ひさしぶりのキャンプ、の巻。
 子どもから伝染される風邪って、どうしてこんなにも強力なのだ……うう……。
 風邪で寝込むのは久しぶり。何もできず、ただ床につっ伏しているしかないという最悪状態です。頭は漬物石を乗せられて、こめかみは万力で締め上げられているよう。首、肩、腰もみしみし、じんじんと痛い。さらに、鼻はもちろん、耳や喉までお団子を間違えて飲み込んじゃったみたいに詰まって苦しい。おまけに目も開きにくいのです。まつ毛ががびがびしてくっついて、無理に見開こうとすると千切れそうで怖い。蒸しタオルを当てても、お湯で顔を洗っても、なかなかきれいになりません。どうなったんだオレ。なんだこの極悪ウイルス。
 ウイルス発信元の息子はというと、おとといから高熱と目やに、鼻水が出ているものの行動はいつもと変わらず、大好きな家電、掃除機のノズル部分を引きずって部屋をうろうろ、手提げの紙袋に積み木と絵本、おむつやタオルを入れたり出したり、飽きると台所から取ってきた鍋つかみを手にはめてシオマネキのように闊歩。眼鏡、携帯電話やエアコンのリモコンといった「いいやつ」をくすねようと、私の倒れている布団の周りを回遊しています。母さんがいつもと違う様子で真っ昼間から寝ているので、顔を覗き込んできたりもするのですが、基本マイペースに遊んでいる。君その高熱でよく平気で活動していられるねえ、ちょっと一緒に寝たらいいのに……というか、おとなしく寝てくれい。
 娘も今日は学校を早退、赤い顔で横になっている。げほげほと不気味な咳までし出しました。何時もは超のつくおしゃべりなのに、完全に無口になった。まずい展開だなあ。普段一年のうち一日か二日しか発熱しない丈夫な娘です。私自身の症状からしてもこの風邪はあまりにもたちが悪そう。このまま自宅安静のみでは厳しいかもと、ない気力を振り絞って病院に行くことにしました。

「はいふうたろうさん(仮称、娘7歳)、あーっ、と言ってみて」あー。パチリ。あっモニターに喉の写真が出た!
「ほら、見て下さい。喉の奥がぶつぶつして赤くなっていますね」
「弟くんも、同じ。喉が赤くてぶつぶつですね」ホントだ。
 京都暮らしの先輩に紹介されたその小児科クリニックは、穏やかで優しいお医者さんと看護師さんがじっくりと診察、手当の仕方を教えてくれる病院でした。これまであまりに健康すぎて病院に縁がなく、京都に暮らしはじめてから一年経ってもかかりつけのお医者さんを決められなかったのですが、ああ、ここは良いなあと、熱でぼわーっとした頭で思う。
 息子はまだ鼻をかめないので「電動の鼻吸い機が便利ですよ」と娘と私、ふたりで協力してできるように手取り足取り教えてくれました。
「ああ、お姉ちゃん上手い上手い」「そうそんな感じで」「お母さん、上手にできましたね」とお医者さんがとにかくホメてくれるのです。私も娘もしんどくてぼーっとしつつも、お医者さんに励まされて、言われるまま息子の鼻水を吸引ホースで取る。
 生理食塩水を鼻にたらして、それから吸引するので息子は嫌がって泣いて大暴れですが、身体をバスタオルでぐるぐる巻きにすること。仰向けにして、顔が動かないようあごのところを親指と人差し指で優しくでもしっかりと固定することなど、コツを丁寧に教えてもらえたので本当に、あら簡単です。
 お医者さんは「すっきりさせた方が治りも早いと思いますよ」って。「大人が口で吸う、あのストローのタイプのものは、すぐお母さんが風邪をもらっちゃうでしょ」。そうそう、そうなんですよ!   昨今そんな良いものがあったのね。一万円以上するものでしたが、伝染されて仕事に差し支えが出ることを考えれば、絶対あった方がいいに決まっています。早速インターネットで注文だ。  私はというとその後耳鼻科のクリニックに行ったのですが、そこで鼻洗いなるものをするよう勧められ、初めて体験しました。やってみるまでは痛くないのかなと不安だったのですが、痛くないどころか、ものすごい爽快感。次に鼻が詰まったときもまた必ず来ようと思うくらい、病みつきになりそうな気持ちよさでした。のどの奥は「赤くてぶつぶつ」と、小児科で子どもが言われたのと同じ状態で、やはりですが親子して同じタイプの風邪だということがわかりました。最後の仕上げに、ものすごくまずい苦い消毒液のようなものをそのぶつぶつ付近に塗られたときには、ぐげげ! と変な声で叫んでしまったのですが、でもお陰で、喉の痛みは不思議とすぐ治まったのです。
 熱は4、5日、その後咳と鼻が3週間。結局7月いっぱい風邪は治りませんでした。
 夫はと言うと、ちょうどこのとき出張で家を空けることも多く、家にいる時はしっかり顔にフィットする「眼鏡が曇らないマスク」を装着して本人がいうには「完全防備」。でもねえ、このウイルス、そんな簡単には防げませんよたぶん……。
 息子はところかまわずくしゃみ。ぶしゃっと吹きかけてくるのです。そしてべたべたとそこらのものに触りまくる。マスクしていたら、それを剥がそうとしてくるのです。剥がしてごほん! マスク剥がしはルール違反だよ! ちっこい豆ゾウめ、君がウイルスそのものに見えるよ。
 夫不在で食欲もごはんを作る気力もまるでなかった数日間は、子どもたちの食事は近くのお惣菜屋さんにお世話になりました。ふだん行く機会がなかったけど、地のものを使って丁寧に作られた各種お惣菜は、じんわりとおいしくて、ありがたいものでした。
 風邪引いたことでお医者さんとお惣菜屋さんを見つけることができた。ころんでもただでは起きない、を体現だ。

 さてさて、しんどい一か月をようやく終わらせようとしていた7月の終わり。やっとどっかに家族でピクニックでも……という矢先のことです。
 うちの二階から「げほげほげほっ!」とでっかい咳が……。夫が、ついに発病したもようです。って今頃!
 この風邪は8月末現在も続いていて、彼には悲惨な夏休みとなりました。