10月20日
こころのスイッチ

「長寿の秘訣(医者サイドからの話)」


あした通信社

健康長寿と自然環境


 今や、100才以上の方は全国で7万人を超えました。平成の30年で、その数は23倍になったのだそうです。
 勿論、医療の向上が背景にあるのでしょうが、私たちを取り巻く環境も影響しているのではないか、と最近実感した出来事がありました。
 それはネパールに旅したときのことです。
 ネパールといえば、まず思いつくのは、青い大空に、白くそびえるヒマラヤの雄大な姿。私もその光景を目にしたくて、ネパールに飛びました。ところが、国際空港のある首都カトマンズに降り立って、最初に驚いたのは、マスクをしている人の多いこと。大気汚染が深刻なのです。
 世界の大気環境を調べた、ある調査では中国やインドを超えて、ワーストとのこと。道路の舗装が進んでいないので、土埃がひどいです。周囲の木々の葉が、緑ではなく埃色に。また、この20年ほどで急速に車やバイクが増え、黒い排気ガスを出して、川の流れのように次々走る道の周辺では、私はマスクをしていても咳込み、鼻水が出て、目が痛くなりました。暮らしている方々はいかばかりかと案じます。
 ネパールでは4年前に大地震がありました。私の素人目からも、復興が十分だとはとても思えませんでした。世界遺産の寺院も、修復はまだ途上ですし、壊れているとしか見えない家屋で暮らしている人もまだ多くいます。様々なインフラが不十分なまま、経済発展を止められないという事情もあるのでしょう。
 日本も高度経済成長の時期、深刻な公害で多くの人が被害を受けました。水俣病、イタイイタイ病、ぜんそくなどで、苦しみ続けた方々。市民が声を上げ、環境問題に取り組むことで、国や企業の姿勢を変化させてきた歴史があります。
 ネパールの平均寿命は70才。日本と比べると10年以上の開きがあります。
健康長寿というと、自分の心身のことだけを考えがちですが、空気や、水、土壌など、私たちを取り巻く自然環境の健全さがあってこその健康なのだ、と改めて感じさせられた旅となりました。