第13回 京都をこよなく愛した文学者「谷崎潤一郎」の旧邸『石村亭(せきそんてい)』
2012.12.30

今月は、京都ゆかりの文学についてご紹介していますが、今週ご紹介したのは、谷崎潤一郎が過ごした家や庭が当時の雰囲気のままに残されている『石村亭』です。(写真1)
谷崎潤一郎は、戦前から戦後にかけて3度にわたって「源氏物語」の現代語訳を出版し、「源氏物語」ブームを引き起こしましたが、中でも最も原文に忠実であると言われる「新訳源氏物語」を執筆された場所が、下鴨神社「糺(ただす)の森」のすぐそばに佇む「潺湲亭(せんかんてい)」、今の「石村亭」です。(写真2)
番組では、この「石村亭」を管理する日新電機・経営企画部の梶間俊郎さんに、お話を伺いました。(写真3)
谷崎は、生涯にわたって40回以上も引っ越しをし、京都だけでも6か所に移り住んだのですが、 中でもこよなく愛して長く住んだのが、この「後の潺湲亭」と呼ばれていた現在の「石村亭)」で、当時のままに保存されている唯一の邸宅だそうです。
その大変気に入っていた京都の邸宅ですが、高齢で病気を患ったことから、暖かい熱海へ移ることになり、この佇まいを維持してくれることを了解してくれた日新電機に譲ることになったそうです。
邸宅の庭には池があり、水が流れているのですが、その水の流れとせせらぎの音を中国では潺湲(せんかん)と呼んでいたことから谷崎はここを「潺湲亭」と名付けていたそうですが、昭和31年に日新電機に譲る際、「もう一つ名前を考えましょう」と、庭に石が多いので「石村亭」名づけ、「どちらでも好きな方を選びなさい」と言われ、「潺湲亭」では難しいので、「石村亭」という名前を頂いたそうです。(写真4)(写真5)
「石村亭」は、現在一般公開されていませんが、日新電機のホームページで詳しくご紹介されていますので、ぜひご覧になって下さい。
日新電機石村亭プロジェクト
また、芦屋市が運営する「谷崎潤一郎記念館」では、「石村亭」と「倚松庵(いしょうあん)」を訪ねるツアーを例年5月6月頃に開催されています。今年の予定はまだですが、講座が開かれれば見て頂くことができるそうですので、ホームページでご確認ください。
芦屋市谷崎潤一郎記念館
第12回 日本が世界に誇る漫画博物館「京都国際マンガミュージアム」
2012.12.23

(写真1)
今週ご紹介するのは世界的に認められている日本の漫画をテーマにした京都国際マンガミュージアム。
2006年にオープンしたこのミュージアムは、漫画をテーマにして、しかも展示物である漫画を実際に手にとって読むことができるとてもユニークな博物館。
もともと統廃合により使われなくなった旧京都市立龍池小学校の歴史的に価値ある校舎をリノベーションして、京都精華大学と京都市との共同事業として誕生しました。
およそ5万点の漫画を読むことができ、約30万点も漫画資料が保存されています。
(写真2)
また、2階に展示されている手塚治虫作品で有名な火の鳥のオブジェは、仏像などを手がける仏師が、木彫りで作ったんだそうです。
(写真3)
事務局次長の小坂さんは、「古い漫画から新しい漫画まであり、どの年代の方でも楽しんで頂けます。
また実際に漫画を描くワークショップも開催しております。
京都へお越しの際には、どうぞお立ち寄り下さい」とおっしゃっていました。
(写真4)
京都国際マンガミュージアムについての詳しくは↓
http://www.kyotomm.jp/
第11回 世界で唯一の源氏物語をテーマとした博物館「宇治市源氏物語ミュー ジアム」
2012.12.16

