だいだい色の夕焼けみたいな暖簾をくぐって、お店にお邪魔しました。 これは秋冬用の暖簾。暖かな色ですね〜。 入口にはお祭りのお知らせだったり、いろんなお店のパンフレットなんかも並べられています。そしてその横に「ぽちぽちそばボーロ」?

「中学3年になる一人息子がいるんですけど、小学校の時によくいろんな妖怪とかキャラクターが見えていたみたいで、それを親が勝手にうまいこと使わせてもらっていて」

説明カードには確かに妖怪のような姿が。この子がぽちぽちっていうんですか?

「ぽちぽちの精、妖精ですね」

ぽちぽちの精! なんか木に腰掛けていて、モコモコとしていて、ちょっと牙みたいなのも見えているんですけど、全然怖くなくて、お人好しな感じの妖精なんですね。
そして、安喰味噌?

「はい、僕らは農業もしているんです。お店は週3日の営業で、残りの日はお米とか大豆、蕎麦とか少しずつ栽培しています。お米で麹を作って、大豆も自分たちで作っているんですよ。完全オリジナル、農業の延長線上というか」

そう言って、仕込んで2年経つお味噌を見せてくれた安喰さん。

そのまま進み、客間へ。なんだか友達の家にお邪魔するような感じです。 するとそこには、いろんな絵が描かれていました。襖絵も含めて、息子さんがすべて描いてくれたそう。すごいですね! 和紙に筆でいろんな絵が描かれているのですが、妖怪のような妖精のような、なんと名前も付いています(笑)。
息子さんは小さい頃から絵を描くのがお好きなんですか?


見てください、この画力! コレを見せていただくだけでも、価値がありますね。

「そうですね、石を拾って来てアクリル絵の具で書き始めたのが小学校低学年くらいで、ひとつひとつ名前が付いていて面白いんですよ。この辺で手作り市っていうのをやっていて、そこの子供の手作りコーナーで販売したこともありました(笑)」

購入してくれた人は、玄関先に泥棒避けで置いているそうです。
岩石男、四つ目デカ…。ちょっと怖いんだけどちょっとユーモラスで、なんともかわいらしい生き物? がいろいろ。


さて、息子さんの作品に囲まれた客間で、安喰さんご夫婦にお話しを聞きましょう。
綾部に移住して来られたということですけどご縁のきっかけというのは?

「だいぶ前になってしまうんですけど、そもそも綾部のことは知らなかったんです。綾部に来る前にそば打ちは身に付けていたんですけど。
そば打ちは25歳くらいの頃に、ちょっと都会での仕事もリセットしようと思ってかばん1つ持って福井に飛び出して行ったことがきっかけです。
越前蕎麦も全然知らずに向かって、初めてそこでおろし蕎麦を食べて、え、これ蕎麦なん!? って感じで、人に聞いて、いろんな店に食べに行きました。それが全部アタリだったのですが、そのなかでも1店、僕より1つ年上の若い夫婦がやっているお店があって、魅力をすごく感じて、何度も行っているうちに人生相談なんかも親身に聞いてくれていたんですけど、ひょんなことから大晦日にお手伝いすることになったんです。
そのときに、お客さんがみんな幸せそうに挨拶して帰って行くのを見たんです。こんないい仕事って世の中にあるんやなぁと思いました。
僕の中で“食べ物ってなんだろう、日本だったらお米かな”という意識はあったのですが、でも農業できないし、手に職というので農業も見つめてはいたのですけど、すごく程遠いというか先の世界だと思っていたんです。そんなときに蕎麦屋さんに出会って、赤ちゃんが生まれるタイミングで、『修行させてください』と大将に手紙を書いたんです。それを受け取ってくれて、いついつから来てくれ、と返事が来ました。そこから5年間蕎麦屋にいました。それがきっかけで、お蕎麦の世界も見て、お客さんとの繋がりもあって農業のことも福井で少し勉強することができました。
そこから綾部に来るまでにはいろいろあったんですけど、あるとき蕎麦の仕事で大阪で暮らすことになって。そのとき、綾部に暮らしている人が書いた一冊の本が本棚にあったんですよ。それを読み、綾部に惹かれました」

その本とは、塩見直紀さんが書かれた「半農半X」。

「すごく共感をしていたんです。半分は農業、半分は自分の転職(X)という考え方に。そして、それを生き方の柱にされている方達がたくさんいる、綾部には特にその理由で移住している人が多いというのもわかりました。結婚して子供が2歳半くらいのときに大阪に連れて行ったのですが、小学校に行くタイミングなどを考えたときに、もう1度どこかに移住したいと思い、迷わず綾部に来ました」

ご主人の大きな決断に奥さんの由美子さんは、「子供と一緒に綾部を訪れたときに自然に触れ、子供がとても気に入っていました。旦那も行こうって言うし、じゃあ行こうかな、と思って」とさらり。
それまで大阪で暮らしていた由美子さんですが、綾部への移住に際して
「意外と不安はなくて、来ればなんとかなるかなって感じで大丈夫でした」



