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上野誠の万葉歌ごよみ
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上野誠の万葉歌ごよみ
毎週土曜日 朝 5:30〜5:45

上野誠(國學院大學 教授)
上田悦子(MBSアナウンサー)
★上田悦子アナウンサーブログ
utagoyomi@mbs1179.com
上野先生に聞いてみたい事、番組の感想など何でもお寄せください。
〒530-8304 MBSラジオ
「上野誠の万葉歌ごよみ」

【2022年2月19日 放送分】
【2021年10月30日 放送分】
【2019年3月2日 放送分】
【2018年11月24日 放送分】
【2018年10月27日 放送分】
【2017年9月23日 放送分】
【2015年5月3日 放送分】
◆11月のコラム
◆10月のコラム
◆9月のコラム
上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2022年2月19日 放送分】
2022年2月19日
【巻】…5・874

【歌】…海原の沖行く船を 帰れとか 領巾(ひれ)振らしけむ 松浦作用姫(まつらさよひめ)

【訳】…海原の沖を行く船を帰れというのか、領巾を振ったのであろうか松浦作用姫は

【解】…舞台は、現在の佐賀県唐津市。大和朝廷から派遣されてきた大伴佐提比古(おおとものさでひこ)は、この地の松浦作用姫という女性と恋愛関係になります。やがて佐提比古は、朝鮮半島に行くことになり、唐津の港から船出をするのですが、ふと港の方を見れば、領巾(現在のスカーフのようなもの)を振る松浦作用姫の姿。当時の旅は「上手くいけば帰って来られるか」というくらい、危険なものでしたので、永遠の別離となるかもしれなかったのです。この切ない別れのシーンを、後の人が、大伴佐提比古や松浦作用姫の気持ちになって作ったのがこの歌です。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2021年10月30日 放送分】
2021年10月30日
【巻】…10・2179

【歌】…朝露ににほひそめたる秋山に 時雨(しぐれ)な降りそ あり渡るがね

【訳】…朝露に照り輝いている秋山に 時雨は降ってくれるなよ、そのままでいて欲しいから

【解】…紅葉と露を取り合わせた歌。「にほふ」は、嗅覚ではなく、照り輝いている様を表す視覚表現です。色づいた葉は、もちろんそれだけで十分美しいですが、朝露に濡れると、光沢が出てさらに輝きを増します。それを目の当たりにした作者が思ったのは、「時雨よ降ってくれるなよ」。雨で紅葉が散ってしまうのを怖れたからでしょう。言い換えれば、瞬間の美を惜しむ心がこの歌を生んだと言えます。ところで、歌の左注には「柿本朝臣人麻呂の歌集に出ず」となっています。この歌は、元々、柿本人麻呂歌集に入っていて、万葉集を編纂する際に、転載されたもの。ただ、柿本人麻呂歌集に収められていたからといって、人麻呂が作った歌かどうかは分かりません。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2019年3月2日 放送分】
2019年3月2日
【ラジオウォーク特集③】
【巻】15・3602

【歌】…あをによし奈良の都にたなびける天(あま)の白雲
    見れど飽かぬかも
    
【訳】…あをによし奈良の都に
    たなびいている天の白い雲は見ても見ても見飽きない

【解】…平城京は国際都市で、唐から鑑真などが来日したり、日本からも多くの遣唐使が派遣されていた。
また、忘れてはならないのは、遣新羅使人という、新羅に日本から派遣されていった人たちもいた時代。
あをにの“に“は土のことで、青い土は奈良をほめている言葉。
遣新羅使人は、平城京から瀬戸内海、九州を通り、壱岐から対馬、朝鮮半島にいった人で、その人たちが平城京のことを詠んだ歌。
天の白雲は、目が見えていないので心の中で想像していた。
思い入れのある土地の雲は、他の雲とは違う。
見ても見飽きないとは最大のほめ言葉。
それぞれの人がどのような気持ちで雲を見ていたのか、想像しながら詠んでみる歌です。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2018年11月24日 放送分】
2018年11月24日
【巻】10・2294

【歌】…秋されば雁(かり)飛び越ゆる竜田山(たつたやま)
    立ちても居ても君をしぞ思ふ

【訳】…秋がやって来ると雁が飛び越えていく竜田山
    その竜田山ではないけれど
    立っていても座っていても君のことを思ってしまう

【解】…山を越えてやって来る雁は、季節感のある絵手紙のようなお便りのようなもの。やって来る時と去っていくときで表す季節が変わる。
帰る雁(きがん)=春がやって来る
来る雁(らいがん)=冬がやって来る
この歌の趣旨である、立ちて居ても君をしぞ思ふとは、立っていても座っていてもあなたを思うということです。
とても情熱的で、四六時中想いを寄せている様子ですが、その状況を起こすのが竜田山で、その竜田山がどういう山かというと雁が越えてくるような山で、それがいつの季節かというと、秋ですよということ。
人は恋をすると、他人のことを絶え間なく色々考えるもので、人が成長するきっかけなのかもしれません。

上野誠の万葉歌ごよみ-上野誠コラム
【2018年10月27日 放送分】
2018年10月27日
【巻】10・2175

【歌】…このころの秋風寒し
    萩の花散らす白露置きにけらしも

【訳】…最近の秋風は寒い
    萩の花を散らす白露もついていることだろう きっと

【解】…このころとは最近のこと。
萩の花を散らすという露は、一種の魔法の水のようなもので、白露がつくと萩が終わる頃=晩秋ということを表している。
萩の花や、花の見ごろが終わる白露のことを気にするということは、恋のはじまりよりも終わりなのかもしれません。
これから新しい何かを始めようという人は、萩の花をみることもないだろう。
外ばかり向く、大輪の花だけを見るのではなく、可憐な萩の花や露の水滴のような小さなものに敏感になる、自分の内側を見つめる時間も大切なのではないでしょうか。
センチメンタルな気持ちになる、人間が内側に向く心も大切だと感じさせてくれる歌です。