(写真1)
今月は京都ゆかりの文学をテーマにお送りしていますが、今週紹介するのは、紫式部が残した世界的名文学「源氏物語」。
源氏物語は、全部で54(帖)の小節で構成されていて、大きく前半と後半に分けることができ、前半は、光源氏の誕生から栄華を極めていた頃、そして栄華が陰り、亡くなるまでの物語。
後半(42帖から)は、光源氏が亡くなってから、息子と孫の物語として、それまでの舞台である平安京から、場所を宇治に移して展開されていきます。
この宇治に舞台を移した部分は「宇治十帖」と呼ばれています。
宇治市源氏物語ミュージアムでは前半を「平安の間」、後半を「宇治の間」と分けて、映像や展示物、模型を見ることで初心者の方でも源氏物語に親しんでもらえる作りになっています。
(写真2,3)
学芸員の大塚さん曰く「源氏物語を知らない方でも、わかりやすい展示内容となっています。宇治は源氏物語の関わりの深い場所、是非ミュージアムで物語に触れ、宇治の町を歩いて見てください」とおっしゃっていました。
(写真4)
宇治市源氏物語ミュージアムについての詳しくは↓
http://www.uji-genji.jp/
第10回 「京都府立総合資料館」とは
2012.12.09

今月は、京都ゆかりの文学についてご紹介していますが、今週ご紹介したのは、京都ゆかりの貴重な書物や美術工芸品などを所蔵する「京都府立総合資料館」でした。
この施設について、副館長の山本真さんにお話を伺いました。(写真1)
京都府立総合資料館は、昭和38年に建設され、今年で49年を迎える施設で、京都の歴史、文化、生活や産業、行政文書、美術工芸品など、京都に関する上質で豊富な約60万点に及ぶ資料を所蔵しているそうです。是非、京都調べや京都を学ぶために来館してほしい、との事でした。
また、所蔵されている国宝の『東寺百合文書』について、歴史資料課古文書担当の岡本隆明さんにお話をうかがいました。(写真2)(写真3)
およそ百個の箱に納められた1万9千点ほどの文書で、中でも一般の私たちでも興味を持ちやすい、 足利尊氏の花押のある文書2点をご紹介頂きました。(写真4)(写真5)
京都府立総合資料館では、国立公文書館所蔵資料展「公文書の世界in京都」が12月23日(日)まで開催されています。
板垣退助らによる民撰議員設立建白書(明治7年)や、「大日本国憲法」と「日本国憲法」という新旧の憲法の交付原本、「耐えがたきを耐え忍びがたきをしのび」という終戦の証書など、貴重な公文書を直に見ることができるそうです。
国立公文書館所蔵資料展「公文書の世界in京都」
また、京都府立総合資料館所蔵の資料の一部をホームページで見ることができます。
こちらも是非ご覧下さい。
第9回 完成から800年の鴨長明『方丈記』
2012.12.02

今月は、京都ゆかりの文学についてご紹介します。
今週ご紹介したのは、京都を代表する文学の一つ、今年800年を迎える鴨長明の「方丈記」です。
お話を伺ったのは、長明ゆかりの下鴨神社、権禰宜の東良勝文(ひがしら・まさふみ)さんです。(写真上)
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ 消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」という始まりの一節ですが、一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
その鴨長明は、下鴨神社の境内にある摂社「河合神社」の神主の息子として生まれたそうですが、若くして父親と死に別れ、神主にはなれませんでしたが、実は多才な人で、歌もうまく、後鳥羽院に認められて「新古今和歌集」の編纂にも携わったそうです。
「方丈記」は原稿用紙20枚ぐらいの短い作品だそうですが、五大災害(地震、竜巻、飢饉、火事、遷都)や世の中の住みにくさ、生き方の考え方などが書かれているそうです。
その鴨長明ゆかりの下鴨神社では、「方丈記」が執筆されてから800年を迎えるにあたり、様々な展覧会などが行なわれています。
○「鴨長明『方丈記』と賀茂御祖神社式年遷宮資料展」(12月16日まで 研修道場にて)
鴨長明直筆の書や関連するもの、平成27年に控える式年遷宮にかかわる調度品などを展示。
○「『定家と長明』展 スタジオジブリが描く乱世」(12月16日まで 神服殿にて)(写真下)
スタジオジブリが芥川賞作家の堀田善衞さんの為に描いた303点のイメージボード。
その他、様々なイベントが行われていますので、詳しくは、下鴨神社のホームページをご覧下さい。
http://houjyouki.p2.weblife.me/index.html