2024年

2月11日

会社はプロダクトの発射台 大阪から世界へ

今週のゲストは先週に引き続き、株式会社GramEyeの取締役COO 山田達也さん。
創業は同級生と。
「2019年の設立です。
私と医学部の同級生の平岡が立ち上げたプロジェクトです。
これまで、大阪大学や色んな医療機関から検体をいただいてA Iの開発をしてきました。
その中でも阪大の感染症の教授・忽那先生をはじめグラム染色の先生方にもアドバイザリーに入っていただきプロジェクトを進めてまいりました」。

起業への道のりはどういったものなのでしょう。
「私が元々、薬剤耐性菌の研究をしていました。
その時は病院の検査室にいて、検査を行う技師から微生物検査の手技、方法を教えてもらいながらやっていました。
その中でグラム染色という機械が自動化する手技がありました。
実際に検体を用いながら見て、"このピンク色は大腸菌" "これぐらい長かったら緑膿菌"といった具合に技師の先生は頭の中で経験的に判断しているんです。
ただ臨床医師に報告しているのかというとそこまでしていない。
なぜかというと間違えた検査結果だった場合、それをを元に医師が診断してしまい、患者さんにも迷惑がかかります。
検査結果に100%の正確さはないんです。
コロナも陽性と云われたけれど実は陰性の場合があったりしましたよね。
検査の結果から診断というより、目の前に患者さんがいる医師が容態や病状を汲み取って、薬を出す選択をすべきなんです。
しかし、その前の技師の段階で推定の情報が止まっていました。
技師の段階でも菌床が推定できるのであれば、AIでも精度を高く推定できるのではないかと思ったこと、確率を推定できるA Iを使って菌を推定できる機械を作れないかと思ったのが起業のきっかけです」。

そこから現在につながる道のりは?
「平岡と私と医学部の後輩の何名かでプロジェクトをスタート。
そこからエンジニアとして大阪大学で勉強している学生が参加してくれました。
元々、薬剤師をしていた方が関心を持って参加してくださったり。
徐々にメンバーが集まってきて現在は業務委託を含めると30名ぐらいでプロジェクトを動かしています」。

今年、実用化になるそうですね。
「医療機器は開発から実用化までが長いです。
4年かけてようやくお客様の元に届けられるものができました。
おそらく今年中には複数の医療機関に導入されていきます。
AIですのでどんどん賢くなっていきます。
お客様からデータをいただきながらアップデートしてより精度を高くしていきます」。

世界的に見て、このグラム染色自動化機器はどのようなポジションなのでしょう。
「ここまで開発が進んでいるのは弊社が世界で一番です。
グラム染色自体が世界中で行われている検査ですが、臨床応用の取り組みでいうと日本がとても進んでいます。
アメリカの技師の話を聞くと日本のグラム染色は丁寧だと聞きますね(笑)。
日本の個別の患者さんに薬を選ぶというやり方も影響しているかと思います。
今後、アメリカ、ヨーロッパ、ASEAN地域などにも持っていきたいですね」。

価格的にはどのぐらいの...。
「顕微鏡が入っているもので、その顕微鏡だけでも数百万円。
高倍率のレンズを作りますので、装置自体も数百万円します。
ただ微生物検査と比べると一定の水準にあると思います」

未来のビジョンはどのように描いておられますか?
「今年、医療機関に導入されます。
そこでしっかりとした検査結果を出すことが今年の目標です。
その先には国内だけでなく海外にもAIの製品を届けていきたい。
さらにその先にはグラム染色だけにとどまらず、抗菌薬の適正使用ができるようなプロダクトを大阪から作って世界に発信していきたいと思っています。
基本的には上場を目標に進めて、株式会社GramEyeを感染症治療、抗菌薬適正使用のプロダクトの発射台にしたいと思っています。
株式会社GramEyeで研究開発をして、プロダクトが作られ、医療機関に入っていく。
そういうサイクルを生み出すハブにしていきたいですね」。

竹原編集長のひとこと

大阪大学のバックボーンの凄さ、東大阪のものづくりの力、山田さんの会社のアイデアと技術。
世界に届く大阪の力です。