飯尾さんに促されて蔵の中へお邪魔しました。 入ってすぐ右手に、お店があります。 実は本上、富士酢のファン。目の前にいろんな商品が並び、 心躍ります。

「うちの唯一のお店ですね。 ここにしか置いていないものもあるんですよ」

「これはうちの蔵にしかないんですが、 ラッキョウを漬けるもの、ピクルスを漬ける専用のお酢を 夏場だけ大きなもので販売したりもしています。 あとこちらは、富士酢プレミアムといいます。 一般のスーパーなどで販売されている 量産型の香りになれてらっしゃる方は、 こちらの昔ながらの作り方をしたお酢の香りに 違和感を感じる人もいるんです。 それが父にとってもすごく大きな悩みで。 それを解決するために私は東京の大学や大学院で研究していたのですが、 最終的にできたのが、富士酢プレミアムです」

伝統のものだからといって、 そのままでいいというわけではないんですね〜。

ほかにも手巻き寿司酢という手巻き寿司専用のお酢を 見せていただきました。 「色が少し濃くて、コレは1本作るのに15年もかかるんです。 普通は寿司酢って、お砂糖もたっぷり入れるんですけど、 このお酢は砂糖をまったく使っていないんです。 お酢とお塩を少し入れるだけ。 江戸前のお寿司なんかはこんなシャリを作られますが、 そのお味をご家庭で召し上がっていただけるように作ったものです」


大好きな富士酢のいろんなお話。本上も見たことのない商品を目の前に、 興味深い話が続きます。

「富士酢プレミアムがベースなんですけど、 赤酢を2割くらい混ぜているんですね。 赤酢っていうのは酒粕を原料に作るもので、 一般的には2〜3年かけて作るものなんですが、 うちの場合は15年かけて作るから、こんなに色が濃いんです。 その分旨味がしっかりあって、まろやかで、 砂糖みたいな甘味でごまかす必要がないんですね」

じゃあギュッと凝縮された旨味がココには入っているんですね!

「一般のお酢に比べると、旨味が100倍くらいあるので、 言うとお出汁みたいなお酢ですね」

お店から奥へと進むと、いよいよ蔵の中心部。 もともと自宅だったところに改装を重ね、蔵になったそうです。 大きな樽がたくさん並んでいます。

飯尾醸造ではお酢に使うお米も自分たちで育て、 そのお米からお酢を醸造するためのお酒をつくり、 そしてお酢をつくっています。

契約農家の皆さんと米づくりをする田んぼは、 蔵から車で50分ほど行ったところ。

「3代目の祖父が昭和39年に無農薬に切り替えたんです。 前回の東京オリンピックの時ですので、 高度成長期で物事の効率のよさなどが求められるときに、 あえて逆行して手間のかかる無農薬に舵をきったんです。 そこから50年以上無農薬を続けています」

「昭和39年に始めた時には すべて契約農家さんにお願いしていたんですが、 50年もお願いしていると高齢化が進んで、 農家の後継者というのが難しくなっていて。 今から15年前に、ウチの父が 自分たちの蔵元でも米作りをやろうということで、 一部の棚田を借りて自分たちでもお米をつくり始めました。 一般的には酒屋さんでもお酢屋さんでも、 基本的には全国いろんなところからお米を仕入れるんですが、 飯尾醸造ではこの地元丹後で 農薬を使わずに栽培された新米を使うというしばりをかけているので、 その分、量産することはできないんですが…」

りんごからシードルというお酒をつくり、それがりんご酢になるように、 日本ではお米から日本酒、日本酒から米のお酢に なるというのが本来の作り方。 しかしこれを今でもやっているところはほとんどないそうです。

それにしても、お酒をつくるというのは 酒米からつくるということだと思うのですが、 酒米もつくっているんです?

「ウチは2割が酒米で、あとはコシヒカリです。 酒米100%で作っても、旨味の少ないお酢になってしまうので、 麹を作るために酒米。 蒸してタンクに放り込んでお酒を作るのはコシヒカリです」

お米は農薬を使わないかわりに、 真っ黒の再生紙シートを敷いて育てます。 資材も飯尾醸造が契約農家さんに提供するなど、 一緒になって、お酢のために動いている。 品質を守るために徹底する、すごい企業努力です。

「手で麹をつくったらおいしいのかというと、 それは違うかもしれませんが、 麹を手でつくるということ自体が伝統製法だと思っているので、 いくら大変であっても 手で麹をつくるというのは守っていきたいと思います」

お酢づくりのために不可欠なお米づくりについて、 飯尾醸造さんの取り組みをしっかり教えていただきました。 お米へのこだわり、契約農家産との取り組みなど、 発酵だけで100〜200日かかってしまう飯尾醸造のお酢づくりのために、 本当にいろんなこだわりを持ち、実行しています。

飯「コンプレッサーで空気を送り込みと、タンク全体で発酵できるので1〜2日で発酵できるんですが、飯尾醸酢の場合はただただ静かに置いておくだけなので、お酢を作る菌の力に任せてというやり方です」 本「空気を送りこまれて発酵が促されるということは、平地発酵であれば触れているところが表面だけ?

