05月12日
こころのスイッチ

「慈しむ気持ち」


あした通信社

介護老人保健施設をドクターの立場から・・・濱崎憲夫さん。


 この番組で、初めて介護老人保健施設について知った、という方も多いようです。近藤さんや私も、その一人です。
病院での治療後、多くの場合は病院のケースワーカーと、患者、家族が相談して、次の居場所について決めますが、その選択肢のひとつが老人保健施設です。病院と自宅の間をつなげる役割ですが、今日は医師の立場から語ってもらいました。
大阪市住之江区にある浜崎医院の院長、ドクターの濱崎憲夫(はまさきのりお)さんは、介護老人保健施設はまさきの施設長でもあります。
 医師として治療をした後、患者が自宅に戻っても適切な介護が受けられないと症状が悪化するケースがあり、非常に残念な思いをするそうです。老健では介護を提供して、その人なりに安定した状態を維持しながら、医者として診ることができる場所だともいえます。
濱崎さんは、以前は救命救急医として働いていました。救急車で運ばれてくる患者の命を助ける現場です。生きるか死ぬか、一刻を争う壮絶な戦場ともいえるでしょう。子供の頃から憧れていた仕事に、大きなやりがいを感じていました。
でも、ある出来事が人生を変えました。救命に成功した患者と、2か月後に遭遇したときのこと。車椅子で外来に通院してきた患者、そして付き添う家族に笑顔はなく、残った後遺症や通院のたいへんさを耳にしました。
救急医として精一杯の努力をして命を救えたと、自分としては満足感がありました。でも患者に関われたのはそこまで。その後の患者の様子、日常生活を知ることはなかったのです。
 救命で助けたはいいけれど、患者はその後、後遺症との闘いがずっと続く。介護が大切になるけれど、負担は大きい、身寄りのない人もいる。実は、救命のあとが、患者も家族もすごくたいへんなんだ、と思い知らされました。
目の前の命を救う視点から、患者や家族の人生全体を考える視点へ。
問題解決のために何が必要なんだろうか?それが老健を立ち上げるきっかけとなりました。
家族に介護を押し付けないで、施設の介護で日常生活を支えた上で、医師として関わりたい。
医者としての喜びは、かつて憧れていた救急の仕事をしていたとき以上のものだそうです。