
今回は、高級京野菜・えびいものご紹介です。
サトイモの一種『唐の芋(とうのいも)』に「特別な土入れ作業」をすると、曲がった小芋ができます。その形がエビのようで、しましま模様が入るので『えびいも』と呼ばれます。
えびいもの歴史は、円山公園にある京料理のお店「いもぼう」のご先祖様に始まります。江戸時代1700年代後半、平野権太夫さんは青蓮院の宮さまに御使いしていて、お花や野菜を栽培していました。
ある時、長崎から持ち帰られた芋を託され育ててみると、エビの形に似た大きな芋ができ、青蓮院の宮さまが「えびいも」と名づけられました。
えびいもは、堀川ごぼうと同じく、育て方が個性的な京野菜です。
「特別な土入れ作業」とは、小芋が育ってきたら行う「土寄せ」です。「土寄せ」とは、親芋の茎と子芋の茎の間に土を入れる作業で、これをしないと子芋が親芋から離れず、曲がった形のえびいもになりません。これを少しずつ何回も繰り返します。
また、形も味も良いえびいもにするには、水田土壌が適していて、畑に水を入れたり、土寄せをしたり、不要な葉っぱを取ったりする作業が必要です。手作業が多く、重労働です。
ちなみに産地は、静岡県磐田市あたりが盛んです。静岡で全体の8割以上を作っていますが、こちらでは砂質土で作られているため、あまり曲がった形にはならないそうです。
えびいもは、食べるとほくほくしていて、中から味が出てきます。食べられる時期は2月いっぱいまでです。ちょっと贅沢したいときに、えびいも料理はいかがですか?

秋らしくなったこの時期、宇治で少し歩く観光はいかがでしょうか。
まずは、JRや京阪の宇治駅から歩いて10分の世界遺産・平等院です。鳳凰堂の前で十円玉を貸し借りする修学旅行生がいて、その様子を不思議がる外国人の姿も見られました。
数年前の話になりますが、鳳凰堂では屋根の葺き替え・柱などの塗り直しの修理をしていましたが、2014年秋からまた見学できるようになりました。以前より外観がきれいになりましたが、建物の中は以前と変わっていません。鳳凰堂内部拝観には、300円が必要です。
宇治にあるもうひとつの世界遺産は、宇治上(がみ)神社です。平等院からは宇治川を渡って15分歩けば到着です。
本殿は平安時代、拝殿は鎌倉時代に建てられたとみられています。というのは、史料が残っていないので、年輪年代測定法で算出されています。本殿は神社建築としては現存最古になるそうです。
宇治上神社に参拝して意外だったのは、「ご朱印は、参拝してから」や「お守りを授かるときの注意点」など、おみくじやお守りの説明が書かれたA4サイズの資料をいただけることです。地元の神社のように身近に感じました。
さて、宇治の名産といえば、宇治茶です。ランチには『宇治茶づけ』がおすすめです。ありそうでなかったこのメニューを、8つのお店が宇治のご当地グルメをとして2015年秋に考案されました。
お邪魔したお店は、JR宇治駅から歩いて3分の「旬菜魚庵はせ川」です。はせ川さんの宇治茶漬けは、マグロです。マグロの赤身の上に宇治茶の煎茶をかけると、白く、霜降りの状態になります。すると、マグロの脂がお茶で流されてご飯にしみていくのです。煎茶の風味を失わないためにマグロは赤身にされたとのこと。細かいあられ、大葉の刻み、抹茶や塩のどれもが自己主張しすぎず、宇治茶とのいいバランスの一品です。
店主の長谷川さんがおっしゃるには、「宇治の方は緑茶への舌が肥えていて、お茶を飲んだらどこのお茶か分かるのでいいものを提供したい。元々魚屋だったので、いいマグロを提供したい」と。煎茶や抹茶もお客さんとのつながりで手に入る良い素材だそうです。
宇治は、平安文化や宇治茶という大きな魅力があり、観光地ですがゆっくりとした空気の流れを感じます。
他にも、平等院のミュージアム鳳翔館(ほうしょうかん)や源氏物語ミュージアムをじっくり見学するのもいいですね。
水菜は、江戸時代前半の1600年代には、東寺や九条あたりで作られていた記録がある京都発祥の野菜です。平成元年に京のブランド産品に認証された京都を代表する京野菜ですが、当たり前に全国流通しているので、京野菜と知らない方も多いようです。
さて、みなさんは水菜をどんな料理に使いますか?鍋や水菜サラダが有名でしょうか。しかし、水菜には、「昔からある水菜」と「平成になってからの水菜」の2つがあります。
最近はスーパーなどで一年中販売されていますが、元々の水菜は、路地栽培で主に鍋用の冬野菜として売られていました。約1キロある白菜くらいの大きさで、収穫後4つや8つに割って売られていたそうです。
この「昔からある水菜」は、しっかりとした歯ごたえがあります。味はあっさりしていて、特にくじらの油と合うので「はりはり鍋」には欠かせません。今でも数は多くはありませんが、この「昔からある水菜」も作られています。
