2024年

8月18日

安全担保は見に行くこと クランプ国産第1号

先週に引き続き、ゲストはイーグルクランプ株式会社の代表取締役社長 津山信治さん。
今週は会社の歴史から伺っていきましょう。
「私の祖父、津山由蔵が設立した会社です。
この会社を作る前から造船所などに工具や溶接用材料などの販売店を営んでおりました。
造船所に出入りしている時に『つりクランプ』というものを見たのだそうです。
この当時あったものは外国製でしたが、これから絶対に必要になると思ったらしいんですよ。
これをなんとか日本で作りたいということで、それまでの仕事を続けつつ、新しく大和工機株式会社を立ち上げたのが1962年です。

それまでクランプは一般的なものではなかったのでしょうか?
製造も苦労されたのでは?
「造船所でも数個しかないような特殊なものだったらしいです。
これを日本で作ればもっと広まるだろうと思ったのがきっかけと聞いております。
製造には当然、資金が要りますので、それまでの仕事は続けながらクランプを研究開発、試作をして。
4年ぐらいかけてようやく国産1号機ができたそうです」。

国産1号機を生産。
そして社名も変更。
「最初は大和工機株式会社。
出来上がったクランプを造船所などに持っていってお客様に使っていただいていました。
商品名が『イーグルクランプ』なものですから、お客様の元に伺っても"イーグルクランプさんが来た"と。
"うちは大和工機です"って言ってたそうなんですけど(笑)。
そんなことが重なって当時、社長が、もう社名も『イーグルクランプ』にしてしまえということで社名が変わりました。
商品名が社名に。
自分の身内ですけれどもセンスが良かったのかなと思いますね。
当時、横文字の社名は少なかったと思います」。

現在は3代目の社長でいらっしゃいます。
会社の転機というと?
「クランプがようやく完成して、で、社名まで変えたのがひとつの転機。
お客様におすすめして使っていただくようになると、今度は事故の心配が出てきました。
初代は非常に不安に思ったらしく色々と安全策を考えました。
そこで思いついたのが"見に行けばいい"ということ。
お客様のところまで見に行って点検する。
要は、自分が安心していたいわけです。
点検して大丈夫だとお客さんにも大丈夫と言うことができる。
先週お話しした点検制度はそこから始まったんです。
ちょうど高度成長期では非常にお仕事が多い時代でした。
点検をして安全を担保することがお客様にも受け入れられたのだと思います」。

もうひとつ転機があったのだとか。
「造船をメインでやっておりましたが、ある時、建設会社さんからお声掛けいただきました。
建設に特化した使いやすいクランプを開発してほしいという注文でした。
色々とそこの会社と情報交換をして、共同開発という形で『ねじ式クランプ』を開発しました。
それまでクランプというのは、挟んで引っ張る。
このねじ式というのは、"シャコ万"という、万力の要領でネジの力で締め付けていく。
例えば机にスタンドを取り付ける時に机の板を上下から締める感じ。
これを建設用に作りますと現場で受け入れてくださいました。
おかげで市場が広がりましたね」。

受け入れられたポイントはどんなところでしょう。
「従来のクランプは、使い方を間違えると外れてしまうこともあります。
ですから実際に使う方に操作方法をお伝えします。
ただ、建設現場っていうところは非常に多くの作業員の方が出入りします。
今日、初めてこの現場に来た、という方もおられます。
そんな中、ネジを閉めればいいという操作方法がわかりやすかったのだと思います」。

津山社長は幼い頃から会社を継ぐおつもりだったのでしょうか?
「私が子どもの頃は、まだ会社も今ほど人数もいませんでした。
家の倉庫にも商品の在庫が置いてあったりして。
クランプ自体はよく知っていましたが、将来はこの会社を継ぐ、という気持ちはなかったですね。
大学を卒業した時には色んな仕事をしたい気持ちがありました。
結局、現在の仕事とは関係がないコンピューター会社にプログラマーとして9年半ほど勤めていました。
やっているうちに面白くなってきましてね。
どんどんと時間が過ぎていって9年過ぎた辺りで当時社長の父親が"もういい加減に帰ってこい"と。
そこから入社になります」。

コンピューターのプログラマーからものづくりの会社へ。
「まずは現場の点検からでした。
前職は大企業でしたので、えらいところに来てしまったなというのが正直なところでした(笑)。
それまでの会社が組織的だったことに対して、中小企業は全員が色んなことをやるんだなとも思いましたね。
それはそれで面白いなと思いました。
現場を見ながら、会社でやりたいことを考えていましたね」。

現在はデジタル社会。
前職の経験が活きたのでは?
「現場に10年以上いたので、コンピューターのことは変わってしまいましたね。
小さくなって、こんなに性能が高い。
でも基本的な考え方は分かっていたので、コンピューターなど機材を導入する時には、ある程度参考にはなりました。
昔の自分の知識は全く役に立ちませんでしたね(笑)。
新しいものに対して拒絶はなくて、"面白いな、やってみよう"という感覚。
専門家は社内で育成しましたが、私が元々コンピューターの会社にいてよかったなと思いますね」。

未来へのビジョンをお聞かせください。
「クランプを作る、そして、それを安全に使っていただく。
これが1番なんです。
ただ、今から作業をする人がどんどん増えていくとは思えませんし、日本も人口が減っていきます。
そういう意味では市場をもっと広げたいという思いがあります。
今の仕事をしっかり守りながら新しい市場に出ていきたい。
初代のように2本立てで、クランプとは違うもので安全というものにこだわったものを作って、もっと広い市場に持っていきたいということ。
それから今、日本で使われているクランプというものを他の国にも安全をアピールしながら使っていただきたいということ。
これが今の1番の目標ですね」。

イーグルクランプは安全を旗印に世界へ羽ばたく。

竹原編集長のひとこと

今では当たり前の安全性を高めることをいち早くやっておられる。
安全は世界で求められる素晴らしい技術の積み重ねです。
世界の造船所、建設現場が待っていますよ!