2025年

6月22日

中小企業とタッグで光オンデマンドを世界へ

先週に引き続き、ゲストは、光オンデマンドケミカル株式会社の代表取締役 津田明彦さんです。

池田泉州銀行の2022年度ニュービジネス助成金オープンイノベーション賞、2024年度のイノベーション研究開発助成金大賞も受賞されています。
「起業する1年ほど前で、起業するかどうかは家族に話すこともできない状態でした(笑)。
まだ悩んでいた状況の時に採択していただいて、その時の名称が"光オンデマンド合成法によるポリマーや医薬品原料の安全で安価なエコ生産システムの事業化"。
その後、デロイトトーマツさんと池田泉州銀行さんによるメンタリングを合計5〜6回受け、様々な話を聞き、コメントをいただきました。
それで起業の決断と、その準備ができました」。

創業自体は最近ということなんでしょうか?
「ちょうど1年ですね。
私自身は研究者でやって来たわけですが、研究を役に立てる時に本当に大学のポジションが必要なのかどうかですね。
自分の目的に進んでいるだけの話であって、その目的に向かってこのポジションが必要なのであれば続けますし、必要でなければ違う方向を目指して違う職種を選ぶことになります。
特に大学にこだわっていることはありません」。

大阪の出身。
大学は信州大学の工学部へ。
「信州大学は憧れがあったんですよ。
私が高校生の時ぐらいまで時代的に環境が意識されてなくて、ドブ川が流れていたり、結構汚いところも多かったかなと思うんですね。
そんなところに住んでいると修学旅行で行った信州や白馬あたりが綺麗だと思いましたね。
大学生活を送れたらいいなと思っていまして。
幸運にも合格させていただきまして、信州大学に進学することになりました。
信州大学が"光ものづくり"の原点ですね。
ここで学んだことがすごく大きかったと思うんです。
大学って黒板の前に座って、色んな座学などの授業を聞いていてもあんまり面白くないんですよね。
正直私も授業をしていて先生としてもちょっと...思うことがあったりします。
授業で学ぶこと以外に信州大学っていうのは、やっぱり環境です。
美しい環境の中で生活できたことがすごく大きかったですね。
とにかく湖が青い。
流れている川が青い。
風景として自然に山に雪が積もっている。
空気が綺麗、空が澄んでいてこの美しさは何だ?
大阪との違いを感じましたね。
若い時にそういった環境に住んで学べたという事がすごく大きかったですね。
自分が自然環境を大切にする研究者になりたいと思えたのはこういった環境だからこそです」。

その考えや思いの原点である自然環境。
それがSDGsの発想、研究にも繋がっています。
「その当時は環境に対する意識が本当に低かったですね。
研究を始めた2010年ぐらいの時もまだそんなに高くなかったように思います。
最近本当に地球沸騰化と云われるぐらい40度を超えるような気温になって、大変な時代になってきていると思うんですね。
あと20年後生きてられるのかな...とシリアスに学生が言うんですよ。
それを体感しているっていうことですよね。
おかしくなってきているのが分かる。
危機感を感じるようになって、社会も動き始めていて、環境に対する動きがあって、我々の研究にもようやく日が当たるようになってきたっていうことなんですよね」。

まさにこの時代が求めた研究ですね。
「SDGsでいきますと、広い意味で捉えるかもしれませんが、下水、海水、空気から化学品を作るというところで、公共性が高くて経済性も高い。
SDGs17のうち13項目に当てはまるんです。
地球環境に優しい研究を目指してやって来ましたが、最初5年ぐらいは全然相手にもされなかった時が続いたんです。
しかし、段々と社会の環境意識が高まるに従って、我々の研究に注目いただけるようになってきましたね」。

注目される中でお問い合わせも多いのでは?
「大手さんから本当にたくさんコンタクトをいただくようになりました。
これまでの研究の背景から大手さんと組んで研究開発を行ってきましたが、大学研究室との研究にはスケール面でのミスマッチがありました。
大手企業は工業生産規模が大きく、大学研究室はせいぜいkg単位の生産規模です。
このスケールギャップを企業が埋めてくれれば発展しますが、そうでなければ採用されません。
コストの問題もあります。
複数の大手企業と5年ほど取り組みましたが、事業化に至らないと判断しまして、自分たちの会社で小さなスケールでモノを作って売ることを目指してスタートアップを立ち上げました。
小さな規模でモノを作り売るにはパートナーが変わってきます。
中小企業とのパートナーシップが重要になります。
中小企業の皆さんはアクティブに自分事のように動いてくださいます。
連携や人間同士の付き合いが加速して一緒に仕事をしていて楽しいです。
大手企業よりも中小企業とパートナーとしてやっていきたいと思っています」。

未来へのビジョンを教えてください。
「うんちから医薬品やポリマーを作るビジネスを社会に定着させることです。
世界の下水処理場を化学品工場にしたい、宝を見出す工場にしたいと考えています。
神戸大学で経済産業省の補助金をもとに『KOBE光ものづくりオープンイノベーション拠点』が整備されました。
この拠点を中心に関西の化学品製造業を盛り上げてお世話になった皆様への恩返しをしたいです。
この拠点を創る目標は達成したので、次は阪神光りものづくり地域を形成したいと考えています。
大学のスタートアップは敷居が高いと思われがちですが、気軽にお声がけください」。

竹原編集長のひとこと

中小企業のフットワークの軽さ、柔軟さと組んでものづくりをされています。
関西の中小企業の力、光の力と研究で世界は羽ばたいてください!