2024年

4月 7日

当事者に寄り添うインクルーシブデザインのキッズチェア

今週のゲストは株式会社Haluの代表取締役 松本友理さんです。
池田泉州銀行の2023年度ニュービジネス助成金の大賞を受賞されています。
まずはどんなお仕事をされているか伺っていきましょう。
「『IKOU』という子ども向けのブランドの運営をしています。
自分たちでプロダクトを開発して、それを実際に販売しています。
インクルーシブブランドと位置付けて、障がいのある子もない子も共に使えるということが大きな特徴になっています。
ブランド名は"外に行こう"と家族のお出かけの背中を押すような気持ちを込めて名付けました」。

改めてインクルーシブデザインとは?
「ユニバーサルデザインという言葉の方がよく聞いたことがあるかと思うんですが、どっちも目指すところとしては"みんなが使いやすいものを作ろう"というところで同じなんです。
ユニバーサルデザインというのは、最初からみんなにとって使いやすいものをデザイナーが主導で作っていきます。
それに対して、インクルーシブデザインというのは障がい者や高齢者がそれまで見過ごされがちだったマイノリティのニーズというものを起点に、そこからみんなにとって価値あるイノベーションを当事者と共に生み出していくアプローチになっています。
結果としてみんなが一緒に使えるものがいいよねっていう思いは一緒ですが、当事者の人も巻き込んで一緒に作っていくっていうのが、そのインクルーシブデザインのすごく特徴的な部分ですね。
私たちは、その障がいのあるお子さんとそのご家族の皆さんたちの意見を聞きながら、一緒にものを作っています」。

実際に商品をスタジオにお持ちいただきました。
一見すると小さな黒い四角い箱。これを開けると...。
「3.2kgの重さで女性でも手軽に持ち運べるキッズチェアになります。
7ヶ月くらいの、座れるようになったばかりの赤ちゃんから、最大で身長が97cm、体重16kgまで使っていただけます。
障がいのある子もない子も一緒に使えて、持ち運べる機能になっています」。
運びもスムーズ、あっという間に椅子になりました。
「インクルーシブデザインは障がいのある子とその家族の体験を元に作っていますが、私もですね、息子が脳性麻痺という障がいを持っています。
6ヶ月くらいまで1人で座れなくって、座らせようとしても倒れてしまったり。
そういう状態が成長しても続いてしまう。
そうすると市販のキッズチェアに座れないんですよね。
外出先でレストランなどにキッズチェアがあるお店も増えてきてはいますが、既存のものには座れないので、ベビーカーとか車椅子で入れるお店しか行けなくなる。
そこがすごく課題に感じていまして。
でもこれさえ持っていればどこにでも行けます。
床に置いても使えますし、椅子の上にもベルトで固定して安全に使えます。
レストランをはじめ、スポーツ観戦や劇場など色んな場所で使っていただけます。
家族の行動範囲が広がればいいなという思いです」。

機能的で当事者に寄り添った製品ですね。
「家族みんなで同じ目線でテーブルを囲めることが嬉しいというお声もいただいています。
障がいのある子も座るためには、やっぱり姿勢が安定するっていうのがすごく大事なんです。
背もたれと座面が90度でも骨盤が安定して滑らない。
シートと背もたれの角度を保ったままリクライニングできます。
障がいのあるお子様だけじゃなくて、赤ちゃんが離乳食を食べる時とかもすごく食べやすい姿勢で保てます」

このポータブルチェアがあると、みんながハッピーになりそうですね。
「実は子どもが外出先でも落ち着いて座ってくれるって、本当に家族みんながすごくハッピーになるんです。
元々は障がいのある子どもの課題を基点に作ったんですけども、結果としてお子様連れのご家族みんなの外出先での座ることにまつわる課題を解決するような商品になりました」。

見た目がスタイリッシュで機能的、男性好みもする感じです。
「そうなんです。
実は展示会ではお父さんにすごく興味を持っていただけることがたくさんあります。
2022年の4月に発売をしまして、今、『IKOU』のオンラインショップで購入していただくことができます。
価格は税込みで4万9500円。
ベビーカー等でも取られているSGマークっていう認証も取得しています」。

他にも商品を展開されているとか。
「他に、キッズウェア、『IKOU』のビブと呼んでいる、よだれかけ。
機能性と、デザイン性を両立するっていうところにこだわって作っています。
障がい児のニーズを起点に、あらゆる子育て中のご家族にとって嬉しいものを作る。
これが共通コンセプトです」。

第12回京都女性企業家賞、京都府知事賞最優秀賞など多くの受賞歴も。
「日本の社会においてどんどん高齢化も進んでいきます。
マイノリティのニーズを起点として、インクルーシブデザインの考え方が世の中に必要だと皆さんが共感してくださっているのかなと感じています」。

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

時代が求めたインクルーシブデザイン。
これから世界へと羽ばたきそうな素晴らしいプロダクトですね!