2025年

12月28日

冶金の技は金属熱加工から医療機器開発まで

今週のゲストは大阪冶金興業株式会社の代表取締役 寺内俊太郎さんです。
社名に"冶金(やきん)"とあります。
「聞き馴染みがないかもしれませんね。
"冶金"とは地球資源を人間が豊かに使えるための材料として金属材料を取り出すというところが始まりです。
取り出された金属はそのままでは使い物になりません。
鍛造して強度をあげたり、機械加工しやすいようプレスをかけたり。
取り出した金属を使いやすいように色んな形に加工して、皆さんのお手元に届けるというのが"冶金学"と云います。
大学の工学部には冶金学がありました。
現在は材料工学と云ったりしますね。
冶金学を使っている大学っていうのは国立大学の一部分くらいしか残っていません。
冶金学の代表的なものは刀剣。
これは玉鋼を製錬して鍛造します。
打って形ができたものに対してはまだまだ切れ味が悪いので、焼き入れという熱加工をします。
これが我々の仕事の部分なんですね」。

独自技術をお持ちです。
「Hi-NiTo®(ハイナイト)処理というものがあります。
材料を焼き入れたりしても硬くできないものがあります。
だからその表面に窒素やカーボンなどの耐摩耗性の化合物を作ってやる。
例えばベアリングのように摩耗が激しいものにするといいですね。
もう1つはMIM(ミム)技術。
メタル・インジェクション・モールディング。
これまではお客さんからお預かりした機械加工されたものを熱処理する加工業。
しかし、これは金属を粉末にしてプラスチックと混ぜて、プラスチックと同じように金型の中で成形します。
プラスチックだったら流動性があるので型に入れるとパッとできますよね。
それと同じように作って後でプラスチックだけを抜いて金属だけで固められる技術です。
一発の金型でポンっと作っちゃうんですよ」。

金属をプラスチックのように成形、すごい技術です。
「ただ1つ問題はプラスチックを抜きますと収縮することです。
図面よりも小さくなるんですよ。
あらかじめ大きく作っておいて、できた時に図面通りにする必要があります。
材料に熱加工をするというのは我々の力です。
他にも金属での3Dプリンター事業もあります。
これは20年前に東北大学の先生が開発された技術なんですよ。
ところが当時の日本人は知りませんで、10年前に日本でそれを導入したんです。
その元々の技術は日本で開発後、アメリカやヨーロッパに渡って、そこから改めて日本人が見つけて取り込んだ技術なんです。
3Dプリンターというのは金属の粉末を電子ビームで、あるいはレーザーで焼いて、積層していきます。
ところが3Dというのは、いわゆる"鋳物"なんです。
溶かして作った金属は強度として弱いんですね。
だから元の材料の強さを出すために熱加工が必要となってきます。
加工業から製造業、そして商品を販売。
この3つの流れの中に熱加工があります」。

金属3Dプリンターではどういうものを作られるのでしょう?
「最初に商品化できたのが医療機器。
椎間板にいれるものを作りました。
チタンを材料にして作ります。
元々はチタンで型を作っていました。
その骨に代わるものを先ほどのMIM技術でスポンジ状のものを作って、骨をそこに入れるという形に。
その次は、そのもの自身を全部3Dで作るようになりました。
自骨を何とか作ることができないかということでMIM技術を使って作りました」。

大阪関西万博にも出展されたそうですね。
「『大阪ヘルスケアパビリオン リボーンチャレンジエリア』で2箇所、出展しました。
1つは関西大学さん。
金属加熱技術で形にしたルビーと3Dで作った新しい合金。
もう1つ、大阪商工会さんの方は人工骨です。
まず天然のルビーと同じ環境で作った人工のルビーです。
科学的に分析すればルビーと同じ構造を持っています。
新時代の茶道具として人工ルビーの茶道具を作りました。
ライトを当てると透光性があります。
卵形のルビーも作りました。
これはおよそ50カ国の関係者の方々にお渡ししました」。

そして人工骨も。
「人間の寿命が伸びていますからね。
人生100年の時代は途中で部品を入れ替えなければいけないんんじゃないか、と。
そういう発想ですね。
今、体の色々なところをチタンで作ることを考えているんです。
最初は椎間板、顎、そして膝。
入れ歯もそうですね。
3Dプリンターで割と簡単にできます。
人ぞれぞれでサイズが違いますので、患者さんの骨をレントゲンで撮ってオーダーメイドで3Dに。
2022年から始まって、これまでで年間300人ぐらいの方にご利用いただいています」。

会社の歴史は次週に続く...。

竹原編集長のひとこと

古くからある冶金という技術であり工学。
この冶金が私たちの暮らしや体まで助けてくれる時代になりました。
私たちを未来へ導いてくれる技術ですね。