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上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週日曜日 朝 5:40〜6:00

上野誠(奈良大学文学部教授)
松本麻衣子(MBSアナウンサー)
★松本麻衣子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。番組でご紹介させていただいた方には、上野先生の著書「大和三山の古代」をプレゼントします。
〒530-8304 毎日放送ラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【巻】11・2368…たらちねの母が手放れ
【巻】11・2540…振分の髪を短み
【巻】19・4292…うらうらに照れる春日に雲雀あがり
【巻】14・3399…信濃路は今の墾道
【巻】11・2472…見渡しの三室の山の巌菅(いわほすげ)
【巻】4・717…つれも無くあるらむ人を
【巻】10・1851…青柳の糸のくはしさ
【巻】10・1880…春日野の浅茅が上に
【巻】10・1844…冬過ぎて春来るらし
【巻】5・822…わが園に梅の花散る
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】19・4292…うらうらに照れる春日に雲雀あがり
2011年4月24日

【巻】…19・4292

【歌】…うらうらに照れる春日に雲雀あがり こころ悲しも 一人し思へば

【訳】…うららかに、うららかに照っている春の日。そこにヒバリがあがった。
でも悲しい。ひとりでもの思いに耽っている。

【解】…「春だよ、働こう!田んぼを耕そう」と告げるホトトギス。
朝を告げる、ニワトリ。鳥の声や、蛙、蝉の声、虫の音は、季節の細やかな移ろいや時刻など、時を知らせてくれる重要なものでした。
和歌にあっては、鳥の声は、たとえば植物とセットで「梅に、ウグイス」「卯の花(ウツギ)にホトトギス」など、情景を紡ぎだす音です。
ヒバリの声が表すのは、うららかな春。暖かく穏やかな情景のはずなのに、この歌の主は「悲しい」と言います。なぜ?
情景と心情がマッチするのもいいですが、こういった齟齬・ズレがあるのも歌の面白さです。何が悲しいのかは一切書かれていませんが、想像するに、草木萌え命が輝きを解き放つ春の真っ只中で感じる「憂い」…それは、嬉しさ楽しさの感極まった頂点で、ふと哀しみ寂しさを感じる、日本人独特のナイーヴさ、いわゆる「詫び・寂び」のようなものかもしれません。