喫茶ラウンジMegビブリオ

5月19日(西田 愛)

結城真一郎:著 新潮文庫:刊 『真相をお話しします/(#拡散希望)』

「いまから僕は、ある殺人事件の″真実″を白日の下に晒そうと思っています」
小学六年生の渡辺珠穆朗瑪(わたなべちょもらんま)は、怒りと憎しみに震えながら、撮影を開始し、
カメラに向かって語りかけた。

ここは、長崎市の西の沖合・八十キ口に位置する...匁島。
一周回っても十キロ程度の小さな島で、島民は百五十人ほどである。
島に一つだけの小学校は、全校生徒たったの四人。
主人公の渡辺珠穆朗瑪(わたなべちょもらんま)...通称チョモ、
そして桑島砂鉄、安西口紅、立花凛子の四人である。凛子以外は移住してきたのだが「子供は多いのがええ、島の宝さ」と、
島の人たちは四人を可愛がってくれていた。そんな四人の前に、ある日「未来」がやってきた。凛子が、両親からiPhoneを
買って貰ったのだ。
チョモの家は特に教育熱心で、スマホも携帯も禁止、決まった時間と場所で一日の振り返り報告...というルールがある。
その為、チョモにはスマホの全てが新鮮に見え、憧れは募るばかりだった。砂鉄も「すげー」と溜息を漏らしている。
さらには、動画というものがあるという事、それを配信するYouTuberという存在がいる事も、凛子から教えられた。
「ねぇ、一緒にYouTuberにならない?」
凛子の無邪気な提案に、自分もYouTuberになってみたいとチョモの夢も膨らむのだった。

しかし。小学三年生の夏休み。あの日から、全ては変わってしまう...。
いつものように四人で遊んでいると、ピンクのモヒカン頭の男に声をかけられた。見るからに島の外からやってきたと思われ、
かなり興奮した様子である。男は「一緒に写ろう」と執拗にスマホを向けてきた。
まともじゃない...そう思ったが、砂鉄は隣に立ってピースサインをする始末。
しかし、口紅(ルージュ)の逃げようという一言で、なんとか男を振り切ったのだった。
そして。
...その男が殺されたと、ニュースで報道されたのは、その数時間後だった。
それからだった。島の人たちの様子が変わってしまったのは。
全員が明らかに子供達によそよそしくなり「この子達に関わっちゃいけない」と思っているようだった。
それは、最初から島で育っている、凛子も同じだった。

そして三年の時が流れ...小学校6年生になったチョモ達は、また新たな殺人事件に巻き込まれる事となる。
犯人は一体誰なのか、三年前の事件との関連性は...?
そして、島の人たちがよそよそしくなったのは何故だったのか?
真相に辿り着いた時、チョモが出した答えとは...


4月21日(西田 愛)

芦辺拓:著 創元推理文庫:刊「大鞠家殺人事件」

大阪の商人文化の中心地として栄華を極めた船場――。その中にある南久宝寺町通には、小間物屋から発展し、
化粧品製造で財と地位を築いた大鞠百薬館があった。
その大鞠家を巡る、一連の悲劇の始まりは明治39年...大鞠家・長男、千太郎が失踪したことに始まる。
娯楽施設であるパノラマ館見物の途中で、丁稚の鶴吉を置いて忽然と姿を消したのだ。それきり行方は杳として知れず、
千太郎の妹・喜代江が、婿養子を迎えて家業を継ぐこととなった。

そして時は流れ...。
第二次世界大戦下の昭和18年。
そんな大鞠家の長男に嫁ぐことになったのは、陸軍軍人の娘、中久世美禰子。しかし夫である多一郎は軍医として
出征することになり、一癖も二癖もある大鞠家の人々の中に、彼女は単身残される事になる。
そして戦局が悪化の一途をたどる昭和20年。
化粧品という、不用不急の非愛国的製品を扱う大鞠家は、戦争の影響でかつての栄華も衰えはじめていた。
それでも尚、かつてのしきたりを守る一族を、ある晩"流血の大惨事"が襲う。
切り付けられた美女、吊るされた男、酒樽の死体、そして夜ごと舞いおどる赤頭の小鬼。
次々に起こる事件と怪異に美禰子は、親友のナツ子とともに、対処にあたる。そして謎の探偵・方丈小四郎まで、
真相解明に乗り出すのだった。

危機的状況の中、誰が、なぜ、どうやってこのような奇怪な殺人を?
なぜ「彼ら」は、殺されなければならなかったのか?
明治、大正、昭和...大鞠家の歴史に隠された秘密とは?

大阪・船場を舞台に、豪商一族をめぐる、華麗なる惨劇が、いま幕を開ける...!


