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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2021年4月10日 放送分】
【2021年4月3日 放送分】
【2021年3月27日 放送分】
【2021年3月20日 放送分】
【2021年3月13日 放送分】
【2021年3月6日 放送分】
【2021年2月27日 放送分】
【2021年2月20日 放送分】
【2021年2月13日 放送分】
【2021年2月6日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年4月10日 放送分】
2021年4月10日
【巻】…18・4077

【歌】…わが背子が古き垣内(かきつ)の桜花 いまだ含(ふふ)めり 一目見に来(こ)ね

【訳】…あなたの古い家の垣内の桜の花。その桜の花はつぼみのままです、一目見に来て下さいな
【解】…背子は、女性が男性を呼ぶ呼び方。垣内は家を囲む垣根の内側のことです。その垣内の庭の西北隅には桜の樹が植えてあり、つぼみをつけている様子。歌の作者である女性は「一目見に来ね」と男性に呼びかけています。「古き垣内」となっているのは、この男性が、かつてはこの家に住んでいたものの、歌が詠まれた時には居を移していたからです。男性がなぜ家を出たのかは分かりませんが、女性は、久しぶりにこの家に来ませんかと誘っているのです。花が美しく咲いているから来ませんかと誘うのはよくありますが、つぼみの段階で誘うのは珍しいケース。早く伝えておいた方が、家に来やすくなると思ったのか、女性が自分自身を「つぼみ」とかけて表現しているのか・・その理由もはっきりしませんが、こういったことをあれこれと想像するのも歌の楽しみのひとつと言えるでしょう。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年4月3日 放送分】
2021年4月3日
【巻】…10・1870

【歌】…春雨はいたくな降りそ 桜花いまだ見なくに散らまく惜しも

【訳】…春雨はたいそう降ってくれるなよ、桜の花をまだ見ないのに散ってしまうのが惜しいから

【解】…桜の花は、もちろん最盛期が一番美しいでしょうが、満開の時に必ず見られるとは限りません。見ようと思っていたら、雨や風で散ってしまったというのは、よくあることです。この歌も、そんなことにならないように、「春雨はいたくな降りそ」と詠んでいるのです。桜の花を惜しむ気持ちは、1300年前も今も同じで、反対に、いつでも満開の花を見られるなら、このような歌は生まれないでしょう。無常の美学がここにあります。今年は、新型コロナの影響で桜を満足に見られず、残念に思ってらっしゃる方は多いと思いますが、その惜しむ気持ちが大切なのかもしれません。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年3月27日 放送分】
2021年3月27日
【巻】…8・1458

【歌】…宿にある桜の花は 今もかも 松風速(はや)み地(つち)に散るらむ

【訳】…宿にある桜の花は、今まさに松風が速いので土に散っていることであろうか

【解】…渥見王(あつみのおほきみ)が久米郎女(くめのいらつめ)に送った歌。松風が激しく吹いているので、久米郎女の家の庭にある桜の花は散っているであろうかと渥見王は心配しています。風をわざわざ松風としているのは、久米郎女の家の近くに松の木があって、そこを通ってくる風だから松風としたのでしょう。この歌に応えて久米郎女が返した歌は「世間(よのなか)も常にしあらねば 宿にある桜の花の散れるころかも」。つまり、世の中は無常で、同じようにずっと花が咲いている訳ではない、と。言い換えれば、花の命は短いのですから、早く来てくださいね、と渥見王を誘っているのです。



上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年3月20日 放送分】
2021年3月20日
【巻】…11・2644

【歌】…小治田(おはりだ)の板田の橋の壊(こぼ)れなば 桁(けた)より行かむ な恋ひそ我妹(わぎも)

【訳】…小治田の板田の橋が壊れたならば、橋桁沿いに行きますよ、そんなに恋しがらないで下さい、愛しいあなた

【解】…明日香にある小治田の板田という地域が舞台。その板田に架かっていた橋は、板で出来ていたのか、石を加工したものかは分かりませんが、大雨で流れたり、何かの原因で橋自体が壊れてしまう事もあり得ます。歌で作者は、仮に橋が壊れて橋桁だけになっても、私は、橋桁を渡ってあなたの元に行きますよ、と詠んでいます。実際にそんなことが出来るのかは分かりませんが、それだけあなたのことを思っているのですよと伝えているのです。おそらく作者は、何らかの理由で恋人の元へ行けなかったので、気持ちだけでも伝えたかったのではないでしょうか。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年3月13日 放送分】
2021年3月13日
【巻】…11・2701

【歌】…明日香川明日も渡らむ 石橋(いははし)の遠き心は思ほえぬかも

【訳】…明日香川は明日にも渡りましょう、石橋のように遠い心で思っている訳ではないのですよ

【解】…3月20日放送のラジオウォークを楽しくお聞きいただくための特集4回目。今回のウォークは、明日香川沿いに南下していくコースです。この歌では、明日香川から明日を起こして、「明日にも渡りましょう」と詠んでいます。「石橋」は川から顔を出している飛び石のことで、飛び石は互いに離れていることから、「遠き」を起こす枕詞になっています。つまり、石橋のような遠い心で思っているのではないですよ、明日にでも明日香川を渡ってあなたの所に行きますから!と伝えているのです。この歌には、おそらく前段のやりとりがあって、女性が男性に対して「最近、私の家に来ませんね、私への心が離れたのではないですか」といった便りが来たのでしょう。それに慌てた男性が「いやそんなことはないですよ!」とこの歌を詠んだものと思われます。いわば、言い訳の歌といったところでしょうか。