ひさしぶりのキャンプ、の巻。
 もぐもぐ。はぐはぐ。「おかーさん、スパゲッティおいしいねえ。んー、これ、白ナスも入っているの?」
 九月。徳島県美馬市を流れる吉野川の支流、穴吹川でキャンプをしました。美馬というところは緑豊かな美しい土地で、昔の町並みが大切に残されている地区もあり、以前『百年名家』という番組で訪れたこともあります。
 さて、キャンプはおよそ五年ぶり。
 ふうたろう(仮称、娘。もうじき八歳)はゴザにぺたんとお姉さん座りして、割箸でトマト味の野菜たっぷりスパゲッティを頬張っている。何が入っているのかいまいち分からないのは、辺りが真っ暗なためであります。
 息子、そうたろう(仮称、一歳半)はというと、暗闇のなか、ごそごそ動き回っては夫の膝によじ登ってみたり、ランタンに手を伸ばしたりお皿に手を突っ込もうとしたり、私がちびちび味わっているビールや、夫の「一本しか持ってこなかった」と何故かイバって言うワインを倒そうとするので危なくて仕方がない。息子はこぢんまりしつつごろんとした体型のため、コガネムシ、もしくはカブトムシの雌みたいな感じなのです。足腰が強く、ぐいぐい動くのでその動きを阻止するのに必死。
 本当ならばテーブルにコットンのクロスなんか掛けて、キャンドルとかも灯して、チェアに座ってゆったりくつろぎたい……ところなのですが、この活動的なコガネムシが何もかもをひっくり返さぬよう、全員ゴザ敷いて地べたに、という安全策。まるでピクニック。ランタンも危ないので(ホワイトガソリンにガラス製!)で点けられず、なので照明に乏しく、闇鍋でもしているみたいな変なムードです。夫、私はヘッドランプつけているし。探検隊か。お隣の優雅なバーベキューコンロが眩しいなあ。
 三人で息子を羽交い締めにする、ほぼレスリング状態で食事を摂る。うー、せっかく近くの直売所でたっぷり買ったズッキーニ、白ナス、パプリカ、バジルなどなど新鮮野菜のパスタと、鶏もも肉のグリル、それからデザートに梨とブドウを、お皿にきれいに盛りつけたのに。暗くてちっとも見えないし、落ち着いて食べられやしないよ。とほほほほ。
 しかも、ゴザ敷いているところ、ちょっと傾斜しているのです。油断するといろいろあぶない。
 わー! そうたろうがブドウひっくり返したー! おかーさーん!! あー!転がってったぞー! きゃー、今度は私のパンを横取りしたー! 
 騒がしくって恥ずかしいなあ。
「おむすびコロリンの話がどうしてできたのか、なんか分かるなー」と夫が言いました。

 今回のキャンプ、実はお誘いを受けてやって来たのであります。少し離れた場所に大規模野営地がある。
〈川の学校〉という名のキッズキャンプです。
 小学五年生から中学三年生までの子ども三十人ほどが親元を離れ、徳島の各地で集団キャンプ生活をしながら川でうんと遊ぶというスクール。年間五回ほどのスケジュールが組まれ、入学するとその五回ともに参加することになります。川で遊ぶ子ども=川ガキをサポートし、一緒に遊ぶ大人たちは、皆さんボランティアで、年齢も様々です。この学校の卒業生という高校生から、かつて子どもを送り込んだ経験のある親御さんまで。「子どもがうんと楽しそうだったので、どんなことするんだろうって興味を持って、今年度、スタッフとして参加しました」というお母さんともお話しました。
 川の学校では何でもあり。「何をしてもいい」のだそう。網で魚を捕る、竿で釣る、潜って捕る……捕ったものは当然自分たちで捌いて調理して食べます。そして泳ぐ。岩から飛び込む。カヌーを漕ぐ。木や竹で細工物を作る子もいれば、イカダ、イスなど大がかりなものを作る子たちもいます。
 決まりはというと、親は同伴不可。常に「二キロ以上」近づいてはいけません、とのこと。何故かというと、親が近くにいると子どもが活動を自粛するからなんだって。なるほどー。
 この学校の校長先生は徳島県在住のカヌーイスト、野田知佑さん。野田さんと夫が古くからの知り合いで、今回見学しませんかとお誘いを受けたのです。
 川の学校のトレードマークである河童みたいに、のびのび遊ぶ子どもたち。野山大好きな私は、以前からこのキャンプにとても興味を持っていました。
 『川の学校』は本にもなっているし(野田知佑著、三五館刊。名著です)、テレビや新聞、雑誌でも折に触れ取りあげられています。だからご存じの方もおられるはず。
 この本のオビには野田さんのこんな文章があります。
《本当は日本の川が世界で一番いいんだ。魚の種類も多くて水温が高いから川に入って遊べる。日本は山が深い。雨が多い。四季がある。雨の水を深い山の雑木が根っこにいっぱい溜めていて、川を作っている。非常に自然が豊かだったんだね、三十年くらい昔は。》

 というわけで、私はできるなら子ども時代に戻って入学したい! と思っているのです。まあ、それは叶わぬ夢ですが、うちの娘、そして息子は大きくなったらぜひ入学してもらいたいなあと。
 海もいいけど、日本にはどこに行っても川があります。
 なので、川作法、絶対的に必要ですよね!