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上野誠の万葉歌ごよみ
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歌ごよみ!
上野誠コラム
上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2021年7月17日 放送分】
【2021年7月10日 放送分】
【2021年7月3日 放送分】
【2021年6月26日 放送分】
【2021年6月19日 放送分】
【2021年6月12日 放送分】
【2021年6月5日 放送分】
【2021年5月29日 放送分】
【2021年5月22日 放送分】
【2021年5月15日 放送分】
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年7月17日 放送分】
2021年7月17日
【巻】…10・2028

【歌】…君に会はず 久しき時ゆ織る服(はた)の白栲衣(しろたへころも) 垢づくまでに 

【訳】…あなたに会うことができず、長い間ずっとずっと織っている布の白たえ衣、それに垢がつくまで長い時間となりました

【解】…今回も、七夕伝説の彦星と織女星の恋模様を描いた歌です。古代では、自分で布を織りあげ、それを裁断して衣服を仕立てるのが普通でした。この歌では、愛しい人と会えない間ずっと機織りをしていて、織りあがった白い布で作った衣服を着ていたら、いつしか衣服に垢がついてしまったと詠んでいます。当時は、洗濯の頻度は少なかったとはいえ、垢がつくまでになるというのは、それほど、会えない時間が長かったと表現しているのです。1年の空白が長いかどうかは人ぞれぞれでしょうが、恋人たちにとっては一日千秋の思い。長い時間と表現することは、それだけ好きだと言っているのと同じなのです。




上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年7月10日 放送分】
2021年7月10日
【巻】…10・2008

【歌】…ぬばたまの夜霧隠(こも)りて遠けども 妹(いも)が伝(つたへ)は早く告げこそ

【訳】…夜霧がこもって遠いけれども、妹の言伝は早く知らせて欲しい

【解】…今回も七夕の歌です。「ぬばたまの」は、夜にかかる枕詞。夜霧がこもるとは、霧がたちこめて、周囲がよく見えない様子です。古代は、交通手段がほとんど整備されていなかったので、夜に遠くへ出かけることは大変危険なことでした。しかも、霧がこもっているなら、なおさらです。そんな厳しい状況であっても、「妹が伝は早く告げこそ」・・つまり、恋人からの言伝は早く知らせて欲しい、と歌っています。当時は、恋人の元に行く際には、使いの人をたてて連絡をとっていましたので、この歌にあるような「夜霧隠りて遠けども」では、使いの人も動けす、言伝も届きません。それでも言伝を待たずにはいられない恋心たちの思いを、作者は七夕伝説に重ねて詠んだのでしょう。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年7月3日 放送分】
2021年7月3日
【巻】…10・1999

【歌】…あからひくしきたへの子を屢(しば)見れば 人妻ゆゑにわれ恋ひぬべし

【訳】…紅顔の美しい織女をしばし見ると、人妻であるのに私は恋をしようとしている、今まさに

【解】…七夕の歌です。「あからひく」は、赤っぽい色をひく、つまり血色がよくて健康であるという意味で、美人であることを表現しています。そして、「しきたへ」は布のこと、これは織女星のこと。織女星と彦星は夫婦の関係とも言えますから、織女星は人妻ということになりますが、歌の作者は、人妻と分かってはいても、彼女に恋をしそうだと歌っているのです。かなわぬ恋ゆえに、余計に燃え上がるものがあるのでしょうか。七夕に、夜空を見上げて想像を巡らせるのはよくあることでしょうが、織女星にときめくというのは、作者の想像力の豊かさ故のことかもしれません。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年6月26日 放送分】
2021年6月26日
【巻】…6・1009

【歌】…橘は 実さへ花さへその葉さへ 枝(え)に霜降れどいや常葉(とこは)の木

【訳】…橘は、実も花もその葉さえ、枝に霜が降ってもいよいよ栄えるめでたい木

【解】…皇族がその身分を離れ、姓を与えられて臣下の籍に降りることを臣籍降下といいますが、この歌は、天平8年11月、臣籍降下で葛城王が橘の姓を賜ったことを祝う宴席で、聖武天皇が詠んだ歌。内容は、植物の橘について歌ったものです。橘は、夏に咲く花だけでなく実も食べられて、葉はキラキラ照り輝き、霜が降っても瑞々しい緑を保っている・・と、賞賛しています。それだけ、橘という姓は縁起がいいと祝福しているのです。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年6月19日 放送分】
2021年6月19日
【巻】…19・4217

【歌】…卯の花を腐(くた)す霖雨(ながめ)の水始(みずはな)に寄る木屑(こづみ)なす 寄らむ子もがも

【訳】…卯の花を腐らせる長雨。その長雨に流れる水に寄ってくる木屑のように、自分に寄ってくる女の子はいないものかなあ

【解】…長い雨が晴れた日に作った歌一首。雨がずっと降ると、卯の花は散らずに腐ってしまいます。花を腐らせるくらいの長雨が降った時は、水があふれて流れ出します。そうなると、水に浮いていた木屑が流れで一か所に集まっていくでしょう。その木屑と同じように、女の子が私のところに寄って来てくれないかな、と作者は歌っています。結局は、女性にもてたい!という気持ちを吐露する作品なのですが、それを表現するために、わざわざ卯の花や長雨、木屑を持ち出しているのです。つまり、「卯の花を・・木屑なす」は「寄らむ」を起こすための序であることが最後に分かるという、どんでん返しの歌と言えるでしょう。