07月14日
こころのスイッチ

「路地裏を歩けば」


あした通信社

特養訪問リポート2


終の棲家。
その重要な役割を担う、特別養護老人ホーム。自宅での生活が難しくなり、基本的には要介護3以上になったとき、あるいは要介護1、2でも行政が必要と認めたときに入居できる公的な施設です。
先週は、部屋が個室、お風呂も個浴と、従来の私のイメージに比べ、はるかにプライバシーが守られている新しいタイプの特養をご紹介しましたが、今日はそんな施設を支えている考え方をご紹介します。
大阪市住之江区にある社会福祉法人 健正福祉会の特別養護老人ホーム
カサブランカを施設長の稲岡確さんに案内してもらいました。
 ここには100人以上の方が入居していますが、10人ずつがひとつのユニットとして暮らしています。皆さんの居室は個室で、トイレも洗面も個室内にある一方で、共有スペースもあります。10人ずつがゆったり過ごすリビングダイニングが、ユニットごとに設置されているのです。
  リビングダイニングのキッチンは対面型。スタッフが台所仕事をしながら、入居者の方々に目を配ります。大切にしているのは、匂い。各ユニットで炊飯をし、味噌汁を温めます。ご飯が炊ける匂い、お味噌の香り。そうした日常の匂いで、家庭的な雰囲気を作り出します。
全員が一同に集まって食事するのではなく、入居者10人と介護スタッフが、ユニットとして家族のように暮らす、という考え方に基づいています。これをユニットケアと呼ぶそうです。
 自由な時間の過ごし方も、大きな柱です。一斉に食事をスタートさせるのではなく、その人が好きな時間に食事をします。また認知症の方が徘徊する場合
も、無理にベッドにつかせるのではなく、転倒など危険がないよう見守りなが、好きなだけ歩いてもらうというのです。夜の徘徊も、話したいだけ話してもらうと、案外ベッドに戻ろうとなさるケースがあるのだとか。夜の徘徊で周囲に迷惑をかけるから、施設入居をあきらめているご家族もおられるでしょうが、こうした考え方もあるのです。
 施設ごとに、哲学は違います。ユニットケアを望むのか、違う形を望むのか。施設見学するときは、外観だけでなく、その哲学も聞いて、自分の考えと照らし合わせてみたいものです。