2021年

1月 3日

和装の未来を担う作り手が満足いく仕事を 

今年最初のゲストは昨年の最終週に続き、ゲストは株式会社岩佐の代表取締役・岩佐浩司さん。
年を跨いでのご出演です。

和にもようにも使えるファーマルバッグ
履きやすくデザイン性の高い草履のお話など伺いましたが、改めて会社の歴史は?
「1928年、祖父と祖母が創業した会社です。
私で三代目になります。
当時は着物を着て、雪駄を履いてという時代。
創業時は鼻緒メーカーでした。
戦後に日本人の生活も洋服を着るようになって、着物は日本人の衣装として変わってきました。
先代の父母の時代はフォーマルの商品を作っていましたね。
結婚式は着物で結納も一般的な時代でしたが、私の代になってからはフォーマルは売れない時代に。
カジュアル着物にシフトしたのが私の代になります」。

このカジュアルにシフトするきっかけはあったのでしょうか?
「和の良さを後押ししてくれたのはインバウンドもあると思います。
以前、銀座のお店のお手伝いに行ったことがあるのですが、そこの社員さんは海外にいた経験があったそうなんです。
海外から見ると日本の良さに気づくとおっしゃっていました。
和装は今の若い子たちが魅力あるように見えない部分があるかもしれません。
逆にいうと私たちが魅力あるものとして見せることが出来ていないのかも。
いくら品物が良くても売れないものは売れないんです。
情報の伝わり方、伝え方が大切なんだと思いますね。
メーカー社長にしてはあるまじき発言ですが(笑)。
商品を作ってそれを写真や動画にして伝え方まで気にする時代なんだと思います」。

その伝え方はどんなことをされているのでしょうか?
「コロナウイルスの感染拡大でイベントが中止になることが多かったです。
昨年の春から夏までとにかく大変でした。
今までやったことがなかったYouTuberとのコラボなどやったことがないできることをやりましたね。
テレビ、ラジオ、インターネット、SNSでの販売。
アイテムは伝統的、売り方は今。
タッチポイントが変わってきているからこそ色んな手を使うべきだと思います。
実際にインターネットの販売は携帯電話からのアクセスが7割。
若い世代は写真でどのような商品がいいのか判断できるセンサーがあるんだと思いますね」。

先代から現社長へ何かアドバイスなどあったことは?
「私にバトンが渡って10数年間、仕事の話をしたことがないんですよ。
父から何も言われたことがないんです。
ありがたいことに好きなようにやらせてもらいました。
きっと何か言いたいことがあったはずなんです。
それでも何も言わずに見守ってくれていましたね。
仕事をする中で技術の伝承がうまくいかないことがありました。
悩んで考えて、もしかするとこの環境がいけないのかもしれないと思ってキレイな工房を変えてイメージから変えました。
人的な不安はありましたが、設備投資での不安はなかったですね。
何かで取り返せばいいという考えです。
2年前に新しいビルと建てて、すぐに5階建に建て替えました。
周りからは"インバンドのマンションにするんだ"と言われたこともありましたね(笑)。
工房と店舗を作るとなると前のビルじゃスペースが足らない。
新しいものを作る段階で先のビジョンを描きながら作っていきました」。

これからのビジョンはどう描いていらっしゃいますか?
「私のような伝統的な商品を扱う業界でも変えようと思ったら変えることができる。
自分の長所を作り上げると必ず変わることができると思います。
どこに集中投下していくかなんですよね。
その中で作り手が成長してきていて、作り手と消費者が直接繋がっていけるようなプラットフォームを作っていきたいです。
作り手が"この仕事をしていてよかった"と思えるような仕事を作っていきたいですね」。

伝統を守りながら革新を続ける。
株式会社岩佐の仕事で和装はもっと面白くなりそうです。

竹原編集長のひとこと

即断即決の仕事の速さ、決断力が革命につながる。
これから日本人がちゃんと和装を楽しむ時代が来てほしいですね。