四国駆け足わしわし旅、の巻
 今年のゴールデンウィークは四国巡りをしました。
 香川、高知、愛媛に二泊ずつ。香川では讃岐うどんと金比羅詣り、高知では日曜市、鰹のたたきと牧野富太郎ゆかりの植物園、愛媛では伊丹十三記念館と道後温泉を楽しむという計画です。
 連休ということで宿の予約をするのも大変でした。宿がいっぱいということは、どこも混んでいるのだろうなあと車の渋滞をおそれていたのですが、ほとんど杞憂に終わりよかったよかった。緑は濃いし空気もきれい、美味しいものもたくさんあって、家族で四国を大満喫できたのであります。  香川では讃岐うどんを何玉食べたかな……。本場の味はやっぱり違いますね。いくら食べても飽きませんでした。それにセルフサービスのうどん屋さんの、あのシステマティックなこと! お昼どきの混み合う店内も活気があって良い感じ。待ちぼうけ、というようなストレスは無く、どんどんお客さんが入れ替わっていくのです。みんな思い思いのトッピングをした美味しいうどんを食べて、さっと次の方に席を譲って。見ているだけでも心地良く、楽しかったなあ。
 香川県庁の東館は丹下健三さん設計の建築、一階には猪熊弦一郎さんの陶板の壁画があり、これも急ぎ足で見学したのですがモダンでかっこよかった。
 愛媛、道後温泉では、娘のたっての願いで人力車に乗りました。私はああいった晴れがましいものが恥ずかしくって超苦手なのですが、息子も乗り物が好きなので喜ぶかなと思いつつ、つきあうことに(しかし息子は心地良い揺れのお陰で10分くらいで熟睡……なんだよー!)。途中、幅のそれほど広くはない商店街のなかを駆け抜けるのにはびっくり。そぞろ歩きの温泉客の間を縫っていくので、スリル満点でどきどきしました。
 さらに、泊まった宿にはみかんジュースの出てくる蛇口が! つい童心に返ってはしゃいでしまう。
 他にもたくさん見所はありましたが、とりわけ心に残ったものはと言うと、高知市内で開催されていた日曜市です。
「いらっしゃい」「安いよー」「いかがですか?」「今一番美味しいところ!」「はいおつり二百円」「試食ありますよどうぞ!」「ボクにひとつおまけね」……。
 およそ430店が1.3キロメートルの長さの道の両側に連なる、日本最大といわれる青空市です。なんと300年以上もの歴史を誇るそう。
 並んでいるのは赤い宝石のようなトマト、目にも鮮やかなレモンイエロー色した柑橘、小夏。いぼいぼがたくさんついた濃い緑のキュウリ、しゃっきりした小松菜や青梗菜、鍵盤ハモニカくらいの大きさのショウガ、絞って瓶詰めにした柚子果汁、蜂蜜、天然酵母のパン、鉢植えの花、盆栽、真鍮製品、木工小物、干物、ちくわ、ハンドメイドのバッグ、ガサゴソ動く陸ヤドカリ……と多種多彩な品揃え。
 あいにくの雨模様です。だけどお客さんたちは道にあふれんばかりの大盛況、お祭りみたいな賑やかさでした。みんなずしりと重たげな買い物袋を下げ、嬉しそうに、でもまだまだ、もっともっとの意欲的な表情で、次の買うべきものを右に左に探しながら歩いています。時間は朝10時、ちょっぴり出遅れたかなと焦りつつ私も鼻息荒く参戦しました。
 何度も書いていますが、私は無類の市場好き。人混みは普段あまり得意ではないのだけれど、「市場だけは別」です。わっさわっさと人々が行き交い、品物が山積み、その向こうに売り子さんがいて、あれこれやりとりしながら買い物をするのは楽しい。活気があればあるだけ、売っているものは新鮮、魅力的なものが揃っている気がします。そして買い物している人が多ければ多いほど「私も」「オレも」と購買意欲が高まるようにも思います。
 名物というイモの天ぷらやさんはものすごい行列で、その周りでは揚げたてを「あつつ」「はふはふ」と食べる人たちが。ああ、みんな幸せそう! こっくりとした油の香りに誘われてか、列はどんどん長くなっていきます。
 通りを五分も進まないうちに、私はフルーツトマトと普通のトマト、イチゴを購入。その後も巨大ショウガ、ちっちゃい若もぎのキュウリ、三種類の大福餅、文旦マーマレードをゲットしました。
 城の手前で折り返し、甘酸っぱい爽やかな柑橘、小夏を一山。「畑のラー油」というものもついでに。
 娘は夫と刃物屋さんを物色。やっとひとつ、肥後守(ひごのかみ)を購入しました。「あいよ。百円おまけ!」気っ風のいいおねえさんのあの笑顔を娘はきっと忘れないだろうと思います。
 ひとつひとつのお店に「顔」があって、店主さんがそれぞれの感性で商いをしておられるのが魅力的でいいなあ。キュウリを売っていたのは私や娘と年が同じくらいの母娘おふたり。大福餅を手渡してくれたのは働き者の手をしたおばあちゃん。ラー油は笑顔が爽やかなお姉さんから、そして小夏は露地ものとハウスもの、穫れた土地の違いで味の濃厚さも違うということを丁寧に説明して下さったおじさんから買ったのです。

 というわけであっという間に私たちも、ずしりと重たい袋を五つも六つも下げるお客さんとなりました。満足満足。
 この朝市は雨が降っていたのと11キロの息子をおんぶし、人だらけだったので撮影ができなかったのが残念だったけれど、「また来よう」ということで家族の意見は一致、次の機会を待つことになりました(なので写真はなし、すみません)。
 ちなみに買った品物のいくつかは翌朝、宿のお部屋で朝食として食べる展開に。その日は、宿泊していた宿ではお部屋が満室、調理場もパンクしそうで食事が提供できません、と言うことだったので、ちょうど良かった。パンも買ってきて、持参のコーヒーは、急須でドリップ(ポットから直接だと熱すぎるしキケンなのでね)。旅先ならではの工夫です。
 盛りだくさん、かつあまりにも駆け足の旅だったので「もったいないねえ」「もっと色々なものをじっくり見たいよねえ」とみんなで言い合う。隣り合っている県なのに、土地土地でカラーも食文化も全然違うのが驚きでした。四国は奥が深い。季節を変えてまたじっくり回ってみたいです。