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8月25日
今週のゲストは、一般財団法人未来医療推進機構理事長、大阪警察病院院長、大阪大学大学院医学系研究科特任教授の澤 芳樹さんです。
多くの肩書をお持ちの澤先生。
プロフィールを伺っていきましょう。
「私は大学時代、あまり勉強してなくてですね(笑)。
卒業する頃に、このままだと人を助けることはできないなと。
そこで1番厳しい大阪大学第一外科に入って、しかも命に直結する心臓血管外科を選んだんですね。
その中で多くの経験をしながら1人でも多くの命を救いたいと思いました。
どなたも亡くなられる時、心臓が止まります。
その心臓を救う、命を救う医療の典型が心臓移植です。
心臓移植については 200例以上、関わらせていただきました。
3年前にリタイアして、今は大阪警察病院というところにいます。
心不全の方をどうやって救うかというのは1つのライフワークになっていますね」。
具体的な医療としてどんなことをされているのでしょうか。
「心臓移植や人工心臓治療では助からない人もたくさんおられます。
こういう人を助けるために 何がいいか、いい作戦はないかということで始めたのが再生医療でした。
ちょうどそういうことをやっている頃に山中伸弥先生と知り合いまして、2008年から共同研究を始めました。
そうすると、2012年に山中先生がノーベル賞を受賞。
共同研究をしている人のノーベル賞受賞で大変喜びましたし、そこからさらにエンジンが掛かりましたね。
これまで心臓移植をはじめ、年間1000件ぐらい手術などに携わりながらも、助からない命をどうやって助けるかっていうことにもずっと自分の人生をかけてきました。
そしてついに再生医療の登場。
iPS細胞を使って人を治す治験を終了して自宅で待機されていた8人の方が社会復帰されました。
世界の人を助けたいということが私の1番やるべきこと。
やっぱり人生は1回しかないですから。
多分、私に与えられた人生のミッションはそれかなと思って、ずっと走り続けているんです。
一般財団法人未来医療推進機構とは?
「2018年頃から大阪府を中心に新しい医療を実用化していく取り組みが始まりました。
私はその道を歩んできたんですが、日本の研究は優れているものの、実用化のところでなかなか進んでいないことがあります。
新しい技術やお薬、手術室を見ると9割ぐらいが海外製品なんですね。
日本の医療レベルは世界最高峰なんですけど開発が進んでいない。
大学の中で研究しても、それが世の中に出て産業につながって製品につながることでたくさんの人を救うことができると。
私たちのiPS治療に準えると今までわずか8人しか助けられていないんですね。
これを世界中の人にと思ったら大阪大学の枠ではできません。
世界中の人を助けるための製品を作って、世界の病院で使われるようになって人の命が助かる。
そのためには産業化を推進し、社会実装していくということが大事だと思います。
そういう現場が元々ないものですから、呼びかけたところ、たくさんの企業の方に賛同いただいて、2019年から産学官連携で一般財団法人未来医療推進機構が成り立ったわけです」。
場所は大阪・中之島。
「この中之島という土地には元々、大阪大学医学部がありました。
18歳の時に入学して以来、20年ぐらいあの場所で勉強もし、医者として最初のステップを踏むわけです。
ところが30年ぐらい前に吹田の方に大阪大学医学部は移転した後、空き地になっていたんです。
その土地から改めて、新しい時代の医療、未来医療を発信するっていうのはすごく意義があると思っています。
6月末に一般財団法人未来医療推進機構というのが運営母体の『未来医療国際拠点Nakanoshima Qross(中之島クロス)』が出来上がりました。
クロスの「Q」、本来は「C」なんですけどQualityとかですね、Questionなど色んな意味があります。
ここにはいろんな企業、そして医療機関などが95%入居しています。
外観は2つの建物のように見えますけど、1つの建物なんですね。
低い方が病院、メディカル棟、高い方が 16階で研究開発をする。
それが"ひとつ屋根の下"というのが我々のキャッチフレーズ。
研究したものがすぐ使ってもらえる。
これは研究者にとってモチベーションがすごく上がるんです。
でも無闇矢鱈に投与もできません。
そこにですね、PMDAという行政の認可システムもあります。
色んな医薬品を審査して承認する期間です。
まさにワンストップで最後まで。
さらに山中先生のiPS財団が入っています。
そもそものiPS細胞の1番の特徴は、自分の細胞から生まれ、出来るということ。
山中先生がいて、iPS細胞が供給される、もしくは自分のiPS細胞を作ってもらえる。
iPS細胞が樹立された時に将来の医学が変わるということをいわれながら、なかなか出来なかったことが、いよいよ中之島クロスで具体化されます極めてここの施設にとってシンボリックです」。
中之島クロスではどんな医療をされるのでしょうか。
「ネーミングの中に未来医療という言葉を使っています。
新しい医療をどのように開発していくのか。
それにはリスクも伴ったりします。
客観的に科学的に証明しながら築いていきましょう、と。
その中の1丁目1番地は、再生医療、それ以外にもAI医療、ゲノム医療、そしてロボット治療など、未来の医療を変えていくような医療を普及させていく。
そういう風に考えたのがネーミングです。
今、私が1番ここでやるべきと思っていることはスタートアップのインキュベーションなんですね。
大学で、ある研究が開発できました、ところが、それがすぐ製品化にならない。
日本でこういったスタートアップ会社をどうやって育てていくかという仕組みがまだあまり充実してないんです。
いいベンチャーであればすぐに海外に発信していこうと思っています。
ベンチャーを育てるフロアが16フロア中、5フロアありまして、100社以上のベンチャーを育てようと。
それをもう海外と直結させてやっていこうという、こういう新しいベンチャーインキュベーションの仕組みを作っていこうと思っています。
オーストラリアなど16カ国以上の方々からオファーをいただいて、そこに対して説明をして。
ビジネス契約を結ぶという流れになってきています。
海外の皆さんも、ものすごくここに注目してくれてるんです。
日本より海外から手応えと熱い視線を感じていますね」。
日本のベンチャーが世界へ。
「この流れは今までなかったと思いますので、うまく調和してコーディネートしていきたいですね。
日本からアウトバウンド。
海外からのインバウンド。
両方が繋がって日本発のベンチャーがだんだん育っていって海外に発信していけたら、新しい医療産業がどんどん生まれて発展すると思います。
池田泉州銀行さんにも大変お世話になっています。
サポートしていただいて、おかげさまで今、だいぶ安定してきています」。
これまでの歴史は次週に続く...。
産学官連携で大きなうねりを生み出しておられます。
お話いただいている未来医療が目の前、いや、もう大阪で始まっています。
ワクワクしますね!