お酢づくりの話を聞いたところで、 味の違いをテイスティングさせていただくことに。

「まずはスーパーのお酢を味見してください。 その次は富士酢を」

明らかに香りが違います。 富士酢はふんわりと香りがあって、 最初に酸味がツンと来るものの、 ゆっくり穏やかに広がっていく感じでした。

さらに富士酢プレミアムを試飲してみると、これまた全然違う! さらにまろやかで、お酢が苦手な人でも使えそうな、 旨味が多い感じがよくわかりました。

さらに15年かけて作っている赤酢プレミアム、紅芋酢と試飲。 お酢っておもしろい!

本当にお酢ごとに香りも味も、まるで違うんですね。 それがさまざまな料理の味も決めていく。

テイスティングは樽が並ぶ蔵の中で 行ったのですが、この樽の中でも発酵中ってことですよね? でも、放っておけばいいというものではないような…

「2週間に1回、酸の上がり具合とか温度をチェックしています。 今発酵をはじめて110日くらいですね。 7月中には発酵が終わります。 発酵が終わるとあとは熟成で、250〜300日、 今度は別のところで寝かします」

ということは、お酢が出来上がるまで すごい日数がかかっているということなんですね〜

「米をつくるのに半年、精米して、お酒を造るのに1ヶ月半、 すべてひっくるめると2年ですね。 一般的なお酢がだいたい1週間くらいで出来上がります。 こういう田舎だからこそ、昔ながらのつくり方を することができるんですね。 あ、この発酵している蒸気が肌にいいらしいですよ」

存分に浴びて帰ろう(笑)

お酢が発酵中の樽を、特別にのぞかせていただきました。 表面にはうっすらと大きな膜が張っていて、 木の蓋と樽の間から温かい空気が出てきました。 ちなみにお酢を作る菌は強く、納豆菌やコレラ菌、赤痢菌に お酢を付けて10分くらい置くと全部死んでしまうそう。

紅芋のお酢、青森の「奇跡のリンゴ」を使ったリンゴのお酢なども、 この蔵ではつくられています。
飯尾さんの探究心も、なかなかのものですね〜。 こんなにお酢を比べてみる機会はなかったので、 その豊かさに驚きました。

すると飯尾さん、
「じゃあ、ここからは私の違った一面をお見せしたいので、 場所を変えましょう」
ん? どういうことでしょう??

次週も引き続き、宮津市でお酢を製造している 飯尾醸造の五代目・飯尾章浩さんに話を伺います。
飯尾さんのもう一つの顔って…。お楽しみに!

<ミニコラム> 今週の風景



蔵の入口に、とてもステキな暖簾がありました。 「これは藤折と言われまして、藤の花から繊維をとっているんですね。これ全国でまともにやっているのは、宮津市のごく一部の地域のみで、棚田のある地域で作っているんですよ」と飯尾さん。 繊維にはりと艶があって、とてもキレイな織物。実は作る人があまりいなくなってしまい、買おうと思ってもなかなか買えないそうです。

株式会社飯尾醸造五代目当主・飯尾章浩さん

明治26年創業、原料となる無農薬の米作りに始まり“酢もともろみ”も自社で行うなど、徹底したこだわりで、代名詞の「富士酢」をはじめ、さまざまなお酢を製造している。

■株式会社飯尾醸造
http://www.iio-jozo.co.jp/


■今回の訪問地

穏やかな若狭湾に面した宮津市は、日本三景のひとつ・天橋立のある静かな町。食材の宝庫としても知られ、魚介をはじめ多彩な食材を京都屋全国へ発信している。

京都トピックス
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【バックナンバー】
#069 地元・宮津の街をおいしい街へ
#068 お酢屋が直伝!おいしい手巻きとは?
#067 昔ながらの蔵の中で本上、お酢を学ぶ
#066 こだわりの酢を醸す老舗の蔵元へ

【7月のプレゼント】

今月は、今回本上さんが訪れた、宮津市にある「飯尾醸造」さんの「富士酢3本セット」をプレゼントします!

10年以上かけて造られる、どんなネタとも相性抜群の「手巻き寿司酢」。
京都・丹後で栽培した米を使用した、ふくよかな味わいの「富士酢プレミアム」。
生野菜をそのまま漬けるだけでおいしいピクルスができる、「ピクル酢」。
どれもこだわりがつまった、素敵なお酢です。

締め切りは、8月6日(日曜日)までとなっています。是非ご応募ください!

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090