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【巻】…8・1515
【歌】…言しげき里に住まずは 今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを
【訳】…噂のうるさい里になんか住みたくない。今日鳴いた雁と一緒に行ってしまえばよかったのに
【解】…前週に紹介した穂積皇子の歌に応えた但馬皇女の作品です。同じく「雁」を使って詠んでいるのは、歌を返すときの一般的な礼儀。穂積皇子が、「二人の恋が大変な噂になって、彼女に可哀想なことをした」と心を痛めているのに対し、但馬皇女は、雁のように空を飛んで、噂のない場所に行ってしまいたいと綴っています。「言しげき里」の「しげき」は、木が茂る様子を重ね合わせた表現で、噂が噂を呼んでいる様を表しています。これは、但馬皇女にとって耐え切れない状況だったのでしょう。
結局は結ばれなかった二人の悲恋物語は、こうした歌になることで、千年以上たった今も、その心模様が、みずみずしく蘇ってきます。
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