【巻】…4・717
【歌】…つれも無くあるらむ人を 片思にわれは思へば わびしくもあるか
【訳】…思っても思っても、どうすることも出来ないあの人を、片思いしている私は、ああなんとわびしいことよ
【解】…春は、学校で言えば新学期のスタートであり、さらに言えば、恋が始まる季節でもあります。とすると、同時に片思いもあちこちで発生することでしょう。今回は、この片思いを表現した歌です。
「つれも無く」は、かまってくれないという意味。その次の「あるらむ」は、状態が継続していることを表しますから、「つれも無くあるらむ」は、かまってくれない状態がずっと続いていること、つまり、「思っても思っても、どうすることもできない」ということです。まさに片思いの状況ですね。作者は、こういう思いをしているのは自分だけではないかと思えるくらい、わびしさを感じているようです。
ちなみに、万葉集では、恋は色々な書き表し方をされ、「孤悲」と表記されることもあるとか。上野誠さん曰く「恋の本質は別離にあり」。離れていればこそ、言葉に書き表して相手に伝えようとする。それが歌作りにつながる訳で、そういう切ない気持ちを理解するには、片思いの経験も貴重な糧になるのかもしれませんね。
|