09月15日
こころのスイッチ

「高齢者とは」


あした通信社

介護離職  お話:松本達士さん(医療法人健正会事務長)


家族や親族の介護や看護のために、仕事をやめる「介護離職」。年間10万人もの人が介護離職に追い込まれています。政府は、介護離職ゼロを掲げてきていますが、介護離職予備軍は100万人という試算もあるのです。
 大阪市住之江区にある医療法人健正会の松本達士事務長は、介護する人たちの相談に多くのってきましたが、介護離職した後も問題はなくならないと実感しているそうです。親が倒れて、正義感や家族への愛情で仕事を辞めて介護するという、その気持ちは尊いものですが、実際のところ、親を見送り、介護生活が終わったときに、もう一度働こうとしても、再就職はたいへん困難です。また、職場の人間関係が途絶えているため、ふと取り残されているような感覚に襲われることも少なくないそうです。介護してきた人自身が今度は高齢化し、年金額が十分でないことも想定されます。
 それでも仕事を辞める人が多い背景には、残念な思い込みもあるそうです。
認知症があるから、施設に入れない。あるいは逆に認知症がないから入れない、など認知症に関して間違った理解をしているために、事前に相談する機会を失っているのです。
 たとえばグループホームは、認知症高齢者の方に対応するための施設です。それぞれの施設が具体的にどんな条件を設けているのか、正確に知ることは大切ですね。
 中には介護認定をしてもらう前に、自分の判断で仕事を辞めてしまったケースもあります。どんなサービスを介護保険で使えるのか、どんな施設に入れるのか、といった客観的情報を得れば、仕事を辞めずにすむ可能性もあります。
 会社を一時的に休むという方法もあります。介護休暇は一年に五日まで、介護休業は通算93日まで取得できます。先が見えない介護で、わずかそれだけの日数で何ができるのか、という思いもあります。その先の介護をどうするか調整する期間だといわれても、それがうまくいったという話がどれだけあるのか、という思いもあります。
 ただ、今ある制度は全部使って、仕事を辞めない選択肢はないか、考えてみる価値はありますよね。
 まずは介護認定を受ける、可能な介護サービスを知る、会社の働き方を変えられないか考える、施設入所の条件を相談してみる。離職する前にやるべきことはあります。