【巻】…5・822
【歌】…わが園に梅の花散る ひさかたの天より雪の流れ来るかも
【訳】…私の家の庭に梅の花が散る。それはね、まるで天から雪が流れてくるかのよう
【解】…天平2年(西暦730年)の正月13日、九州の大宰府に赴任していた大伴旅人の邸宅で開かれた宴会で、主人の旅人が詠んだ歌。
庭にある梅の花が、盛りを過ぎて散り始めた様子を見て、旅人は「天から雪が流れてくるかのようだ」と表現しています。当時の梅は、白梅が中心でしたので、白い花びらがハラハラと落ちる様が、無常の感覚と相まって、美しい雪を想起させたと思われます。
ところで、今は花の変化を写真におさめて楽しむことができますが、旅人の時代は、移ろいゆく瞬間を心に焼き付けるしかありません。でも、そのことが反対に大きな感動となって、歌を作る原動力となっていたのでしょう。
便利な機器に囲まれた現代ですが、例えばカメラを横において、大切な瞬間を目に焼き付けてみてはいかがでしょうか。新たな感動が、心を揺さぶるかもしれません
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