これで紙漉きは終了。 布を引いた台に移して、 一晩おいたあとにジャッキでぎゅ〜っと押して絞り、乾燥させれば完成。 水分が抜けて、色もはっきりしてきていますが、 天日で干したら、もっと色がはっきりしてくるそうです。

紙漉き体験のあと、最後の乾燥を行う 乾燥室ものぞかせてもらいました。
室内には大きな金属の板があります。

「鉄板乾燥機と言って、昔は天日干ししていましたが、 室内での鉄板乾燥機が入ってきたことで、 雨や雪の日でも、天気に関係なく乾燥できるようになったんです。
板の内側に水が張ってあって、 それをバーナーで温めて鉄板を温めるんです」


水を絞った状態の紙を鉄板乾燥機に一枚ずつ貼り、 馬の毛で作った刷毛で伸ばす。そうするとしわがなく貼れます。 いくつかくっついている紙があるので、はがせてもらいました。 気持ちがいい! できたてほやほやの紙ですね〜。

初めての紙漉きを体験して感じたのは、 黒谷和紙が本当に丁寧に作られているものだということ。

お店で買い求めたときも、すごく手触りもいいし、 見ていて心が和み、優しい気持ちになって、 大事に扱わなきゃ、と思いますね。

黒谷和紙って、ここだけの独特の性格をまとっている気がしていたのですが、 こんな風に心を込めて時間を掛けて作っているところを見せていただいて、 だからそんな気持ちになっていたんだ、と納得できました。

来週も引き続き、<綾部>で黒谷和紙を漉く 吉野綾野さんにお話を伺います。 吉野さんが感じている黒谷の魅力、そして黒谷和紙のこれから。 お楽しみに!

<ミニコラム> 今週の風景


乾燥室での話の中で、「天日干しの小屋が、山の斜面にあるんです」 と吉野さんが教えてくれました。 小屋の中に板があって、そこは割と時間が長く日が当たるので、 板に貼って天日干しするそうです。 確かに山の斜面にぽつんと、小さな小屋が立っていました。

黒谷和紙職人・吉野綾野さん

愛知県出身で、学生時代に見た黒谷和紙に魅了され、17年前に移住を決意。以後黒谷で紙漉き職人として活動する。日本じゅうで黒谷和紙の商品が展開され、自分のように黒谷和紙の職人を志す人が増えてくるのが夢。


■今回の訪問地

京都府の北西部に位置する綾部市。その山間の黒谷地区では、京都府の無形文化財に指定されている黒谷和紙が、今も職人の手で作り出されています。 黒谷地区は800年ほど前に紙漉きが伝わり、以後、村のほとんどの人が紙に携わる「紙漉きの村」。現在も古来からの製法で、伝統の技術を守り伝えています。

京都トピックス
【千歳はでっかい宝船「丹波七福神フェスティバル」】
丹波七福神の3つのお寺と、丹波国分寺跡・愛宕神社をめぐる七福神ウォーク、ステージ、屋台、地元農産品販売など内容盛りだくさんのイベントです。
【開催日時 】
11月27日(日)午前10時〜午後3時
※七福神ウォーク受付は午前9時30分から受付。
(所要時間90分・先着500人に福賞進呈)
【開催場所 】
七谷川野外活動センター(亀岡市)
【お問い合わせ先 】
千歳町自治会
0771-22-0682

【バックナンバー】
#032 一枚の便箋に導かれ縁もゆかりもない集落へ。
#033 植物が和紙の原料に変化していく場所へ
#034 いよいよ体験!伝統の黒谷和紙
#035 紙漉き職人として、黒谷の住人として。

【11月のプレゼント】

今月は、「黒谷和紙の紅型染め お札入れ」藍色・赤色を各1名にプレゼント。

丈夫で長持ちするこちらのお札入れは、 黒谷和紙協同組合か、黒谷和紙 工芸の里でお買い求めいただけます。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090




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