綾部へ移住するまでの安喰さんご家族の話は、かなり壮大な物語でした〜。

そして綾部市へめでたく移住した安喰さんご家族。「半農半X」のような暮らしへのチャレンジが始まります。

「ただ、知り合いが1家族くらいしかいなかったんで、僕の中では『ここは住んでみないとわからないな』という思いがありました。何回か来てみたけどどうも寂れているし、寂しさを感じたのにこんなに移住してる人がいるってどういうことかな、と思って、人と出会うにも住まないと始まらないので、すぐ家を探して住みました。
そのうちに、この集落には光っている人が多いというか、地元の人が頑張っているというか、そんなことを感じたんです。ちょうど小学校が、『新1年生が一人足りない』と探していて、『うち新1年生ですけど』と伝えると、いろんな人が家を紹介してくれたんです。そのときは綾部で15年間営業しているお蕎麦屋さんでアルバイトをしていたんですけど、その方が『親戚で家持っているやつがいたなあ』って言ってその場で電話してくださって、その場で替わって話をして、今住んでいる家が決まったって感じですね」

いろんなことがめまぐるしく起こって、綾部の暮らしが始まっていったんですね〜。

さて、綾部での生活が始まり、蕎麦を打ち始めた安喰さん。
現在のスタイルは、半分農家、半分蕎麦屋、という形なのでしょうか?

「時間の使い方はそうなんですけど、ただ、お蕎麦の仕事の方が圧倒的に多くて、その背景に農業もあるというか、農業もやっている人がそば打ち職人やっているっていう位置づけでやっていった方がいいな、と思ったんです。そうじゃないと、この奥まった場所では、見せるものが弱くなってしまうので。生産者でもあり職人でもあるという両方の位置付けで表現したいと思っています」

どんなお蕎麦なのでしょう、気になりますね〜。

「普段はここで土、日、月と営業しているんですけど、そば打ちを習いたいという方もおられて、里山ねっと・あやべさんっていうところが鍛治屋町にあるのですが、そちらで第2水曜日にそば打ちを指導しているんですよ。綾部の方だけでなく京都市内や、もっと遠くから来られる方もいますね〜。今日は本上さんせっかくいらっしゃっているので、どうですか? そば打ち一緒にやってみませんか?」



来週も引き続き、綾部市で「そば処 あじき堂」を営む安喰健一さんにお話しをうかがいます。さてさて、本上の蕎麦打ち体験、どうなるのでしょう…。お楽しみに!




<ミニコラム> 今週の風景



お話の中でも出てきた「あじき味噌」。農業もやっている人が蕎麦もやっている、と安喰さんがいう今の生活スタイル、そして半農半Xの形が、ここに表れていますよね。 このお味噌を使って、いろんな料理をしてみたいものです。

安喰(あじき)健一さん

神戸生まれ、幼い頃から畑で土に触れ、千葉、東京、福井、大阪など全国各地での暮らしを経て、2008年に綾部市に移住。福井時代に蕎麦を覚え、移住してからはケータリングやマルシェ出店を続けていたが、2015年に「そば処 あじき堂」をオープンさせる。土、日、月曜の3日間営業し、それ以外は米づくりをはじめ農業に勤しむ。

■そば処 あじき堂
https://ajikido.jimdo.com/


■今回の訪問地

京都府北西部に位置する綾部市。そのさらに北西部にある志賀郷は、山と田園に囲まれた自然豊かな場所。古くからの伝承が今も生きる静かな街では、米や味噌づくりが盛ん。

京都トピックス
京都丹波キッズスポーツふれあい広場
子どもたちがスポーツに触れるきっかけ作りを目的としたイベントが 11月18日・土曜日の午前10時から午後3時まで京丹波町の京都トレーニングセンターで開催されます。

楽しみながら親子で一緒に身体を動かせる「親子で遊ぼ」のコーナーのほか、誰もが楽しめるシュートゲームコーナー小さいお子さまでも楽しめるエアー遊具の「ふわふわカイジュウ」コーナーなど、内容盛りだくさんです。

是非、ご家族みんなでスポーツの楽しさに触れる一日を過ごしにお越しください。
詳しくは、京都府南丹広域振興局(0771-24-8430)にお問合せください。


【バックナンバー】
#088 辿り着いた綾部市で手打ち蕎麦屋を開く。
#089 妖怪?妖精?不思議な絵がたくさん!
#090 自家製粉のそば粉でそば打ち体験!
#091 人が集まり、いろんなことが起こる。綾部はこれからがおもしろい。

【12月のプレゼント】

今月は、本上さんが訪れた綾部の梅を使った梅酒、「綾梅」をプレゼントします。

綾部産の梅を100%使用し、綾部の清酒「綾小町」だけで漬け込んだ逸品です。 日本酒独特のやわらかな甘みと、さわやかな香りをお楽しみください。

720mlの「綾梅」を5人の方にプレゼントです。

【応募先】
●おハガキの方は、
 〒530-8304
 MBSラジオ「本上まなみ もうひとつの京都」の係まで。
●メールアドレスは、manami@mbs1179.com
●FAX番号は、06-6809-9090


※応募締切は12月31日・日曜日までです。是非ご応募ください!

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