3月10日 (西田 愛)

道尾秀介:著 文春文庫:刊 「いけない」

白沢(はくたく)市と蝦蟇倉(がまくら)市の海外線を結ぶ白蝦蟇(しろがま)シーライン。
南下していくとその左手には、「弓投げの崖」と呼ばれる断崖が見える。そこは、自殺の名所だった。
崖の上に漂う死者たちの霊と目を合わせると、あの世に連れて行かれてしまう。だから、
...決して崖を見てはいけない。
そんな噂が囁かれている付近で、ある日、交通事故が起こる。
白蝦蟇シーラインのトンネル出口付近で、安見邦夫の運転する車と、若者たちが乗っている車が接触したのである。
邦夫は、結婚五周年となる妻へ、プレゼントを買いに出かけた帰りであった。
邦夫の自損事故に見せかける為、隠蔽工作をはかる若者たち。
更に、意識が混濁し、車内で動けずにいる邦夫の金品まで奪い...暴行を加えはじめた。彼に、とどめを刺すために...。
そして。
トンネルの死亡事故から3ヶ月が経った頃。
また、同じ場所で事件が起こった。
トンネル出口付近で若者が、何者かによって撲殺されたのである。
しかもその若者は、警察が追っていた男だった。
殺された若者は、あのトンネル事故で、邦夫の車と接触した車の持ち主だったのだ...!
特定はできたものの、未だに接触できず、捕まえられずにいた矢先の事件だった。
同じ場所で起こった死亡事故と殺人事件。
これには、一体どんな意味があるのだろうか? 
そして、若者を殺したのは果たして誰なのか?
捜査に乗り出す警察であったが、悲劇は連鎖していく...。
騙されては、いけない。
全ては、一枚の写真だけが、知っている......。


2月10日 西田 愛

今日ご紹介する本は、新感覚のホラー書籍です。この本は、ホラーを専門として、新しい恐怖体験を届けている会社、株式会社闇と日本のホラー作家の梨、コラボで昨年出版された作品です。
株式会社闇は、例えば、このMBS ラジオのある建物の1 階のロビーで開催されたお化け屋敷とか、ひらかたパークで閉園後に開催されたホラーイベントなどを手掛けていて、ラジオお聞きの皆さんも参加したことあるという方もいらっしゃるかと思います。
早速紹介しましょう。。。。

梨、株式会社闇:著/「つねにすでに」/ 発行ひろのぶと株式会社

私は以前、インターネット上の掲示板で執筆された怪談を、合成音声で朗読させる、動画をよく閲覧していました。
有名な動画はほとんど聞き終わったのですが、そのうち、再生回数も少ない、出典元もわからない、
マイナーなネット怪談の朗読を好んで視聴するようになっていました。
この辺を視聴するようになると、どんな効果音のサイトの音を使っているのか?どの音声ソフトでどんな声を出力しているのか?どの掲示板からどんな怪談を引用しているのか?がわかってきます。
ある時、「ゆくりときいてください」という導入から始まる短い怪談朗読の動画を視聴しました。内容は、深夜のラジオ番組を聴いているときに、番組とは明らかに異なる全く知らない音声が入り込んでくるという怪談でした。
最初はラジオの混線だろうと思ってきたのですが、聞き流しているうちに、主人公がその違和感に気づき始めるというストーリーなのですが、その怪談が朗読されている時、私は、視聴している動画自体に奇妙な音が重なっていることに気づきました。
意味のない小さな声が動画の所々で重なっているのです。
「・・・よ。」「・・・すよ」「いますよ」。

それに気づいた私が、動画の途中で、イヤホンをはずそうとしたその時、朗読の音声が突然変わって「いいですか」と動画の合成音声がはっきりと言ったのです。唖然とした私が、再生した画面をみると動画は終わっていました。動画の最初のことば、「ゆくりときいてください」これはいったいどういう意味なのでしょうか?
その日以来、私にはたまに変な音が聞こえることがあります。誰がこの怪談朗読動画を作成したのか、いまだにわかっていません。
といった内容がこの本の最初に記載されています。


1月13日 

100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」
福井県立図書館 / 講談社文庫

皆さんは、図書館を利用したことありますか?
もちろん、ありますよね。
じゃあ、読みたかった「あの本」のタイトルを、忘れちゃった!なんてことは...?
「確か...あの、なんとかいう人の...なんとかって本!ほら、えーと...」
これも、経験したことがある人は多いのではないでしょうか。
本の正確なタイトルというのは、なかなか覚えづらいもの。
そしてうっかり間違って覚えたタイトルを文字通りに想像してみたら、とんでもなくシュールで面白すぎる事態になっていることもしばしば。
特に図書館では、タイトルがうろ覚えだったり、思い出せなくなってしまっている利用者さんが、沢山訪れます。
そんな図書館利用者さんの「覚え違いタイトル」の実例を集め、HPで公開しているのが、福井県立図書館の「覚え違いタイトル集」です。
この本は、その中から秀逸な「覚え違いタイトル」を厳選し、図書館司書さんによるレファレンスを記したものになっています。
利用者さんが今までに、「すみません、こんなタイトルの本だったと思うんですが...どこにありますか?」と尋ねてきた覚え違いの中には、
例えばこんなものがあります。

「おい桐島、お前部活やめるのか?」「ねじ曲がったクロマニョンみたいな名前の村上春樹の本」「下町のロボット」「蚊にピアス」などなど。
惜しいけど...なんか違う!
さて、皆さんは本当のタイトルが分かりましたか?
そんな覚え間違いの数々に、司書さんがなんとか答えを導き出そうと知恵を巡らす姿が、なんとも微笑ましくもあります。
あなたもきっと、利用者さんの覚え違いに爆笑し、司書さんの検索能力に驚嘆することになるでしよう。
クイズ感覚でも楽しめる、公共図書館が贈る空前絶後のエンターテイメント、ぜひご堪能ください!


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