上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週日曜日 朝 5:45〜6:05

上野誠(奈良大学文学部教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。番組で紹介させていただいた方には、番組特製ポーチをプレゼントします。
〒530-8304 毎日放送ラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」
★1999年〜2007年6月までのHP

【巻】8・1515…言しげき里に住まずは
【巻】8・1513…今朝の朝明 雁が音聞きつ
【巻】2・223…鴨山の岩根し枕けるわれをかも
【巻】7・1406…秋津野に朝ゐる雲の失せゆけば
【巻】12・2917…現にか妹が来ませる
【巻】10・1982…晩蝉は時と鳴けども
【巻】4・526…い千鳥鳴く佐保の川瀬のさざれ波
【巻】3・378…いにしへのふるき堤は
【巻】10・2006…彦星は嘆かす妻に
【巻】8・1518…天の川相向き立ちて
上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】8・1515…言しげき里に住まずは
2009年8月30日

【巻】…8・1515

【歌】…言しげき里に住まずは 今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを

【訳】…噂のうるさい里になんか住みたくない。今日鳴いた雁と一緒に行ってしまえばよかったのに
  
【解】…前週に紹介した穂積皇子の歌に応えた但馬皇女の作品です。同じく「雁」を使って詠んでいるのは、歌を返すときの一般的な礼儀。穂積皇子が、「二人の恋が大変な噂になって、彼女に可哀想なことをした」と心を痛めているのに対し、但馬皇女は、雁のように空を飛んで、噂のない場所に行ってしまいたいと綴っています。「言しげき里」の「しげき」は、木が茂る様子を重ね合わせた表現で、噂が噂を呼んでいる様を表しています。これは、但馬皇女にとって耐え切れない状況だったのでしょう。
結局は結ばれなかった二人の悲恋物語は、こうした歌になることで、千年以上たった今も、その心模様が、みずみずしく蘇ってきます。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】8・1513…今朝の朝明 雁が音聞きつ
2009年8月23日

【巻】…8・1513

【歌】…今朝の朝明 雁が音聞きつ 春日山黄葉にけらしわがこころ痛し

【訳】…今朝の明け方、雁が音を聞いた。春日山は黄葉したらしい、私の心は痛い。
  
【解】…作者の穂積皇子は、時の太政大臣(高市皇子)の家に住む但馬皇女と恋をします。それは、許されない恋愛だったらしく、当時は大変なスキャンダルとなりました。結局、二人は別れるのですが、穂積皇子は、雁の音を聞いて秋の深まりを感じながら、「こんな噂になってしまって、彼女に可哀想なことをした」と胸を痛めています。その後、但馬皇女は亡くなってしまい、穂積皇子は悲傷の歌を捧げました。
「降る雪はあはにな降りそ 吉隠の猪養の丘の寒からまくに」万葉時代の悲恋物語のひとつです。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】2・223…鴨山の岩根し枕けるわれをかも
2009年8月16日

【巻】…2・223

【歌】…鴨山の岩根し枕けるわれをかも 知らにと妹が待ちつつあらむ

【訳】…鴨山の岩を枕にするこの私のことを知らずに、妹は待っているであろう
  
【解】…先週に続いて、挽歌の特集です。今回の歌の作者は、柿本人麻呂。人麻呂は、持統天皇時代の歌人で、様々な歌の形を作り上げたことから、歌聖とも呼ばれています。彼は、色々な人に挽歌を捧げていますが、この歌は、自分自身の死に臨んで、自らを悲しんで作ったもの・・いわゆる辞世の歌に近いものです。
歌の中の「岩根し枕ける」は、本当に岩を枕にして寝ているのではなくて、旅先で病気になった苦しい状況を示す表現。そうとも知らず、故郷でずっと待っているであろう妻を不憫に思い、せめて、この状況を知らせてやりたいと、人麻呂は歌に詠んでいます。ちなみに、歌聖・柿本人麻呂の終焉の地である「鴨山」は、島根県内であるということは分かっていますが、具体的に場所がどこなのかは特定されていません。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】7・1406…秋津野に朝ゐる雲の失せゆけば
2009年8月 9日

【巻】…7・1406

【歌】…秋津野に朝ゐる雲の失せゆけば 昨日も今日も亡き人思ほゆ

【訳】…秋津野に朝かかっている雲が消えてゆくと、昨日も今日も、亡き人のことが思われる
  
【解】…今週と来週は、お盆にちなんで、挽歌の特集です。今回の歌は、秋津野の空にかかる雲が消えていく様子を見て、亡き人に思いをはせる内容。
(秋津野が、どの場所かは、まだ特定されていません)
雲を見ていると色々な思いが湧きあがってくるものですが、この作品では、とどまることを知らない雲が、人の無常を思い起こさせたようです。
誰しもが、一生を通じて旅を続ける・・それは、物理的な旅だけでなく、年齢を重ねるという旅もあり、生から死への旅もあるでしょう。作者は、そのような、人生の無常感を雲から感じ取ったのかもしれません。
皆さんは、刻々と表情を変える雲から、何を思い浮かべるでしょう。


上野誠の万葉歌ごよみ-歌ごよみ
【巻】12・2917…現にか妹が来ませる
2009年8月 2日

【巻】…12・2917

【歌】…現にか妹が来ませる 夢にかもわれか惑へる 恋のしげきに

【訳】…本当にあの子が来たのか、はたまた夢か。私は惑う、思い乱れて。
  
【解】…今回は「夢うつつ」の歌。作者は、恋人がやって来た夢を見たのですが、「恋のしげきに」、つまり恋の激しさ故に、それが夢か現実か分からなくなって思い乱れています。それほど思いの深い「恋」が、この歌の主題です。ちなみに、万葉の人々は、迷ったり苦しんだりしなければ、恋に値しないと考えていたようです。
ところで、この時代の「恋」は、「恋しく思う」という意味で、生き別れたり死別した人への思い、旅に出ている間の故郷への思いなど、恋愛の「恋」以外にも使われます。