2019年

9月 1日

自分が嫌なことは社員にさせない"お互い様経営"

ゲストは先週に引き続き、株式会社天彦産業の代表取締役社長・樋口友夫さん。
特殊鋼材のお仕事のお話、安倍総理が視察に来られた時のエピソード、ダイバーシティの取り組みなど盛りだくさんの先週。
今週は会社の歴史について伺います。

「明治8年創業です。
今年で145年になります。
もともとは滋賀で木板を作る時に使うノコギリ、それも前引きノコギリを作っていたんです。
当時は木材なしには家も作れない時代ですからいい仕事だったと思います。
社名は初代樋口彦三郎の"彦"
ある有名な近江商人の"天"の字で"天彦"。
読み方でいうと"あまひこ"とも読めるのですが、ノコギリが甘かったらいけないということで"天彦(てんひこ)"に。
戦後、大阪に出てきて一からのスタートを切りました。

長い歴史を持つ株式会社天彦産業。
ご苦労されたことは?
「昭和27年でした。
倒産しかけたことがあります。
3代目の父の時でした。
でもその時に滋賀の田舎の人たちが当時で100万円をくれました。
近江商人の精神かもしれないですね。
5、6年で立ち直りましたが、その間、社員の給料には手をつけず、借金して給料を払い続けました」。

人の心のつながりを感じるエピソードですね。
「リーマンショックの時も前年比7割ダウン。
社員の様子を知っていたんです。
ですが、いつもよりも少ないけれども賞与を出すと言いました。
すると入社3年目のある社員が怪訝な顔をするのです。
その社員は『なんでこんな時にボーナス出してるんですか』と言うのです。
当時の私は悩んで出した結論に対して社員のリアクションが嫌だったんでしょうね。
「社長のプライドでやってるんや」と言い返してしまった。
結果的にボーナスを出すことになるんですが、社員の素直な気持ちが嬉しかったですね」。

社員に対しての賞与は現金手渡し。
「近頃、旦那の威厳がなくなりすぎてると思うんです。
しっかりと働いて得た賞与はドンと見える形で渡してあげたい。
その頑張りに対して本人宛と家族宛に手紙も書いています」という心遣い。
社長と社員の関係性は仕事にも多々好影響をもたらしています。
「担当社員がある時に育休をとる。
そうするとその仕事をしてくれる別のスタッフがくる。
育休明けの仕事がないことに気づいたんです。
もともとの担当社員に復帰前に会社に来てもらいました。
そこで育休の3ヶ月の間に復帰した時の仕事って生まれないか相談しました。
すると優秀でしたね。
なんと特殊鋼材をネットで買えるようにしてくれた。
海外の比率が15%ぐらいだったものが45%までに引き上がったんです。
素晴らしかったですね」

その他にも子供の行事は強制的に休暇、家族に仕事ぶりを見てもらう『天晴カーニバル』では現場でバーベキュー。

そんな制度やイベントも。
"自分が嫌なことは社員にさせない"という社長の言葉のもと、社員ファーストを貫いています。
株式会社天彦産業のビジョンは?
「私の仕事の仕方は"別名お互い様経営"。
私一人での経営はありません。
気兼ねない関係で仕事をするといいものが生まれてくると思います」

いい仕事、仕事のあり方、関係性。
社長と社員の鋼のごとき固い絆から生まれてくるのです。

竹原編集長のひとこと

従業員のためにしたことが全ていい形で会社に還ってくる。
社員の力を合わせてやったほうがいい素晴らしいケースですね。