2025年

7月27日

環境にも配慮 世界で導入されるスパイラル式熱交換器

今週のゲストは株式会社クロセの代表取締役社長 黒瀬慶昭さんです。
まずは事業内容から伺っていきましょう。

「ひと言で言うと金属加工の製造業です。
熱交換器や圧力容器といった産業向けの機器の設計製造販売を一貫して行っているメーカーで、その中でも『スパイラル式熱交換器』という特殊な熱交換器を日本で唯一作っている会社です。
お使いいただいているのは主に化学会社ですね。
一番イメージしやすいのはインスタントラーメンのフライ麺です。
連続的に油で麺を揚げていくのですが蒸気で油を温めています。
蒸気の熱を食用油に移すための熱交換器として使われています。
昔はガスで温めていましたが、環境問題や省エネの観点から効率が上がるので蒸気を使うようになりました。
油の温度は160度ほどになりますね。
ほとんどの食品会社の中、油で揚げているものは熱交換器を使って蒸気でやっているケースが多いです。
CO2削減にも効果があります」。

他にも使われているところがあるのだとか。
「『スパイラル式熱交換器』が使われているところは下水処理場。
下水の汚いものを綺麗に処理する過程で微生物が処理します。
微生物も生き物なので温度が下がると活動が鈍くなり、熱すぎると死んでしまいます。
処理や時間削減、温度管理のためにスパイラル式熱交換器が採用されています。
食品会社では蒸気を使いましたが下水処理場では冷やすことが多いです。
夏場は温度が上がって微生物が死んでしまうので、水を循環させて冷やしています。
メタンガス発電でも使われています。
メタン菌がメタンガスを排出する際に、熱交換器で温めたり冷やしたりします。
微生物によって特徴があるので我々の熱交換器が採用されています」。

スタジオに『スパイラル式熱交換器』の模型をお持ちいただきました。
「実際はかなり大きいですね。
大きいサイズは2m×2m、20tクラスもあります。
スパイラル式なので文字通り螺旋的なイメージですが、外側はカバーを閉めると全く分かりません。
中はぐるぐる渦巻き状になっています。
ここに水や気体が通ります。
お客様からの要望で温度や量に合わせてサイズを設計しています」。

この製品自体はどんな歴史を持っているのでしょうか?
「スウェーデンで技術開発されたものを技術導入したのが1961年。
そこから64年間作っています。
日本の中で技術改良してラインナップを揃えてきました。
2000年前後ぐらいから急速に普及してきましたね。
色んなところで人手不足の問題の中、この製品は低メンテナンスという点で置き換えが進むと思います。
お客様に対して、熱回収という意味でもスパイラル式を採用いただいています。
省エネにもなり、脱炭素にも寄与するかなと。
コスト的にも環境にも良いんだったら少しぐらいお金がかかっても、今後のことを考えてご検討いただきたいですね」。

海外にも展開されています。
「アメリカ、中国、韓国、東南アジア、ヨーロッパにも輸出しています。
海外はライバル企業が多いです。
お客様の困りごとに対してどう向き合えるのか。
我々は、この温度のこの流体を温めたいんだという問題にフォーカスしまして、例えば広げましょうかとか、ノズルをこうしましょうかという最適な形状にできます。
社で考えて提案して流れやすいように詰まりにくいように、お客様のご希望を叶えるためにシフトしていきたいと思っています」。

MADE inクロセはどう広がっていきそうですか?
「まだまだだとは思っているんですけれど、これから更に磨き上げてお客様に寄り添って、最適な熱交換器を作れたらと思います。
他の熱交換器で失敗されている会社様もいらっしゃいます。
我々の熱交換器は結構ニッチなので、なかなか名前が知られていないですけど、難しい流体でもいけそうだっていうのをイメージしてもらえれば嬉しいです。
納品したら、そんなにアフターケアが大変じゃないですので皆さんも楽です。
ランニングコストはメンテがかからないっていうところで、大手さんもご採用いただいています。
難しい流体があればお声がけいただければと思います」。

実際に導入された会社から電気代が安くなったなどのお声はあるのですか?
「実はあります。
某会社さんですが他の熱交換器だとメンテナンスが毎月必要だったのが、クロセのスパイラルに変えた後、何もメンテしなくていいと。
勝手に動いてくれている、と。
見に行ったところ何もなってなかったんですよね。
ずっと流れてる状態でした。
我々の製品の構造はワンパスしかないので、そこを流れるしかない。
だから詰まりに強いっていうところを改めて認識した次第です。
オーストラリアのお客様でも他のスパイラルメーカーの熱交換器を使ったけど詰まるとのお声。
我々の営業も技術も含めて打ち合わせさせていただいて、提案したところ1年後に"すごく良い""詰まってない"というお礼のメールをいただきました」。

社長をはじめ、会社の皆さんがお客様に対するメンテナンスや取り組みを考えておられるのでしょうか。
「お客様に寄り添う姿勢があったのかなと思っています。
私自身もそうやって育ってきましたしお客様の困りごとを解消していくっていうところが我々の生きる所かなと思っています。
自分たちでも温室効果ガスの排出を2030年までに46%削減するという、サイエンスベースターゲットっていう国際認証に昨年取り組みまして取得できることになりました。
それに向けて我々も今、行動していまして、今日着ているシャツ。
これも従業員がデザインを考えてくれたんですけど、クールビズのひとつとして作成しました」。

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

クロセさんの『スパイラル式熱交換器』はこれから世界のスタンダードになりそうですね!