さて、水菜をもっと早く収穫できたり、やわらかくて美味しいものにできないかという要望があり、平成のはじめ頃に亀岡の研究所で研究が始まりました。
どのぐらいの間隔で種を蒔くといいのか?どの時期に肥料を蒔いたらいいのか?水をやる間隔はどうか?などなど、ハウス栽培での研究開発が行われ、新しい水菜が誕生しました。
実は、水菜の種は元々からある一種類だけで、新しい水菜は色々と栽培方法を変えた結果生まれたものです。その中からできた柔らかい水菜を見て、「サラダにして普及させたらいいやん!」と思われ、採用されました。つまり、サラダ用に開発したのではなく、できたものがサラダに適していたのです。これが今では一般的な「平成になってからの水菜」です。
この新しい水菜を普及させるにあたり、ディズニーランドのホテルなどの少し高級なホテルのレストランで使ってもらうなどして、水菜は「ちょっとおしゃれなイメージ」と「サラダにという食べ方」で普及していきました。今では水菜といえば、鍋よりサラダのイメージが強いのは、このような経緯です。

ウォーキングを兼ねて鞍馬観光はいかがでしょうか?鞍馬は牛若丸が修行をした場所で、鞍馬寺は、四天王のうち北方を守護する毘沙門天が本尊で、770年に開かれたと伝わります。
叡山電車・出町柳駅から31分で鞍馬駅に到着です。観光電車の「きらら」も有名ですね。
鞍馬駅から3分ほど歩くと、鞍馬寺の山門である仁王門が現れます。
さて、ここでいきなり判断の分かれ道です。本堂の金堂(こんどう)までは山道を歩いて約1キロ。成人男性が歩いても30分かかります。そこに『おすすめ』と書かれた看板が。
『途中には、鞍馬の火祭りで有名な由岐神社や義経供養塔があったりします。昔、清少納言や牛若丸も歩いた道です。健康のためにもできるだけお歩きください。』と。
一方で、その看板の上には、「ケーブルは右」と。
私は、もちろんケーブルに乗りました。100円で本堂に向かう途中まで2分で行けるからです。ちなみに、全長200メートルほどの日本一短い鉄道です。鉄道事業法による許可を受けた鉄道としては、唯一宗教法人が運営しているケーブルカーで、1957(昭和32)年に開通しました。15分間隔で、30人程しか乗れないのでご注意ください。
ケーブルを降りると、想像していたより静かで空気が澄んでいました。気温も京都の中心部より2〜3度低いといわれています。
本堂に向かって歩くと、また看板が。『本堂までもう一息です。緑の森、鳥の声、風の香り。大自然に包まれて、心静かな安らぎのひと時をお過ごしください』と。耳を澄ましたら鳥の声が遠くから聞こえてきました。看板に勇気付けられ、さらに歩くと、165段の階段が。これを上ると、やっと本堂です。
本堂前の金剛床(こんごうしょう)という敷石は、魔法陣のようなところです。奥の院、魔王殿が、650万年前に金星から護法魔王尊が地球に降り立った場所とされているからです。
中心に立つと宇宙のパワーを授かることができるといわれるパワースポットで、ここで記念撮影している人が多かったです。
ご本尊の毘沙門天は、博物館である鞍馬山霊宝殿で見ることができます。
3階にある照明を落とした和室には、毘沙門天の立像が4体並んでいます。中でも、平安時代後期に作られた木彫の毘沙門天立像は約2メートルあり、京都を守るために眺めるように左手をかざしています。今も、窓の方向に向かって置かれています。平安時代からずっと京都を見守っているんですね。
お寺の方に話を聞いてみると、「おそらく、牛若丸が手を合わせていました。ただ、当時お寺のどこに毘沙門天があったのか分からないので確証はありませんが」と、おっしゃっていました。
鞍馬山霊宝殿は博物館ですが、この毘沙門天はガラスで仕切られたりしていないので、2メートルくらいまで近づいて見ることができます。大きな毘沙門天の表情を見ていると、20分過ぎていました。ぜひじっくり見てください。
鞍馬山をさらに先に進むと、木の根道となります。固い地盤の上を、杉の根が地表を這うように広がり、このようになったそうです。牛若丸が兵法の修行をしたとも、弁慶を翻弄した俊敏な動きはここで鍛えられたとも伝わります。
さて、ここまで来たらUターンするのをおすすめします。ここから先は道が険しくなりますし、貴船に抜ける鞍馬寺西門までは、さらに歩いて20分かかるからです。
帰りですが、本堂から仁王門までは帰りは下りなので歩いて20分。もちろんケーブルを使ってもいいですが、帰りは歩いてみてはいかがでしょう?
自然の多い場所で新鮮な空気を吸ったり、静かな場所で過ごせる鞍馬はおすすめです。
【アクセス・料金】
鞍馬寺へは、叡山電車・鞍馬駅が便利です。
鞍馬寺の愛山費(拝観料)は300円。
ケーブル乗車料は100円(片道)。
鞍馬山霊宝殿の入館料は200円です。
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